漫画を動画にした広告をYouTubeやSNSなどでよく見かけるようになりました。近年、主に動画広告の表現手法として多く活用されている漫画動画の作り方やメリット、制作の注意点などをご紹介します。
漫画動画とは?
漫画動画とは、静止画の漫画やイラストを動画化したものです。複数枚の静止画を編集でつなぎ、動きやセリフ、ナレーション、BGM、効果音などをつけて動画として見られるようにしています。
漫画動画の表現手法もさまざまです。吹き出しやコマ割りを活かした漫画要素の強いもの、キャラクターのイラストに編集で動きや効果をつけたアニメ風のものなどがあります。漫画動画は紙の漫画のように自分でコマを読み進めなくてもストーリーが自動的に進み、キャラクターのセリフを通して説明されることで、情報をわかりやすく伝えることができるのが特徴です。
以下の動画はVIDWEBで制作した漫画を活用した事例です。
漫画動画の活用方法 / どんなとき使うと効果的?
漫画動画は、商品やサービスをPRする動画広告の表現手法として活用されることが多くなっています。
近年では、YouTube、TikTokなどの動画投稿メディアの普及が進み、企業のマーケティング戦略でも動画メディアに出稿する広告の重要度が増しています。動画広告の効果を高める表現が試行錯誤されるなか、短い時間で商品やサービスをわかりやすく表現できる漫画動画は広告に多く取り入れられるようになりました。
平板な文章や図だけでは理解しにくい情報も、漫画になることでわかりやすく、親しみやすくなることは多くの皆さんが体験したことのある感覚だと思います。それがさらに動画になることで、動きや音声で情報が自然と目に、耳に入る効果が生まれます。
このような特徴から、漫画動画はYouTubeのTrueViewインストリーム広告(動画の最初や最後、途中で流れる広告)、SNS広告などで広く採用されています。
漫画動画のメリット
映像表現の選択肢には、実写やアニメーションなどさまざまな選択肢があります。そのなかでも漫画動画を制作するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。漫画動画ならではの利点をご紹介します。
- 漫画だから親しみやすい
日本には漫画文化が根付いています。ある調査では、50%以上の人が「年に1冊以上はマンガを読む」と答えているほどです(出典:CCCマーケティングカンパニー/2021年の調査)。幅広い年代の人が漫画に親しんでいるからこそ、漫画動画も自然と親しみを受け入れられるメリットがあります。
- 制作コストを抑えられる
漫画動画は、実写や本格的なアニメーションに比べて制作費用を抑えられることが一般的です。
実写では撮影や出演者の手配などに多くのコストがかかります。また、本格的なアニメーションの制作にも多くの人手が必要であり、費用も時間も多くかかります。その点、漫画動画は静止画素材をもとに制作されるため、素材の手配が比較的容易です。撮影・編集などにかかる人手も少なくすむため、制作コストが抑えられるケースがあります。
- 情報をわかりやすく伝えられる
実写やアニメーションでもわかりやすい動画を作ることはできますが、前述のように手間やコストが多くかかるという課題があります。一方、漫画動画は制作費用を抑えながらも「キャラクターのセリフで情報をわかりやすく説明する」「ストーリーやユーモアをプラスして興味を持たせる」など効果を得やすく、コストを抑えて、わかりやすく伝える動画を作りたい場合に適しています。
漫画動画に適した業界・サービス
漫画動画は具体的にどのような業界・サービスに向いているのでしょうか。
漫画動画はその特徴から「言葉や文字だけでは説明が難しい商品・サービス」や「課題や悩みを解決する商品・サービス」「活用シーンを訴求したい商品・サービス」などにマッチします。
漫画動画が効果を発揮するポイントや具体的な業界・サービスの例は下表をご覧ください。
カテゴリ | 漫画動画が効くポイント | 業界・商品・サービスの例 |
---|---|---|
言葉や文字だけでは説明が難しい商品・サービス | 難しい解説やとっつきにくい情報をイラストやセリフで親しみやすく伝えられる。 | ・法律関連・士業サービス ・医療・医薬品 ・IT機器・ソフトウェア など |
課題や悩みを解決する商品・サービス | ターゲット層が潜在的に抱えている課題や悩みを提示したうえで「解決できそう」と思わせるストーリーを表現できる。 | ・化粧・美容 ・健康食品 ・ダイエット ・結婚相談サービス など |
活用シーンを訴求したい商品・サービス | 漫画動画のストーリーを通じて活用シーンを訴求し、その商品・サービスがあることのベネフィットを具体的にイメージさせることができる。 | ・掃除・家事代行 ・家電 ・ウォーターサーバーなど生活に密接したサービス |
漫画動画の作り方
漫画動画を実際に作るには、どのような手順が必要なのでしょうか。
漫画動画は、大まかに下記のような流れで制作されます。漫画動画の制作を制作会社に発注する場合も基本的な流れを把握しておきましょう。
ここでは主に、広告として漫画動画を制作することを想定して手順をご紹介します。
- 企画・構成
まず、広告主である企業の担当者とディレクター、プロデューサーなどが話し合い、商品・サービスのターゲット像や漫画動画広告を出稿する媒体、表現したいメッセージなどの基本事項を確認します。
次に、これらの要件に基づき、どのような漫画動画を作成するか企画・構成の骨子を決定します。漫画動画の効果や質を左右する重要な工程であり、この段階でしっかりとマーケティング戦略を練っておくことが大切です。
- 脚本作成
漫画動画のストーリーとなる脚本を作成します。脚本制作は脚本家やライターが担当する場合が多いですが、短い動画であればディレクターがプロットを作る場合もあります。
- 漫画・イラスト制作
動画の素材となる漫画やイラストを静止画で作成します。
演出として漫画らしい雰囲気を出したい場合は漫画家に依頼し、コマ割りや吹き出しのある素材を作成します。また、キャラクターのデザインを重視したい場合は、イラストレーターに作画を依頼することもあります。どちらの場合も演出意図にあったタッチで描けるクリエイターに発注することが大切です。
動画にしたときに表現したい動きや効果をクリエイターに事前に伝えておくことも重要です。例えば、編集時に動きや効果をつけたいパーツは別レイヤーでデータを作成することで、その後の編集工程が効率よく進みます。
- 編集
漫画やイラストの静止画素材を編集ソフトでつなぎ、動画にします。キャラクターに動きをつける、セリフを強調するような効果をつけるなどの編集もこの時点で行います。動画広告の場合、視聴者を引きつけ、広告を継続して視聴してもらえるようテンポよく編集することも大切です。
- 音響
セリフやナレーションを収録し、動画に合わせて編集します。印象的なBGMや効果音を使うことで、視聴者をより引きつけることもできます。
漫画動画を制作するには
上記のように、漫画動画の制作には多くの専門的な工程があり、さまざまなクリエイターが関わります。そのため、漫画動画を制作したい企業が個別にクリエイターに発注するのでは、大変な手間と時間がかかってしまいます。
漫画動画を短い期間でスムーズに制作したい場合には、制作工程を一貫して管理してくれる制作会社やクリエイターに依頼するのがおすすめです。漫画動画の制作が依頼できるのは、映像制作会社や動画マーケティング会社、フリーランスの動画クリエイターなどです。
制作フローでもご紹介したように、漫画動画は実際に動画を作る工程はシンプルですが、企画・構成段階で要件をきちんとつめることが重要です。とくに依頼主が漫画動画の制作に慣れていない場合には、経験の豊富な制作会社やクリエイターに依頼するとよいでしょう。VIDWEBは多くのクリエイターと連携しており、漫画動画のトータルプロデュースが可能です。
漫画動画制作のポイント
漫画動画の作り方がわかったところで、制作する際に気をつけたいポイントもおさえておきましょう。ここでは、漫画動画を動画メディアの広告として作る際のコツにフォーカスしてご紹介します。
- 長すぎない尺にする
YouTubeのスキップ可能なTrueViewインストリーム広告の場合、広告の長さに制限はありませんが3分以内に収めることが推奨されています。ただし、視聴者は再生から5秒後に広告をスキップすることができます。また、スキップ不可の配信方法を選択した場合は15秒以下の動画であることが求められます。出稿する広告枠の条件にもよりますが、とくに広告として漫画動画を作成する場合は、視聴者が飽きずに見られる尺であることを意識しましょう。
- 動画の冒頭に興味をひきつけるような内容を入れる
前述のように、YouTubeでは広告動画がスキップされる可能性があります。漫画動画の冒頭で視聴者の興味を引きつけるような内容を入れることで、動画内容への興味を増し、継続視聴してもらえる可能性を高めることができます。
- メッセージや情報を詰め込みすぎない
短い尺で制作した漫画動画に多くの情報を詰め込みすぎると、せっかく漫画でわかりやすく説明するメリットを失ってしまいます。この漫画動画で何を伝えたいかを吟味し、1つの動画で伝えるメッセージはできるだけポイントを絞ったほうがいいでしょう。
- 不快感を与えない内容・クオリティを保つ
漫画動画の効果やメリットが認知されて以降、YouTubeでは不快な表現をした漫画動画や、質の低い漫画動画が増えてきています。このような動画を頻繁に目にした視聴者のなかには漫画動画に対して悪いイメージを持つ人もいます。
広告対象の商品・サービスの印象を悪くしないためにも、広告主は視聴者に不快感を与えるような表現は避け、一定の質を保った漫画動画を制作するよう心がけるべきです。
漫画動画配信のポイント
ここまでは、漫画動画の制作に関する話題を中心にご紹介しましたが、漫画動画を広告として配信する際にもいくつか気をつけるべき点があります。下記でご紹介する配信のポイントをチェックしておきましょう。
- メディアの特性、配信ターゲットと漫画動画の内容・コンセプトを合わせる
せっかく漫画動画を配信してもターゲット層が好感や関心を持つ内容になっていなければ広告の効果は見込めません。例えばYouTubeでは出稿時に所在地域・使用言語・関心内容などの条件で広告を表示するユーザーを絞ることができます。広告として制作する漫画動画は、メディアのユーザー属性、宣伝対象である商品・サービスのターゲットを意識して制作する必要があります。
- 誘導先のWebページと漫画動画の訴求内容を一致させる
漫画動画で視聴者が興味を持ったとしても、リンク先のWebページの内容が漫画動画の内容と乖離していると、その後の購入や入会につながりにくくなります。動画広告をクリックしたあとに誘導するWebサイトの内容を漫画動画の訴求する内容と合わせておくことも大切です。
- 広告の反応を見て内容を改善する
YouTubeなどの動画広告は視聴回数、CV数(視聴者の行動に関する指標)、平均総再生時間などの指標で広告効果を分析することができます。視聴者の反応によって漫画動画の内容や構成を改善することでより効果的な漫画動画にすることができます。
漫画動画を制作・配信するときの注意点・デメリット
このようにさまざまなメリットのある漫画動画ですが、デメリットを確認しておくことも役立ちます。漫画動画を制作する際は以下のような注意点に気をつけましょう。
- YouTube広告の審査が通りにくい場合がある
YouTube広告はGoogle社の審査を経て、広告配信ができるようになります。前述のように漫画動画には信ぴょう性や質の低いものがあり、そのような動画は承認を得られない場合があります。YouTube広告の審査の基準はGoogle広告のポリシーに記載されているので、事前によく確認しておきましょう。漫画動画は表現の自由度が高いことが特徴ですが、誇張した表現などで禁止コンテンツに該当しないよう注意が必要です。
- コンプレックスをあおる表現に注意が必要
「漫画動画に適した業界・サービス」の項目でもご紹介したように、漫画動画は悩みや課題を解決したい商品・サービスの説明に向いています。しかし、外見や健康の悩みなどのコンプレックスをあおるような表現は視聴者に不快感を与える恐れもあります。広告主・制作者は、広告効果を狙うあまり、このような行き過ぎた表現にならないよう十分注意が必要です。
- 制作の手間がかかる
漫画動画は制作コストを比較的抑えられるというメリットをご紹介しましたが、制作にはさまざまなクリエイターの力が必要であり、一定の手間はかかります。「撮影が不要だから簡単に作れる」というものではないため、制作期間に余裕を持って取り組むことが重要です。
漫画動画の事例・見本
最後に、漫画動画の事例をご紹介します。以下でご紹介する漫画動画はいずれも企業が商品・サービスをPRしたり、メッセージを伝えたりするために制作されたものです。
通信講座の受講しやすさなどが漫画動画でわかりやすく表現されています。
1人暮らしでペットを飼うことのリスクを漫画動画で感情に訴えかけるように描いています。
商品の特徴を親子のやりとりのストーリーで表現しています。漫画のコマ割り表現が生かされています。
まとめ:漫画動画を活用して広告の効果を高めよう
漫画動画は、短い時間でわかりやすく、親しみやすく商品・サービスを紹介するのに適した表現方法です。
しかし、漫画動画を活用した広告が増えているものの、信ぴょう性や質が低いものが増えているのも事実です。
漫画動画の制作は比較的低予算でできますが、企画・構成を適切に作り込み、ターゲット層に響く漫画動画を制作することではじめて本来の広告効果が見込めます。他の動画と差別化するためにも、上記でご紹介したポイントなどを参考に効果的な漫画動画を制作してみてください。