YouTube広告のターゲティング方法や、ターゲティングの成果を高めるポイントを紹介します。
YouTube広告を配信している方の中には「広告がターゲット層に届いていないのでは…?」と不安に感じたことがある方もいるでしょう。広告効果をより高めるためにも、ターゲティングの仕組みや活用法を改めて学び、広告運用に活かすことが重要です。
YouTube広告のターゲティングとは
YouTube広告の「ターゲティング」とは、YouTube広告を配信する広告主が広告の配信先条件を指定できる機能のことです。
一般ユーザーとしてYouTubeを視聴すると、興味がある分野の広告や以前に検索した商品に関連する広告が表示されることがあります。これはYouTubeが、年齢・性別・興味のある話題などのさまざまな条件でターゲットを絞り込み、広告を配信しているからです。このような個人にあった広告を配信する仕組みを「パーソナライズ広告」といいます。
パーソナライズド広告・プライバシー設定について
YouTube広告のターゲティングについて理解するために、まずはGoogleのパーソナライズド広告機能とユーザーのプライバシー設定について知っておく必要があります。
YouTube広告は、Googleが取得したユーザーの属性や興味・関心などの情報をもとに、広告の対象を絞り込んでいます。この個人に合わせた広告配信の仕組みを「パーソナライズド広告」と呼びます。ユーザー自身がこの機能を使用するかどうかを選択することができます。
また、プライバシー保護のため、ユーザーはGoogleに提供するアカウント情報やアクティビティ情報を制限することもできます。
したがって、ユーザーがパーソナライズド広告機能をオフにしていたり、提供する情報を制限している場合、広告主のターゲット対象であっても、そのユーザーには広告が配信されないことがあります。
YouTubeに表示される広告が人によって違う理由については、こちらの記事で詳しく解説されています。
ターゲティングの重要性
ターゲティングを理解し、適切に設定すると、どのような利点があるのでしょうか。
YouTubeは日本国内で月間約7,000万人ものアクティブユーザーが利用するプラットフォームです。幅広い属性・嗜好のユーザーが利用しているため、どのような傾向を持つユーザー層に広告を届けると効果的かを知ることが費用対効果を高める重要なポイントになります。
また、YouTube広告の課金形態は、視聴回数や表示回数に応じて課金されるフォーマットが多いです。ターゲティングが合わない場合、商品やサービスのターゲットと異なるユーザーに広告が表示されるため、無駄な広告費が増加してしまいます。
広告をより効率的に運用するためにも、広告主はターゲティングの種類や設定方法の理解を深めたうえで、ターゲティング条件をどのように組み合わせるのが効果を最大化できるのか検証し続けることが大切です。
YouTube広告のターゲティングの種類
YouTube広告のターゲティングは大きく分けて「オーディエンスターゲティング」「コンテンツターゲティング」の2つの設定カテゴリがあります。2つのターゲティング方法の大まかな違いは以下の表の通りです。
また、このほかにも、地域・言語・デバイス・除外条件などを指定できます。
オーディエンスターゲティング |
---|
「誰に」広告を出すかを選択。興味や行動にもとづいたユーザーグループごとにターゲットを指定する方法。 |
コンテンツターゲティング |
「どこに」広告を出すかを選択。広告を配信する場所やコンテンツのテーマごとにターゲットを指定する方法。 |
オーディエンスターゲティング | コンテンツターゲティング |
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「誰に」広告を出すかを選択。興味や行動にもとづいたユーザーグループごとにターゲットを指定する方法。 | 「どこに」広告を出すかを選択。広告を配信する場所やコンテンツのテーマごとにターゲットを指定する方法。 |
オーディエンスターゲティング
オーディエンスターゲティングは、ユーザーの属性や興味・関心に基づいて、広告の配信先を指定するターゲティング方法です。具体的な設定方法については、「オーディエンスターゲティングの設定方法」で紹介されています。
オーディエンスターゲティングでは、さまざまな設定項目があり、広告配信の目的に合わせたターゲティングが可能です。例えば、特定のトピックに興味のある層に幅広く広告を配信したい場合や、購買意欲の高い層にアプローチしたい場合など、絞り込む条件を組み合わせることで、様々なターゲット層に広告を配信することができます。
コンテンツターゲティング
コンテンツターゲティングは、コンテンツの内容に基づいて広告を配信する方法です。
例えば、特定のトピックやキーワードを指定することで、ターゲットユーザーが関心を持ちそうな話題の関連カテゴリの動画に広告を配信できます。また、人気がある特定のサイトのURLを指定することもできます。
コンテンツターゲティングは、広いターゲット層に商品やサービスを紹介したい場合に向いています。ターゲット層の興味があるトピックを把握している場合や、ターゲット層が多く集まるYouTubeチャンネルなどがわかっている場合に活用すると効果的です。
また、オーディエンスターゲティングと組み合わせることで、属性グループを指定した上で表示先を絞り込むことや、属性を絞った上で指定したキーワードに関連する配信面に表示を広げることなどの応用ができます。
具体的な設定方法については、「コンテンツターゲティングの設定方法」で説明されています。
ターゲット地域
広告の配信先として地域を指定できます。「国」「国内の特定の地域」「ある地点を中心とした半径内」のいずれかでビジネスに適したエリアを指定できます。
ターゲット地域を設定した際に抽出されるのは、以下に該当するユーザーです。
- 「ターゲット地域にいる可能性が高い」
- 「よく訪れる」
- 「その地域に興味がある」
店舗型サービスや訪問型サービスなど、対象エリア外のユーザーに広告を配信しても効果が見込めない事業形態の場合、ターゲティングで地域を指定することでより効率よく広告を配信できます。
ターゲット言語
ターゲットとなる言語を設定することも可能です。ターゲット言語を指定すると、Googleがその言語を理解できると判断したユーザーに対し、指定の言語で公告が表示されます(広告が自動的に翻訳されるわけではありません)。
対象デバイス
広告を表示するデバイスを選択できるターゲティング項目です。パソコン、モバイル、タブレット、TV画面が指定できます。
例えば、スマートフォン向けアプリの広告の場合、広告配信先をモバイルデバイスに限定することで、より広告効果が見込めます。
除外条件
広告を運用するなかで、ターゲティングしても効果の低いユーザー層が判明した場合、そのユーザー属性グループを広告対象から除外できます。
例えば、プロテインの広告で「スポーツ・フィットネス」に興味のある層に広告を配信しても「ヨガ」のキーワードで表示されたユーザーグループの効果が低い場合、そのキーワードを除外できます。
また、特定のWebサイト、YouTubeチャンネルなどを指定して配信先から除外することも可能です。
YouTube広告のターゲティング設定方法
次に、YouTube広告のターゲティングで設定できる項目を理解しておきましょう。
ここでは主要な設定項目である「オーディエンスターゲティング」「コンテンツターゲティング」の設定方法について紹介します。
オーディエンスターゲティングの設定方法
オーディエンスターゲティングには、以下のような設定項目があります。さまざまな観点があり、項目の組み合わせやトピックの選定などで、ターゲットグループを「絞り込む」ことも、関連性の高いユーザーに「広げる」こともできるのが特徴です。
ユーザー属性グループ
ユーザーの属性を
- 「性別」
- 「年齢」
- 「子どもの有無」
- 「世帯収入」
の大まかなカテゴリで選定できます。年代別などの選択肢が用意されており、対象にしたい属性にチェックを入れて指定します。
詳しいユーザー属性
上記のユーザー属性よりも、より詳細な条件でターゲットを指定できます。
選択肢には
- 「配偶者の有無(独身、既婚、交際中)」
- 「教育(最終学歴や現役大学生)」
- 「住宅所有状況(住宅所有、賃貸)」
- 「就業状況(業種、社員数)」
などがあります。
興味・関心・習慣
ユーザーが興味のあるテーマやトピックをベースに、ターゲットを絞り込む項目です。もっとも基本的な設定方法は「アフィニティセグメント」と呼ばれるもので、ターゲットとなるユーザーの関心が高いと思われるトピックを選択して指定します。
トピックの選択肢には「スポーツ・フィットネス」「テクノロジー」「ニュース・政治」「買い物好き」などがあります。
購買意向の強いセグメント
ユーザーの行動分析に基づいて選定された購買意向の強いユーザーグループに広告を配信する項目です。さらに詳細項目として例えば、「アパレル・アクセサリー」「イベントのチケット」など商品カテゴリの選択肢が用意されています。
ライフイベント
人生の節目となるタイミングを迎える人を広告のターゲットに設定できます。詳細カテゴリには「マイホームの購入」「大学卒」「定年退職」「引っ越し」「新しいペット」「結婚」などがあり、ライフイベントを期に商品を購入したり、サービスを利用したりするニーズを捉えられます。
データ セグメント(旧称「リマーケティング」)
広告主の動画、動画広告、YouTube チャンネルへの接触履歴を収集したデータを利用し、過去に接点を持ったユーザーに広告を配信できるターゲティング機能です。データセグメントを活用することで、自社のYouTubeチャンネルの視聴者やWebサイトを訪れたユーザーを対象に広告を配信できるようになります。
すでに興味・関心のある層に広告を配信することで、高い費用対効果を見込めるターゲティング手法で、このような広告は「リマーケティング広告」とも呼ばれています。
カスタマーマッチ
自社で収集した顧客データにもとづいて広告を配信する機能です。名前、Eメール、国、電話番号などをCSV形式でまとめた顧客リストをアップロードしてターゲットに設定します。
近年では、プライバシー保護の観点からCookie(※)を利用したリマーケティング広告が段階的に廃止されることになっており、自社独自のデータを活かした広告配信方法としてカスタマーマッチの活用が重視されています。
※Cookie:クッキー。Webサイトにアクセスしたときにユーザーに付与される一時ファイルのこと。広告主はCookie情報をもとにリマーケティング広告を配信しています。
コンテンツターゲティングの設定方法
続いて、コンテンツターゲティングの設定項目を紹介します。
キーワード
商品やサービスに関連する任意のキーワードを指定し、このキーワードに関連する動画を視聴するユーザーに対して広告を表示できる設定項目です。
トピック
「自動車」「キャンプ」など、ターゲット層が興味のあるトピックを指定すると、関連するテーマのWebページやYouTube動画に広告を表示します。
プレースメント
特定のWebサイトやYouTubeチャンネル、YouTube動画を自分で選んで広告を表示できるターゲティング手法です。他の設定項目はほとんどがトピックやキーワードに基づき、Googleが関連性の高いサイトに自動的に広告を配信する方式ですが、プレースメントを設定すると指定したサイトだけが配信先になります。
本記事ではターゲティングに特化してYouTube広告の配信方法を解説していますが、YouTube広告運用の全体の流れを知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
効果的なターゲティングのポイント
ここまでは、ターゲティングの基本的な設定方法について説明しました。では、実際にターゲティングで広告の効果を高めるにはどのような点に気をつければよいのでしょうか。
目的に合わせてターゲティング項目を選択する
広告を配信する際は、事前に目的を明確にすることがもっとも重要です。
そのうえで「認知を高めたい」「比較検討を促進したい」「購入につなげたい」などのキャンペーンの目的に合わせて、ターゲティング項目を選択します。
以下で、目的別に適したターゲティング項目の例をご紹介します。
認知を拡大したい
商品・サービスを知らない人に対し、幅広く認知を拡大したい場合、指定したトピックに合わせてGoogleが関連性の高いページを自動的に選定し、広告を表示するターゲティングがマッチするでしょう。
向いているターゲティング項目
- アフィニティセグメント(オーディエンスターゲティング)
- トピック(コンテンツターゲティング)
比較・検討を促進したい
潜在的なニーズは持っているものの、情報収集段階で迷っているユーザーに対し、比較・検討を促したい場合、商品・サービスの一般名称や関連するキーワードを指定する方法や、購買意向の強いセグメントを利用する方法が効果的です。競合商品や類似商品のYouTubeチャンネルをプレースメントターゲティングで指定する場合もあります。
向いているターゲティング項目
- キーワード(コンテンツターゲティング)
- プレースメント(コンテンツターゲティング)
- 購買意向の強いセグメント(オーディエンスターゲティング)
購入につなげたい
YouTube広告からなるべくダイレクトに購入(コンバージョン)につなげるのが目的の場合、自社の商品をすでに検討しているユーザーに広告を配信するのが効果的です。データセグメントを活用したリマーケティング広告や、精度の高い自社データを活用したカスタマーマッチが適しているでしょう。
向いているターゲティング項目
- データセグメント(オーディエンスターゲティング)
- カスタマーマッチ(オーディエンスターゲティング)
YouTube広告ターゲティングの注意点
最後に、YouTube広告のターゲティングを設定するうえでの注意点をご紹介します。
ターゲットを絞りすぎない
ご紹介したように、YouTube広告のターゲティング項目は多数あり、組み合わせによってより精度の高いターゲット層に広告を配信できます。しかし、あまりに絞り込みすぎると、配信先が少なくなりすぎ、思ったような広告効果が得られない場合があります。
一方で、ターゲットを広げすぎてもムダが生じてしまうため、目的に合ったバランスのいいセグメント方法を見つけることが大切です。
フリークエンシーキャップを設定する
YouTubeに何度も同じ広告が表示されると、視聴者にマイナスなイメージを持たれる恐れがあるほか、広告効果も下がるといわれています。そこで設定しておきたいのが広告配信頻度を指定する「フリークエンシーキャップ」です。
インプレッション(表示)の発生頻度または視聴の発生頻度で設定でき、同じユーザーに対し、指定期間内に最高何回まで広告を表示するかを設定できます。一般的に、1日1~3回を上限に設定します。
検証に必要な期間・指標を決めておく
ターゲティングは1回でベストに設定できるものではなく、運用しながら修正・改善し続けるものです。ターゲティングの成果を正しく分析するためにも、検証に必要な期間や、結果の好調・不調を判断できる指標を事前に決めておきましょう。
まとめ:ターゲティングの仕組みをよく知り広告効果を高めよう
詳細なターゲティング機能は、YouTube広告最大のメリットです。しかし、ターゲティングの設定方法や組み合わせは無数にあるため、最適解を導き出すのは難易度が高い分野でもあります。
ターゲティングの精度を高め、自社にとってもっとも効果的な設定方法を見つけたい場合は、動画広告のプロの力も借りながら分析・改善を繰り返しましょう。