営業に動画を使うとき、最初に決めるべきなのは動画の種類ではありません。既存の営業資料との役割分担です。
当社が公開している営業ツール用途の制作事例45件を集計すると、営業ツール専用として作られた動画は3件しかありませんでした。残りはすべて何かを兼ねています。8割が商品紹介動画を兼ね、4割は展示会でも使われています。
つまり営業の動画は、単独で完結するコンテンツではありません。営業資料と展示会とWebサイトの間を行き来する部品です。この前提を持たずに「営業用の動画を1本作る」と考えると、資料と内容が重複したり、商談のどこで出すか決まらないまま置き物になったりします。
この記事では、営業工程のどこで動画を使うか、既存の営業資料のどこを動画にするか、商談での再生と共有をどうするか、そして作った後に営業担当者が使い続ける仕組みまで、発注側の実務を解説します。
営業動画とは。商品紹介動画と何が違うのか
営業動画という言葉に決まった定義はありません。会社紹介動画、商品紹介動画、デモンストレーション動画、導入事例動画。これらのうち営業の場面で使うものを、まとめて営業動画や営業ツール動画と呼んでいます。
商品紹介動画との違いを強いて挙げるなら、使う場面が決まっているかどうかです。商品紹介動画は「製品を説明する動画」で、営業動画は「営業のこの工程で、この相手に見せる動画」です。同じ映像でも、Webサイトに置けば商品紹介動画、商談でタブレットから再生すれば営業動画になります。実際、当社の事例でも営業ツール用途の8割は商品紹介を兼ねていました。
補足すると、当社のサイトに実際に届いている検索を見ても、営業部門の担当者は「営業動画」という名詞ではなく「営業ツール」「営業資料」という言葉で動画を探しています。動画を独立したコンテンツではなく、資料やツールの一種として捉えているということです。この記事もその前提で書いています。
営業工程のどこで動画を使うか
営業の工程を分けると、動画が効く場所とそうでない場所がはっきりします。

| 工程 | 使う動画 | 目的 |
|---|---|---|
| 商談前(アポイント取得・資料請求後) | 会社紹介動画、サービス紹介動画 | 相手の理解度を揃えてから商談に入る |
| 商談中 | 製品説明動画、デモンストレーション動画 | 口頭とスライドで伝わらない部分を映像で見せる |
| 商談後(社内検討・比較) | 導入事例動画、製品説明動画 | 同席していない決裁者にも同じ説明を届ける |
| 受注後 | 使い方動画、マニュアル動画 | 導入時の問い合わせを減らす |
| 営業教育 | 製品説明動画、商談の標準トーク | 説明の質を担当者によらず揃える |
注意点があります。全工程を動画にする必要はありません。当社の実務でも、クロージングや条件交渉は人が担うものとして残し、毎回同じ説明をしている部分だけを動画に切り出すことが多いです。
営業ツール動画は何を兼ねているか
先ほど触れた集計を、もう少し詳しく見ます。当社が公開している営業ツール用途の事例45件のうち、用途タグが1つだけ、つまり営業専用として作られた動画は3件でした。1本あたりの用途タグは平均で3つです。

内訳はこうなっています。
- 商品紹介を兼ねる: 35件
- 展示会・イベントで使う: 18件
- 研修・教育に使う: 7件
- 会社紹介を兼ねる: 6件
- 海外向けに使う: 5件
ここから読み取れるのは、営業動画の設計は「1本で何を兼ねるか」を決めることとほぼ同義だということです。展示会でも使うなら音の設計が変わりますし、研修にも回すなら製品の背景や仕組みまで入れておく必要があります。逆に、兼ねる先を決めずに作ると、どの場面でも少しずつ足りない動画になります。
尺にも傾向が出ています。営業ツール用途の事例は45件中37件が60秒以上で、残りが15秒から60秒でした。商談で見せる前提だと、短ければよいというものではありません。短尺は広告やSNSでの入口用と考えるほうが実態に合っています。
営業資料のどこを動画にするか
ここが実務で最も迷うところです。当社が営業資料をお預かりして構成案を起こすとき、最初に見るのは目次ではなく、文字がいちばん詰まっているスライドです。書き込みが多いところは、言葉で説明しきれなかった痕跡だからです。そのうえで、次の観点でスライドを仕分けています。

毎回同じ説明をしているスライド
営業担当者が商談のたびに同じ言葉で説明している部分。これが動画化の第一候補です。サービスの全体像、製品の仕組み、導入の流れ。ここを動画に任せると、担当者は相手の状況を聞く時間に集中できます。
言葉だけでは伝わらないスライド
製品が動いている様子、操作の流れ、内部構造、使用シーン。静止画とテキストで説明を尽くそうとして文字が増えているスライドは、映像にすると一気に短くなります。当社が制作した株式会社リコー様の電子黒板サービスの紹介動画では、サービスの導入前と導入後のシーンを実際の利用シーンとして描き、製品の優位性が直感的に伝わる構成にしました。
変わりやすいスライドは動画に入れない
価格、機能の一覧、対応プラン、キャンペーン。これらは動画に焼き込むと、変更のたびに作り直しになります。動画では触れずに資料側へ残すか、差し替えやすいテロップとして分離しておくのが安全です。
相手によって出し分けるスライドも動画にしない
業種別の事例や、相手の課題に合わせた提案部分。ここは営業担当者が選んで話すべきところで、動画にすると汎用的になりすぎます。
この仕分けをすると、多くの場合「動画にすべきなのは営業資料の前半だけ」という結論になります。全部を動画化しようとすると長くなり、結局使われません。
商談での再生と共有の実務
動画ができたあと、意外と決まっていないのが「どうやって見せるか」です。発注の段階で決めておくと、納品形式の指定にも反映できます。

対面の商談
タブレットやノートパソコンで再生します。相手が複数名なら画面のサイズが問題になるため、会議室のモニターにつなぐ想定なら接続方法(HDMIケーブルか無線か)を事前に確認しておきます。通信環境が不安定な訪問先もあるので、オフライン再生できるファイルを手元に持っておくと安心です。納品時にMP4ファイルを受け取っておけば対応できます。
オンライン商談
画面共有で再生する場合、共有設定で音声を含める操作が必要です。ここを忘れて無音のまま再生してしまうのは、よくある失敗です。回線状況で映像が粗くなることもあるため、事前に視聴URLを送っておき、商談中は要点だけを一緒に見る、という進め方もあります。
メールで送る
商談後のお礼メールや、資料請求への返信に動画のリンクを添えます。このとき、社外に広く公開したくない動画であれば、限定公開や視聴用のパスワードを設定できる置き場所を選びます。会社のWebサイトに載せる動画と、営業が個別に送る動画は、置き場所を分けて考えると管理が楽になります。
音を出せない場所
展示会のブース、相手先の執務スペース、移動中。音声に頼らない構成にしておくと、使える場面が一気に広がります。当社が制作したNTTアドバンステクノロジ株式会社様の電話対応支援ツールの紹介動画では、音が聞こえない環境でも理解できるよう、ナレーションではなくテロップで内容を補完しました。この動画は展示会と同社のホームページの両方で活用されています。
決裁者への回覧を想定しておく
法人営業では、商談に出てきた担当者が決裁者とは限りません。商談後、社内で情報が共有され、比較検討が進みます。このとき担当者が上司に説明する材料として動画が使えると、伝言による劣化を防げます。
当社がご相談を受ける際も、「誰に見せるか」を伺うと商談の相手までしか出てこないことがあります。その先で誰が見るのかまで含めて設計しておくと、動画の使いどころが一段増えます。
設計として有効なのは、尺の違う版を用意しておくことです。当社が制作したリコー様の電子黒板サービスの紹介動画には、ダイジェスト版もあわせて制作しました。詳しく見たい人には本編を、短時間で概要をつかみたい人にはダイジェストを渡せます。回覧される場面を想定するなら1分前後の短い版があると使い勝手が上がります。
もう1つ、動画のリンクを稟議書や社内資料に貼れる形で渡しておくことも効きます。ファイルを添付すると容量の問題で止まることがありますが、リンクなら回覧に乗せやすくなります。
展示会との接続
当社の事例では、営業ツール用途の45件中18件が展示会でも使われていました。4割です。ここを最初から見込んでおくと、1本の投資で2つの場面をカバーできます。
ただし、そのまま流用はできません。展示会のブースでは音量に制限があるためです。当社が確認した例では、ある産業展示会の出展者マニュアルに「高さ1m、ブースより1m離れた位置で75デシベル以下」、2025年に開催された大型IT・エレクトロニクス展示会の出展規程に「音量の制限 80dB以下」「ブースの境界線から2mの場所で測定」と定められていました。後者では会期中に主催者が定期的に測定することも明記されています。ブース境界付近で75から80デシベル以下という水準が一つの目安ですが、規定は展示会ごとに主催者が定めるので、出展が決まったら出展者マニュアルで確認してください。
現実的な作り方は、1本の素材から2つの版を出すことです。展示会版はナレーションなしでテロップだけで成立させ、通路から足を止めてもらうために冒頭で製品と用途が分かる構成にします。商談版はナレーション付きで、機能や導入効果まで説明します。展示会向けの設計は展示会・イベントの動画を解説した記事で詳しく扱っています。
なお、出展そのものが難しくなった場面で、ブースをオンラインで見せる形にした事例もあります。当社が制作した株式会社朋栄様のバーチャル展示会動画は、出展予定だったブースのレイアウトを活かし、バーチャルツアー形式で製品を紹介する構成にしました。同社のYouTubeチャンネルやメールマガジンでの使用も想定して制作しました。
作った後に営業担当者が使い続ける仕組み
動画が使われなくなる原因は、たいてい品質ではありません。どこで出すか決まっていない、営業担当者が存在を知らない、内容が古くなった、の3つです。
対策はシンプルです。
- 商談のどの場面で出すかを、動画と一緒に決めて共有する。「初回商談の冒頭3分」のように具体的に決めます
- 営業担当者へ配布するとき、リンクだけでなく使い方の一文を添える。営業会議で1度流して見せると定着が早くなります
- 変わりやすい情報を動画から外しておく。前述のとおり、価格や機能一覧を動画に入れないのはこのためです
- 数か月後に現場へ聞く。使っているか、どこで止まるか、相手の反応はどうか。ここで得た内容が次の改訂の材料になります
視聴のデータが取れる置き場所を選んでおくと、判断材料が増えます。動画の共有サービスや自社サイトの計測を使えば、再生回数や、どこまで見られているかを確認できます。最後まで見られていないなら長すぎる可能性がありますし、特定の場面で離脱が集中しているなら、その説明が分かりにくいのかもしれません。
費用と期間の目安
当社の営業ツール用途の事例45件では、制作期間は3ヶ月が11件、2ヶ月が10件で最も多く、次いで1ヶ月半が9件、4ヶ月が6件、1ヶ月が5件でした。撮影を伴うかどうか、CGを使うかどうかで幅が出ます。
費用は動画の種類で変わります。当社が公開している料金相場では、商品説明・サービス紹介動画が30万円から100万円、会社紹介・企業案内の動画が50万円から400万円、お客様の声インタビュー動画が20万円から50万円、展示会向け動画が40万円から200万円です。
営業動画で費用を抑えたい場合、次の方法があります。
- 既存の営業資料や製品写真を素材として支給する
- 撮影を伴わないアニメーションや3DCGで構成する
- 1本の素材から複数の版を派生させる(本編とダイジェスト、日本語版と多言語版)
3つ目は特に効きます。ゼロから2本作るより、1本の素材を編集し直すほうが安く済みます。費用の考え方は動画制作の費用相場を解説した記事、発注から納品までの流れは依頼から納品までの流れを解説した記事で説明しています。
営業ツール動画の制作事例
当社が制作した営業ツール用途の動画を紹介します。すべて自社で制作したもので、詳細ページから実際の動画をご覧いただけます。
商談で製品を説明する
リコー様 電子黒板サービス紹介動画は、国内および海外での販売促進を目的とした動画です。サービスの導入前と導入後のシーンを実際の利用シーンで表現し、製品の特徴や優位性が分かりやすく伝わる構成にしました。キャスティングの手配から企画、構成、演出、撮影、編集まで一貫して対応しています。あわせてダイジェスト版も制作しました。制作期間は2ヶ月です。
キヤノン電子様 ドキュメントスキャナー紹介動画は、新製品の特長を紹介する動画です。製品のイラストは、すっきりとデフォルメしながらも従来品との違いが一目で分かるよう特徴を捉えて書き起こしました。アイコンのアニメーションで視覚的に理解しやすい演出にしています。国内外を問わず使いやすい雰囲気に仕上げました。制作期間は4ヶ月です。
サービスの中身を説明する
BASE様 サービス紹介動画は、2つの訴求軸で構成からご提案し、2本を制作した事例です。1本は無料でネットショップを開設できること、もう1本は初心者でも手軽に開設できることをコンセプトにしています。広告利用も検討されていたため短尺で制作しました。制作期間はそれぞれ1ヶ月半です。
メダップ様 foro CRM サービス紹介動画は、地域医療連携における顧客管理ツールの紹介動画です。共同開発先の病院で撮影し、インタビューシーンにアニメーションを挿入することでサービスを理解しやすくしました。実際にツールを使っている様子や商談シーンを差し込み、導入後の光景を想像できるようにしています。制作期間は3ヶ月です。
展示会と商談で兼用する
NTTアドバンステクノロジ様 電話対応支援ツール紹介動画は、視聴者に活用シーンをイメージしてもらうことを意識した動画です。音が聞こえない環境でも理解できるよう、ナレーションではなくテロップで内容を補完しました。展示会と同社のホームページで活用されています。制作期間は1ヶ月半です。
朋栄様 バーチャル展示会ツアーは、世界最大の放送機器展で展示予定だった新製品とソリューションの紹介動画です。出展予定のブースレイアウトを活かしたバーチャルツアー形式で、実写素材にグラフィックを織り交ぜ、ナレーションで製品の特徴を説明しています。制作期間は1ヶ月です。
製品の仕組みを見せる
椿本チエイン様 仕分け機の概要説明動画は、物流現場で使われる仕分け機の紹介動画です。アニメーションと実写素材を組み合わせ、現場でどのように使われているかを製品の仕組みとあわせて説明しました。制作期間は2ヶ月半です。
大電様 100Gメディアコンバーター紹介動画は、高速光伝送通信を可能にした製品のプロモーション動画です。3DCGを活用し、新製品登場の期待感が伝わる内容にしました。制作期間は2ヶ月です。
このほかの営業ツール用途の事例は営業資料・営業ツール動画の制作実績からご覧いただけます。
営業動画のよくある質問
営業動画と商品紹介動画は何が違いますか?
明確な線引きはありません。同じ映像でも、Webサイトに置けば商品紹介動画、商談で見せれば営業動画になります。当社の事例でも、営業ツール用途の8割は商品紹介を兼ねていました。違いを意識すべきなのは中身ではなく、どの場面で誰に見せるかという設計のほうです。
営業動画の長さはどのくらいが適切ですか?
使う工程によって変わります。商談で見せる本編は、当社の事例では60秒以上が大半です。一方、商談後に決裁者へ回覧してもらう版や、広告やSNSからの入口に使う版は1分前後に収めると扱いやすくなります。1本の素材から尺の違う版を作るのが現実的です。
営業資料をそのまま動画にできますか?
技術的には可能ですが、おすすめしません。資料をすべて動画にすると長くなり、価格や機能一覧のように変わりやすい情報まで焼き込むことになります。毎回同じ説明をしている部分と、言葉だけでは伝わらない部分に絞るほうが、使われる動画になります。
オンライン商談で動画を見せるにはどうすればよいですか?
画面共有で再生するのが一般的ですが、音声を含める設定を忘れないよう注意してください。回線が不安定な場合に備えて、事前に視聴用のURLを送っておく方法もあります。訪問先で通信環境が読めない場合は、オフラインで再生できるファイルを手元に用意しておくと安全です。
営業動画の費用はどのくらいかかりますか?
内容と条件によりますが、当社の料金相場では商品説明・サービス紹介動画が30万円から100万円です。既存の営業資料や製品写真を素材として支給いただく、撮影を伴わない構成にする、1本の素材から複数の版を派生させる、といった方法で調整できます。
まとめ:資料との分担を決めてから作る
営業に動画を使うときの要点は3つです。
1つ目は、営業動画が単独で完結するものではないということです。当社の事例では、営業ツール専用として作られた動画は45件中3件だけでした。8割が商品紹介を兼ね、4割が展示会でも使われています。何を兼ねるかを先に決めてください。
2つ目は、営業資料との分担です。毎回同じ説明をしている部分と、言葉だけでは伝わらない部分を動画にし、価格や相手ごとに変える部分は資料に残す。この仕分けをしないと、資料と重複した長い動画ができます。
3つ目は、見せ方を発注前に決めることです。対面かオンラインか、音を出せるか、決裁者に回覧されるか。これが決まっていれば、尺と構成、納品形式まで一度に決まります。
当社は営業ツールとしての動画制作を数多く手がけています。取り組みは営業資料・営業ツールの動画制作ページにまとめていますので、あわせてご覧ください。発注先の選び方は動画制作会社の選び方を解説した記事、商品紹介動画そのものの作り方は商品・サービス紹介動画を解説した記事で解説しています。
1,000社5,000本の実績