社員教育を動画にすれば効率化する。そう言われることは多いのですが、実際に作ってみると、思ったほど楽にならなかったという声も同じくらい聞きます。
私たちの経験でいえば、研修動画が効くのは条件が揃ったときだけです。毎年同じ内容を繰り返し教えている。教える人によって説明の質が変わると困る。間違って伝わると事故や損失につながる。この3つが重なる研修は、動画にした瞬間に負担が軽くなります。逆に、年に1回・参加者が数人・その場のやりとりが中身になる研修は、資料と対面のほうが早く安く済みます。
厚生労働省の令和7年度能力開発基本調査によると、OFF-JT(通常の業務を離れて行う研修)を実施した事業所は72.6%あり、対象として最も多いのは新入社員向けの58.7%でした。毎年、同じ内容を、違う相手に教え直している研修が最も多いということです。ここは動画が最も効く領域と重なります。
この記事では、研修動画について、どの研修を動画にすべきかの判断から、内製と外注の線引き、費用の考え方、作り直しを前提にした設計、撮影で社内に起きること、外国人材向けの多言語対応までを解説します。作り方の手順だけでなく、発注する側が実際に決めることを中心に書きました。
動画にすべき研修と、しなくてよい研修
最初に判断すべきなのは、その研修を動画にする意味があるかどうかです。研修動画は一度作れば繰り返し使えますが、作るときには必ずコストがかかります。回収できるかどうかは、研修の性質でほぼ決まります。

動画にする価値があるのは、次の3つのうち2つ以上が当てはまる研修です。
- 同じ内容を、年に複数回、または毎年繰り返し教えている
- 教える人によって説明の内容や質に差が出ると困る
- 間違って伝わると、事故・クレーム・法令違反など実害につながる
新入社員のオリエンテーション、機械の操作手順、衛生管理、情報セキュリティ、コンプライアンスといった社内研修は、この3つにほぼ全て当てはまります。教える相手は毎年入れ替わり、内容はほとんど変わらず、間違えると困る。動画の得意分野です。
反対に、動画にしないほうがよい研修もあります。参加者どうしの議論が中身になる研修、その場で出た質問に答えることが価値になる研修、年に1回しか行わず参加者も数人という研修です。これらを動画にすると、作る手間に見合わないだけでなく、研修そのものの価値も落ちます。
判断に迷ったときは、その研修を来年もほぼ同じ内容で行うかどうかを考えてみてください。来年も同じことを話すなら動画にする価値があります。来年は違う話になるなら、資料を整えるほうが効きます。
研修動画の型と、それぞれに向く作り方
動画にすると決めたら、次は型を選びます。ひとくちに社員教育の動画といっても、講義を録画したものと、手順を1つずつ見せるものと、機械の内部構造をCGで見せるものでは、作り方も費用もまったく違います。
| 型 | 主な内容 | 向く作り方 | 陳腐化しやすい要素 |
|---|---|---|---|
| オリエンテーション | 会社の沿革、就業規則、福利厚生、組織の説明 | 実写、スライドとナレーション | 組織図、役職者、制度の名称 |
| ビジネスマナー・接遇 | 挨拶、電話応対、名刺交換、クレーム対応 | 実写のロールプレイ、ドラマ形式 | 服装、什器、出演者 |
| 業務手順・作業マニュアル | 機械操作、システムの使い方、店舗オペレーション | 実写と手元カット、テロップ、静止画の拡大 | 画面のUI、機器の型番、担当部署 |
| 製品・技術の解説 | 自社製品の仕組み、技術の原理、安全上の注意 | 3DCG、アニメーション、実写との組み合わせ | 製品名、仕様値、対応機種 |
| コンプライアンス・情報セキュリティ | 法令、ハラスメント、個人情報、不正防止 | アニメーション、事例の再現ドラマ | 法令名、改正年、罰則の内容 |
右端に「陳腐化しやすい要素」を置いたのには理由があります。研修動画は数年使うことが多く、その間に制度も機器も担当者も変わります。ここに挙げた要素を映像に焼き込んでしまうと、そこが変わっただけで全体を作り直すことになります。この点は後の章で詳しく扱います。
型を選ぶときに知っておいていただきたいことが1つあります。制作会社に外注される研修動画は、社内のマナー研修よりも、製品や技術を正しく理解してもらうための動画に寄ります。当社が公開している事例のうち研修・教育に分類されるものを数えると、18件のうち7件は当社が自社で制作したAIアバター動画のサンプルで、残る11件も社内研修そのものではなく、製品の使い方や技術の仕組みを伝える動画が中心でした(2026年8月時点の公開事例を集計)。
理由ははっきりしています。マナーや一般的なビジネススキルは市販の教材が充実していて、わざわざ作る必要がありません。一方、自社製品の構造や、自社の設備でしか起きない作業手順は、どこにも教材がないので作るしかありません。外注される研修動画は、この「どこにも売っていない内容」に集中します。
なお、手順を1つずつ見せるマニュアル型の動画については、作り方のポイントをハウツー動画・マニュアル動画の作り方で個別に解説しています。
どこまで内製で足りて、どこから外注か
研修動画の相談で最も多いのが、この線引きです。スマートフォンでも撮影できる時代に、どこから制作会社に頼むべきかという質問には、次のように答えています。

内製で足りるのは、次のような動画です。
- 社内向けの講義や勉強会を、そのまま録画して共有する
- スライドに音声を吹き込んで、資料の補足として配る
- 短い操作手順を、画面録画に簡単なテロップを付けて説明する
これらは撮って出しに近く、見た目の完成度が低くても目的を果たせます。日々の動画研修をこの形で回している会社も多く、ここに制作費をかける必要はありません。
外注を検討したほうがよいのは、次の3つのどれかに当てはまるときです。
- 間違えられない内容のとき:安全教育や法令に関わる研修は、説明の順序や表現を誤ると、それ自体がリスクになります。台本の段階で表現を詰め、監修を通し、修正の履歴を残せる体制が必要になります。
- 見えないものを見せる必要があるとき:機械の内部で何が起きているか、化学反応がどう進むか、電気信号がどう流れるか。こうした内容は実写では撮れないため、3DCGやアニメーションで見せることになります。当社への相談も、この「実物では見せられない」という話から始まることが多くあります。製造業の技術伝承でも同じ課題が出るため、製造業の動画活用でも扱っています。
- 同じ体裁で本数を揃える必要があるとき:1本だけなら内製でも作れますが、10本20本を同じトーン、同じテロップ、同じ構成で揃えるのは想像以上に大変です。しかも研修動画は後から追加されます。テンプレートを設計して外部に任せたほうが、結果的に安く済むことが多い領域です。
内製と外注のどちらか一方に寄せる必要はありません。実務では、基礎的な内容は市販の教材、社内固有の内容は外注、日々更新される細かい手順は内製、という組み合わせが最も現実的です。研修動画の制作を検討される場合は、研修・教育の動画制作もあわせてご覧ください。
費用はどう決まるか。研修予算の中での位置づけ
当社は制作費を公開しています。料金ページに掲載している目安は、研修・教育動画が20万円から100万円、マニュアル・ハウツー動画が20万円から80万円です。価格帯は、49万円まで、50万円から99万円、100万円から299万円、300万円以上の4つに分かれています。
同じ研修動画でも金額が5倍変わるのは、次の要素で工数が変わるためです。
- 動画の長さ
- 撮影日数と撮影時間
- カメラの台数
- 制作に関わるスタッフの人数
- 出演者にタレントやモデルを起用するか
- ロケ会場を借りるか
- CGやアニメーションを使うか
研修動画で金額が動きやすいのは、このうち撮影日数とCGの2つです。工場やオフィスで撮影する場合、稼働を止められる時間が限られるため、撮影日が増えるほど費用も社内の負担も増えます。CGは、実物では見せられないものを見せるために必要になりますが、モデリングから作る場合は工数がまとまってかかります。

金額が高いか安いかは、研修予算全体の中で見ると判断しやすくなります。厚生労働省の令和7年度能力開発基本調査によると、OFF-JTに費用を支出した企業は50.1%で、支出した企業における労働者一人当たりの平均額は2.0万円でした(前回調査は1.5万円)。
たとえば従業員300人の会社であれば、OFF-JTの費用はおよそ年600万円という計算になります。ここに研修動画を1本20万円から100万円で作り、3年使うとすれば、年あたりの負担は7万円から33万円です。研修予算全体の1%から6%程度に収まります。
この計算をお勧めするのは、研修動画の費用を「1本いくら」で判断すると高く見えるからです。実際には、集合研修の会場費、講師の稼働、受講者の移動時間と拘束時間が毎年かかっている中で、その一部を置き換える投資になります。何年使うか、何人が見るか、置き換えるのはどの費目かを先に決めておくと、社内の説明も通りやすくなります。
作り直しを前提に設計する
研修動画で最も見落とされるのが、作り直しのコストです。制度は改定され、機器は更新され、組織は変わります。3年前に作った動画が、法令名と役職名だけ古くなって使えなくなるということが実際に起こります。
対策は、作る前の設計で決まります。私たちが研修動画の構成を組むときに気をつけているのは次の3点です。
- 変わる情報を映像に焼き込まない:法令名、金額、部署名、担当者名、システムの画面といった要素は、後から差し替えられるテロップや静止画として重ねておきます。ナレーションで読み上げてしまうと、音声から作り直すことになります。
- 章を分けて作る:60分の研修を1本の動画にすると、1か所の改定で全体に手が入ります。10分前後の章に分けておけば、変わった章だけを差し替えられます。受講する側にとっても、必要な章だけを見返せるほうが便利です。
- ナレーションの差し替え手段を確保しておく:ナレーターを起用して収録した場合、数年後に同じ声で数行だけ録り直すのは簡単ではありません。合成音声を使えば、原稿を直して読み上げ直すだけで済みます。先ほど触れたAIアバター動画のサンプルは全部で9本ありますが、いずれも制作期間3日から7日で作っています。撮影を伴わず、合成音声とアバターで構成する動画は、この程度の期間で更新できるということです。
もちろん、すべての研修動画を合成音声で作るべきだとは考えていません。人が出て話すことに意味がある研修もあります。ただ、毎年少しずつ変わる制度の説明や、頻繁に更新される手順の解説については、更新しやすさを優先して作り方を選ぶ価値があります。
撮影と出演者。社内で起きること
外注する場合に、社内で何が起きるかも先に共有しておきます。研修動画の撮影で最も負担がかかるのは、制作会社ではなく出演する社員です。
出演者には、撮影当日の拘束が発生します。半日から1日、業務を離れてもらうことになります。台本がある場合は事前に目を通してもらい、当日は同じ場面を何度か撮り直します。話し慣れている方でも、カメラの前で正確に言い切るのは簡単ではありません。ここを見込まずにスケジュールを組むと、撮影日が延びます。
もう1つ、後から効いてくるのが出演者の異動と退職です。研修動画は数年使うため、出演した社員が辞めたあとも新入社員がその人の説明を見続けることになります。実務上の対応は3つあります。役職や氏名をテロップで出さない、複数人で分担して1人の露出を抑える、あるいは顔出しをしない作り方に切り替えるという方法です。
顔出しを避ける場合の選択肢は、ナレーションと図解で構成する、手元だけを撮る、アニメーションや3DCGで作る、合成音声とアバターを使う、という順に費用と印象が変わります。社内の合意が取りにくいときほど、この選択肢を先に示しておくと話が進みます。
外国人材向けの多言語対応
外国人材が増えている職場では、研修動画を多言語で用意する必要が出てきます。安全教育や衛生管理は、伝わらなかったときの影響が大きいためです。
言語を増やすときにかかるのは、翻訳、テロップの再配置、音声の3つです。翻訳は原稿を訳すだけでは済まず、直訳では意味が通らない箇所を調整します。テロップは言語によって文字数が変わるため、1行が2行になり、レイアウトを組み直すことになります。音声は、合成音声を使えば収録なしで用意できます。
ここで重要なのが、テロップを映像に焼き込んでいないかどうかです。焼き込んでいる場合、言語を1つ増やすたびに映像から作り直すことになり、費用の桁が変わります。最初から多言語展開の可能性があるなら、テロップは後乗せできる形で作っておいてください。
当社には約2,000名の登録クリエイターがおり、そのうち英語に対応できるのは419名です(2026年8月時点)。翻訳と多言語ナレーションを含む制作については、インバウンド動画の作り方でも詳しく扱っています。
発注する前に決めておくこと
最後に、制作会社へ相談する前に社内で決めておくと話が早い項目をまとめます。すべてが決まっている必要はありませんが、決まっていないことが分かっているだけでも進み方が変わります。
- 対象者と人数(新入社員か、全社員か、特定の部署か)
- 本数と1本あたりの長さの目安
- 何年使う予定か
- 更新の頻度(毎年の制度改定があるか)
- 配信先(社内のeラーニングシステムか、限定公開の動画か、DVDなどの物理媒体か)
- 字幕や多言語の要否
- 出演者を社内から出せるか
- 予算の上限と、その予算がどの費目から出るか
このうち、意外と決まっていないのが3番と4番です。何年使うかが決まると、作り方と費用の判断がほとんど決まります。1年で作り直す前提なら簡素に作るべきですし、5年使うなら更新できる構造にしておくべきです。
研修動画のよくある質問
研修でYouTubeの動画を使うことはできますか?
他社が公開している動画を研修で使う場合は注意が必要です。YouTubeの利用規約では、視聴は個人的で非営利目的の用途に限られ、それ以外の複製、ダウンロード、配信、放送などは、YouTubeまたは権利者から事前に書面で許可を得た場合を除いて禁止されています。埋め込みプレーヤーで表示することは規約上認められている使い方です。
したがって、動画をダウンロードして社内のeラーニングシステムに置く、一部を切り出して自社の教材に組み込むといった使い方は、権利者の許諾がない限り避けてください。研修で参照したい場合は、リンクや埋め込みで元の動画をそのまま再生する形にするのが安全です。社内の判断が難しい場合は、法務部門に確認されることをお勧めします。
研修動画は何分くらいが適切ですか?
内容によりますが、1本あたり10分前後を目安にしてください。集合研修をそのまま録画すると60分を超えることがありますが、最後まで見られないうえ、後から探しにくくなります。テーマごとに区切り、必要な章だけを見返せる構成にしたほうが、視聴率も理解度も上がります。更新のしやすさという点でも、章を分けておくほうが有利です。
研修動画の費用はいくらですか?
当社の場合、研修・教育動画は20万円から100万円、マニュアル・ハウツー動画は20万円から80万円を目安としています。金額が動く主な要因は、撮影日数、CGやアニメーションの有無、本数です。1本だけ作る場合と、同じ体裁で10本作る場合とでは、1本あたりの単価が変わります。複数本を予定している場合は、最初の相談時にその旨をお伝えください。
内製と外注では、どちらが安く済みますか?
1本だけを短期間で作るなら内製のほうが安く済みます。ただし、社内の担当者が撮影と編集にかける時間、機材やソフトの費用、作り直しの手戻りを人件費に換算すると、差は見た目ほど大きくありません。判断の目安は、その動画を何本作るか、何年使うか、間違いが許されない内容かどうかです。1本かぎりで社内向け、多少荒くても問題ないなら内製で十分です。
研修動画は、条件が重なる研修から順に作る
研修動画は、作れば効率化するものではありません。繰り返し教えている、属人差が出ると困る、間違えられない。この条件が重なる研修から順に動画にしていくのが、最も確実な進め方です。
そのうえで、内製で足りる範囲と外注すべき範囲を分け、何年使うかを先に決めてから作り方を選んでください。更新できる構造にしておけば、制度が変わっても部分的な差し替えで使い続けられます。
当社では、製品や技術の解説から、多言語対応の研修動画まで対応しています。何から決めればよいか分からない段階でも構いませんので、お気軽にご相談ください。
1,000社5,000本の実績