YouTube広告を始めるとき、最初に突き当たるのは「広告用の動画をどう用意するか」です。新しく撮り下ろすべきか、それとも手持ちの会社紹介動画やサービス紹介動画を転用できるのか。当社にも、この段階のご相談が数多く届きます。
結論からいえば、既存動画の転用は可能ですが、そのまま流せるケースはほとんどありません。広告フォーマットごとに尺と画面比率の条件が決まっており、冒頭数秒で伝えきる構成や、スキップされる前提の情報の並べ方など、通常の動画とは設計の前提が違うからです。
この記事では、動画制作と広告運用の両方を手がける立場から、転用の判断基準、2026年時点のYouTube広告の種類と仕様、成果につながるクリエイティブの作り方、費用の考え方、そして当社が制作したYouTube広告の事例までを解説します。
YouTube広告の動画は「新規制作か転用か」から決める
手持ちの動画を広告に転用する場合、次の6項目を確認します。1つでも引っかかれば、その部分の作り直しが必要です。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 動画の長さ | 広告の種類ごとに尺の条件がある(バンパーは6秒以内、スキップ不可は15〜60秒など)。長い動画は切り出しが必要 |
| アスペクト比 | 横型は16:9、縦型は9:16、正方形は1:1が推奨。プレーヤーは視聴環境に合わせて調整されるが、配信面に合わない比率では表示が小さくなる |
| 冒頭の構成 | 会社紹介動画の多くはロゴや導入から静かに始まる。広告では冒頭5秒で興味を引けないとスキップされる |
| 字幕・テロップ | 音声を出さずに視聴する人に向けて、字幕だけで意味が通るか |
| 著作権・肖像権 | BGM・素材・出演者の利用許諾が「広告利用」を含んでいるか。Web掲載のみの契約だと広告に使えない |
| 広告ポリシー | Googleの広告ポリシーに触れる表現がないか。医療・金融など業種によっては表現の制限が厳しい |
この中で見落とされやすいのが、権利の範囲です。制作時の契約が「自社サイトへの掲載」までの場合、広告配信は契約の範囲外になります。転用を考えている動画があれば、当時の契約条件を先に確認してください。
もう1つ、実務でよくお伝えしているのは、転用と新規制作の中間の選択肢です。既存動画の素材(撮影データ)を活かして広告用に再編集すれば、撮影費をかけずに、広告の設計に合った動画を作れます。素材の引き渡し条件も契約次第なので、あわせて確認するとよいでしょう。

YouTube広告の種類と動画の仕様(2026年時点)
広告の種類によって、用意すべき動画の尺と形が変わります。YouTubeヘルプの現行の記載に基づく一覧です。
| 広告の種類 | 表示のされ方 | 動画の長さ |
|---|---|---|
| スキップ可能なインストリーム | 動画の再生前後・途中に表示。5秒後にスキップ可能 | 上限なし(推奨3分未満) |
| スキップ不可のインストリーム | 動画の再生前後・途中に表示。スキップ不可 | 15〜60秒(キャンペーンのサブタイプによる) |
| バンパー | 動画の再生前後・途中に表示。スキップ不可 | 6秒以内 |
| インフィード | 検索結果・関連動画・ホームフィードにサムネイルで表示。クリックで再生 | 上限なし |
| YouTubeショートの広告 | ショートフィードの動画の間に表示 | 60秒未満を推奨 |
| マストヘッド | ホームフィード最上部で音声なしで自動再生 | PCは最大30秒・モバイルは制約なし |

注意したいのは、スキップ不可のインストリーム広告の尺です。以前は15秒以下として案内されていた時期があり、現在のGoogle広告ヘルプではキャンペーンのサブタイプに応じて15〜60秒と記載されています。解説記事の多くが古い上限のままなので、制作前に必ず現行の仕様を確認してください。
また、比較検討層に配信するキャンペーンとして、Google広告のデマンドジェネレーションキャンペーンがあります。YouTubeに加えてDiscoverやGmailの面にも広告を届けられる形式です。課金方式の詳細はYouTube広告の種類一覧の記事で解説しています。
制作の進め方3ステップ
広告用の動画制作は、戦略設計、制作、効果測定の3段階で進めます。
ステップ1. 戦略設計(目的・ターゲット・KPI)
最初に決めるのは、広告で何を達成したいかです。目的によって、選ぶ広告の種類も、測る指標も変わります。
| 目的 | 重視する主なKPI |
|---|---|
| 認知度の向上 | 視聴回数、リーチ、インプレッション、ブランドリフト |
| リード獲得 | クリック率、コンバージョン率、獲得単価 |
| 売上の増加 | コンバージョン率、売上高、広告費用対効果 |
あわせて、誰に届けるかを具体化します。年齢・性別・地域などの属性、興味関心、自社サイトへの訪問履歴(リマーケティング)といった切り口でターゲティングを設計します。ここが曖昧なまま動画を作ると、誰向けの表現かが定まらず、クリエイティブの判断が全部ぶれます。
ステップ2. 動画クリエイティブの制作
企画・構成を固めてから、撮影またはアニメーション・CGの制作、編集へ進みます。広告の種類と配信面を決めてから作り始めるのが鉄則です。後から尺や画面比率を変えると、構成ごと作り直しになることがあります。
ステップ3. 効果測定と改善
配信開始後は、KPIに設定した指標を見ながら改善を繰り返します。訴求軸の違う複数のバージョンを用意してA/Bテストを行うと、どの表現が効くかをデータで判断できます。1本だけ作って配信しっぱなしにするのが、最も成果の出ないパターンです。
成果につながるクリエイティブの作り方
YouTube広告のクリエイティブには、Googleが公式に示している設計指針があります。ABCDと呼ばれるフレームワークで、Attention(注目)、Branding(ブランディング)、Connection(つながり)、Direction(行動喚起)の4要素です。Googleはこの指針に沿った広告について、売上への短期的な貢献度が30%、ブランドへの長期的な貢献度が17%高まるという調査結果を公表しています。
実務に落とすと、次の4点です。
冒頭5秒で本題に入る
スキップ可能な広告は5秒後に飛ばされます。ロゴや前置きから始めず、冒頭から話の核心に入ります。当社が制作したYouTube広告でも、冒頭から視聴者の関心を引く演出を置き、全体をスピーディーなテンポで展開して視聴離脱を防ぐ構成にしています。
ブランドを早く、繰り返し見せる
じっくり世界観を作ってから最後に社名を出す構成は、テレビCMでは成立しても、スキップされるYouTube広告では届きません。冒頭からブランド名や商品を見せ、音声でも補強します。
音声を主に置き、無音でも意味が通るようにする
Googleは、YouTube広告の95%が音声オンで再生されると公表しています。音声は保険ではなく主役で、ナレーションや効果音の設計が伝わり方を大きく左右します。そのうえで、音を出せない環境で見る視聴者もいるため、字幕とテロップだけでもメッセージが通る状態にしておきます。音声で伝え、無音でも落ちない。この二段構えが広告用動画の設計です。
行動を促す言葉で締める
視聴後に取ってほしい行動を明確に示します。詳細はこちら、資料をダウンロード、無料で相談するなど、目的に対応した行動喚起を画面と音声の両方に置きます。
自作する場合のツールと限界
YouTubeショートの広告であれば、CanvaやCapCut、iMovieといったツールで自作することも可能です。テンプレートに素材を流し込む形なら、制作費をほぼかけずに始められます。
ただし、無料の編集ツールは商用利用の条件がツールごとに異なります。CapCutの通常版のように、利用規約で個人的かつ非営利の用途に限定されているものもあり、広告として配信する動画はこれに当てはまりません。使う前に、そのツールの規約が広告利用を含むかを確認してください。
また、通常のインストリーム広告は視聴者がテレビや大画面で見ることも多く、画質・構成の粗さがそのままブランドの印象になります。認知拡大や企業ブランドに関わる配信では、自作はショート面の試験配信までにとどめ、本配信の動画はプロに任せる使い分けをおすすめします。
制作会社に依頼する場合の選び方
依頼先を選ぶ基準は3つあります。
- 同業界・同ジャンルの制作事例があるか。業界特有のターゲット層を理解している会社は、響く表現の精度が違います
- 企画・提案力があるか。言われたとおりに作るだけでなく、目的から逆算した構成やA/Bテスト用のバリエーションを提案できるか
- 広告運用までサポートできるか。制作と運用が分かれていると、配信データがクリエイティブの改善に還流しません。制作会社が運用まで見られる体制なら、数字を見て動画を直すサイクルが速くなります
詳しい見積もりの比べ方や契約の確認点は動画制作会社の選び方で解説しています。
費用の目安(制作費と配信費は別建て)
YouTube広告の費用は、動画を作る制作費と、広告を配信する配信費の2階建てです。ここを分けずに予算を組むと、動画は完成したのに配信費が残っていないという事態が起こります。

制作費は、当社の料金ページで公開している目安で、広告用の動画・CMが50万円から300万円です。金額の幅は、撮影日数、スタッフの人数、出演者の起用、CGやアニメーションの有無で決まります。既存素材の再編集で済む場合は、この下限より抑えられることもあります。
配信費は課金方式(視聴単価・インプレッション単価・クリック単価)によって変わり、少額からでも始められます。予算配分の考え方として、A/Bテスト用に訴求違いの動画を複数本作る前提で制作費を組んでおくと、配信開始後の改善が機能します。1本に全額をかけるより、検証できる体制に配分するほうが、結果的に費用対効果は高くなります。
YouTube広告の制作事例
当社が制作したYouTube広告用動画の事例です。
株式会社Groovement「Strategy Consultant Bank」YouTubeCM
実写・制作期間3ヶ月。フリーコンサルタント向け案件紹介サービスのYouTube広告です。冒頭から視聴者の関心を引きつけるインパクトのある演出を採用し、全体をスピーディーでリズミカルなテンポで展開して視聴離脱を防ぐ構成にしました。限られた尺で伝える情報を取捨選択し、視聴者が「もっと知りたい」と思える流れを設計しています。
エプソン販売株式会社「カラリオスマイルPlus」縦型ショートドラマ広告シリーズ
実写・各本の制作期間2ヶ月。プリンター向けサポートサービスを紹介する縦型のショート動画広告で、写真印刷版・ドキュメント印刷版・遠隔サポート版など、訴求軸の違うバージョンを複数制作しました。同じサービスでも、視聴者のどの困りごとに焦点を当てるかでクリエイティブを分け、配信面はショートのUXに馴染む縦型9:16で設計しています。
2つの事例に共通するのは、1本の完成度よりも「配信の設計に合わせて作る」ことです。冒頭の作り方、尺、画面比率、バリエーションの持ち方は、いずれも配信計画から逆算して決めています。
よくある質問
手持ちの会社紹介動画をそのままYouTube広告に流せますか?
技術的には可能ですが、そのままでは成果が出にくいのが実情です。会社紹介動画は冒頭が静かに始まる構成が多く、5秒でスキップされる広告の環境に合いません。尺・画面比率・冒頭の構成・字幕・権利範囲・広告ポリシーの6点を確認し、必要な部分を広告用に再編集することをおすすめします。
スキップ不可の広告は何秒まで作れますか?
現在のGoogle広告ヘルプでは、キャンペーンのサブタイプに応じて15〜60秒と記載されています。以前はより短い上限で案内されていた時期があり、古い情報のままの解説も多いため、制作前に現行の仕様を確認してください。
制作費はどれくらいかかりますか?
当社の場合、広告用の動画・CMで50万円から300万円が目安です。撮影の規模とCG・アニメーションの有無で変わります。既存素材の再編集や、ショート向けの短尺動画であれば、より抑えた制作も可能です。配信費は別途必要になるため、予算は2階建てで組んでください。
広告の審査で落ちることはありますか?
あります。Googleの広告ポリシーに基づく審査があり、表現や業種によっては不承認となります。配信開始日から逆算して、審査の時間も見込んだスケジュールを組むこと、制作段階でポリシーに触れる表現を避けることが必要です。
まとめ: YouTube広告の動画は転用ではなく専用設計で作る
YouTube広告の動画制作は、新規で作るか既存動画を転用するかの判断から始まり、広告の種類と配信面を決めてから作るのが基本です。冒頭5秒、音声と字幕の二段構え、行動喚起といった広告特有の作り方は、通常の動画制作とは前提が異なります。
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