YouTube広告を効果的に運用するための基本的な流れやポイントについて説明します。YouTube広告はテレビCMなどと比べ、簡単に配信できますが、PDCAサイクルを回し、成果を出すためには継続的な運用が必要です。運用のコツや効果的な動画改善方法を知り、YouTube広告を最大限に活用しましょう。
YouTube広告運用の基本的な流れ
はじめに、YouTube広告運用の大まかな流れを把握しておきましょう。YouTubeに広告を配信するには、基本的に以下のような手順があります。
- YouTube広告の目的・ターゲットを決める
- YouTube広告の種類を選択する
- 広告に使用する動画を制作する
- YouTube広告を設定する
- YouTube広告の指標を分析・評価する
- 動画クリエイティブや広告の設定を見直す
以上の流れに沿って、それぞれの詳細について説明します。
1. YouTube広告の目的・ターゲットを決める
YouTube広告を配信する際に最初に行うべきことは、広告の目的とターゲットの決定です。
YouTube広告は配信先や課金方式が異なるキャンペーンのタイプを選択できますが、目標がブレてしまわないよう、計画段階で明確な目的とターゲット像を定めておくことが大切です。
広告の目的を決める
まず、YouTube広告を配信する目的を明確にします。
YouTubeは、幅広い層にリーチできる動画プラットフォームです。そのため、YouTube広告は「商品・サービスを広く認知させる」「潜在的に関心のある層にアプローチし、広告を印象に残す」「直接または間接的にWebサイトへ誘導するなど、有益なアクションを促す」などの目的に向いています。具体的には、以下のような項目が考えられます。
YouTube広告の目標・目的の例
- 販売促進
- 見込み顧客の獲得
- Webサイトへの誘導(トラフィック促進)
- 商品・サービスの比較検討促進
- 商品・サービス・ブランドの認知向上
上記の分類は、YouTube広告を設定する際に最初に選択する広告の目標にもなっています。自社の広告の目的に合致する項目があるか確認しておきましょう。
広告のターゲットを決める
ターゲットとなるユーザー層のペルソナを想定し、ターゲット像を明確にすることも大切です。
YouTube広告のターゲティング設定では、性別・年齢・子どもの有無・世帯年収などのユーザー属性のほか、ユーザーが興味のあるキーワードやトピックを指定して配信先を指定できます。
しかし、ターゲティング設定はあまりに絞りすぎると配信先の選択肢が狭くなり、思ったような効果をあげられない場合もあります。仮説をもとに核になるターゲット像の条件を定めたうえで、実際に広告を設定する際には「年齢を広げてみる」「キーワードを変えてみる」など調整の余地を持てるようにするとよいでしょう。
2. YouTube広告の種類を選択する
次に、YouTube広告の種類を検討します。
YouTube広告にはいくつかの広告フォーマットがあり、広告効果を高めるためには目的に合った広告の種類を選ぶ必要があります。広告フォーマットの種類は大きく分けて以下の5つがあります。
インストリーム広告(スキップ可能 / スキップ不可)
インストリーム広告は、YouTubeで配信される動画の前・中・後などに再生される広告です。広告再生開始後、ユーザーの意思で5秒後以降にスキップできる配信方法と、スキップが不可能な配信方法があります。
インフィード動画広告
インフィード広告は、YouTubeのホームフィードや検索結果、おすすめ欄に動画のサムネイルとテキストで表示される広告です。ユーザーがサムネイルをクリックすると動画の再生が開始します。
バンパー広告
バンパー広告は、YouTubeで配信される動画の前・中・後に6秒間のみ再生される広告です。短い時間でインパクトのある訴求ができます。
アウトストリーム広告
アウトストリーム広告はYouTube以外のWebサイトやアプリ(Google動画パートナー)に掲載される広告の種類です。いろいろなWebサイトで表示されるため、商品・サービスの認知を高めたい場合に適しています。
マストヘッド広告
マストヘッド広告は、YouTubeのホームフィード(トップページ)に大きく掲載される広告フォーマットです。多くのユーザーの目にとまる広告枠であり、短期間で大幅にリーチを拡大したい場合に適しています。
各フォーマットの課金方式に関する解説は以下の記事を参照してください。
3. 広告に使用する動画を制作する
次に、YouTube広告に使用する動画を制作します。
前項で紹介したように、YouTube広告のフォーマットによって最適な動画の長さや構成は変わります。YouTube広告に合った動画の作り方は、この記事の最後にある項目を参照してください。
広告に使用する動画の用意ができたら、動画ファイルを自社のYouTubeアカウントにアップロードしておきます。
4. YouTube広告を設定する
YouTube広告を配信するには、Google広告のアカウントが必要です。
アカウント作成後は、Google広告の管理画面にログインし「キャンペーン」の条件を設定します。Google広告では、広告の目的や商品・サービスのカテゴリごとに「キャンペーン」という単位で広告を管理しており「キャンペーン」の中に、さらにターゲットや使用する動画の異なる「広告グループ」を作成します。
前述のように、この段階でキャンペーンの目標、予算、期間、ターゲットなどを指定します。
YouTube広告の設定方法は以下の記事も参考にしてください。
5. YouTube広告の指標を分析・評価する
YouTube広告が配信できたら、その後は目標に合った指標で広告の成果を分析します。よく使われる指標の種類や、目的別に見るべき指標、ブランドリフト調査について紹介します。
YouTube広告の評価指標例
YouTube広告の指標には以下のようなものがあります。
表示回数
インストリーム広告の再生開始部分やインフィード広告のサムネイルが表示された回数です。
視聴回数
視聴者が動画広告を30秒以上(30秒以下の場合は全部)見た回数です。広告のリンクやサムネイルがクリックされた場合も視聴回数にカウントされます(視聴がカウントされるタイミングは広告フォーマットによって異なります)。
視聴率
広告が表示された回数に占める視聴された回数の割合を表す指標です。「視聴回数 ÷ 表示回数」で計算できます。
YouTube広告の視聴率について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
平均広告視聴単価(CPV)
動画広告1回の視聴に対して広告主が支払う費用の平均額のことです。平均広告視聴単価は、動画のクリエイティブやターゲティング、入札方式などによって変動します。広告視聴単価が想定より高い場合、動画の長さやクリエイティブに課題がある場合が考えられます。
動画再生時間の割合
動画を再生した視聴者の中で動画全体の25%、50%、75%、100%再生したユーザーの割合を表した数値です。ユーザーがどの時点で離脱したかを大まかに把握でき、クリエイティブの改善に役立ちます。
広告視聴後の獲得アクション数
広告を見たことで行われたさまざまなアクションを計測する指標です。広告を視聴した後に動画が視聴された回数、再生リストに追加された動画数、高評価数、チャンネル登録数、共有数などを計測します。広告によって得られた付加価値や、関心度の高いユーザーを把握できます。
コンバージョン
視聴者が動画広告を視聴した後に、有益だと定義したアクション(商品購入、問合せなど)をした場合にカウントされる数値です。
ビュースルーコンバージョン(VTC)
広告が表示された視聴者が、計測期間内にサイトでコンバージョンを達成すると記録される指標です。視聴やクリックは条件に入らないため、広告表示だけで得られたコンバージョンを確認できます。
クリック数・クリック率
視聴者が広告のリンクなどをクリックした回数や、表示回数に占めるクリック数の割合を示します。YouTube広告のクリック率は検索広告(リスティング)より低くなるのが一般的です。YouTubeはコンバージョンに至るまでに動画を見たか(視聴回数)を重視しており、コンバージョンに至る過程にクリックは必ずしも必要ないと考えられています。
エンゲージメント数
ユーザーが動画広告を10秒以上(10 秒未満の場合は最後まで)視聴するか広告をクリックした場合にカウントされる指標です(インストリーム広告の場合)。
YouTubeはコンテンツ視聴を目的としたユーザーが集まる媒体のため、動画広告を見てすぐに行動しない場合も、YouTube広告をきっかけに、あとから購入に至るケースも考えられます。
そのためエンゲージメントした(動画広告を10秒以上見た)視聴者が計測期間内に行ったコンバージョンを計測する指標(エンゲージビューコンバージョン)もあります。
YouTube広告の目的別・見るべき指標
YouTube広告の効果を高めるには、広告の目的に合った指標の推移を確認することが大切です。
販売促進が目的の場合
コンバージョン率、ビュースルーコンバージョン数、エンゲージビューコンバージョン数などを見ることで、YouTube広告から最終的な目標に至った成果を確認できます。
商品・サービス・ブランドの認知を高める目的の場合
表示回数、視聴回数、獲得アクション数などを確認することでリーチできた層のボリュームを想定できます。
ターゲティングやクリエイティブの良しあしを評価したい場合
視聴率の比較や動画再生時間の割合、平均広告視聴単価の推移を読み取ることで状況を推測できます。配信条件やクリエイティブの調整を繰り返しながら、数値を確認することで評価・改善のサイクルをまわせます。
ブランドリフト調査
YouTube広告には、直接的な成果に加えて、後から商品やサービスを検索し、Webサイトを訪問や購入につなげる「指名検索」という効果があります。このような効果を測定するため、YouTube広告は広告効果調査ツールを無料で提供しています。このツールは、「広告を見たグループ」と「広告が表示されたが広告を見なかったグループ」に対してアンケートを行い、グループの回答の違いから、広告がブランド認知や広告想起、比較検討に与えた影響を判断します。このツールはインストリーム広告やバンパー広告で使用でき、ユーザーはバナー上で質問に回答できます。
6. 動画クリエイティブや広告の設定を見直す
運用の最終段階は、指標の評価に基づく改善活動です。
上記のような指標や調査の結果を分析しながら仮説を立て、動画のクリエイティブや数、ターゲティング、入札方式などを見直します。改善作業の実行後は、さらに評価・見直しを繰り返し、PDCAサイクルをまわしていきます。
YouTube広告の効果を高めるために継続的な改善は重要です。一方で、このような評価・改善サイクルは、知識・経験がなければ判断しにくい分野でもあります。始めは内製でスタートする場合もありますが、本格的な運用をする場合は、動画マーケティングのノウハウがある広告代理店や動画制作会社などに相談するのもおすすめです。丸投げではなく、プロと協働して改善を進めれば、自社ならではの運用ノウハウを蓄積できるでしょう。
成果につながるYouTube広告動画の作り方
最後に、YouTubeで配信する広告動画の作り方や、より効果を高める工夫を紹介します。
動画冒頭の表現を工夫する
動画の冒頭は、視聴者が興味を持ち続けるために非常に重要な要素です。視聴者に広告を見続けてもらうためには、インパクトのある表現を用いることが重要です。例えば、製品やサービスの魅力的な機能やメリットを最初に紹介したり、続きが気になるような構成にしたりするなど、工夫して表現しましょう。
訴求ポイントの異なる複数の動画を制作し比較する
広告の訴求ポイントは、ターゲット層によって異なります。そこで、複数の動画パターンを制作し、異なる訴求ポイントを試してみましょう。例えば、「出演者(性別・年齢の違い)」「商品画像」「利用者の声」など、多岐にわたる観点が考えられます。各動画の視聴率やコンバージョン率などを比較することで、より効果的な訴求ポイントを見つけることができます。
アクションを促すフレーズ、キャッチコピーなどの表現を変える
動画内で使用するアクションを促すフレーズやキャッチコピーは、視聴者の反応を左右する非常に重要な要素です。視聴者が反応しやすい表現を見つけるために、試行錯誤を重ねましょう。例えば、「Webで詳しく確認できます」「1分で見積もりができます」「今だけ特別価格でお届けします」など、さまざまな表現が考えられます。
動画の構成やストーリーを工夫する
動画広告は、視聴者に興味を持ち続けてもらうために、動画の構成やストーリーの工夫が大切です。例えば、ターゲット層が共感できる悩みを最初に提示し、自社サービスの優れた点で解決策を提供し、最後に割引などのオファーで購入を後押しする方法があります。視聴者にとって価値のあるストーリーを作り上げることが重要です。
YouTube動画制作費用の相場については以下の記事も参考にしてください。
まとめ:運用のポイントを押さえ、計画的に取り組もう
ご紹介したように、YouTube広告の運用には、広告制作や分析など、広範な知識が必要です。
YouTube広告を本格的に運用するには、まず全体像を理解し、自社で不足している部分については、動画制作会社などの専門家に相談することをおすすめします。動画マーケティングは、継続的に運用し、改善を繰り返すことで効果を高めることができます。プロの力を借りながら、YouTube広告の成果を最大化しましょう。