動画制作の契約書で押さえるべき7つのポイント | チェック項目やトラブル回避についても解説

動画制作
公開日:2025年1月10日 / 最終更新日:2025年1月6日
動画制作の契約書で押さえるべき7つのポイント | チェック項目やトラブル回避についても解説
桔梗 素直
桔梗 素直 株式会社VIDWEB クリエイティブコミュニケーション部

動画制作を外部の専門業者に依頼する際、ほとんどの場合、業務委託契約を締結することになります。しかし、契約書には法律用語や専門的な表現が多く含まれているため、内容を正確に理解するのは容易ではありません。そのため、契約書を十分に確認せずにプロジェクトを進行すると、後々トラブルに発展するケースも少なくありません。

信頼できる制作会社であっても、契約内容をしっかりと把握しておくことは、スムーズな取引を実現し、トラブルを未然に防ぐために不可欠です。

桔梗 素直

本記事では、動画制作を発注する企業の担当者の方に向けて、契約書の必須項目、作成手順、そしてトラブルを未然に防ぐためのポイントを分かりやすく解説します。具体的な事例や注意点を交えつつ、安心して動画制作を進めるための知識を身につけましょう。

【この記事の要約】
  • 契約書作成における重要項目とその法的根拠
  • 一般的なトラブル事例とその予防策
  • 契約書のチェックポイント

動画制作における業務委託契約書とは?

業務委託契約書とは、企業が業務を外部の専門家や専門業者に委託する際に締結する契約書のことです。動画制作の場合、発注者(クライアント)が制作会社に対して、動画の企画、撮影、編集などの業務を委託する際の取り決めを明確にした契約書になります。

動画制作に契約書が必要な理由

動画制作における契約書は、発注者と制作会社双方の役割、権利、義務、責任などを明確にするための重要なツールです。契約書が存在することで、以下のようなメリットがあります。

トラブルの防止
契約内容を明確にすることで、後々の誤解や認識のズレを防げます。納期や納品物の仕様、報酬額などを共有することで、成果物の期待値を一致させることができます。
法的リスクの最小化
契約書は法的な証拠となるため、万が一の紛争時にも対応が容易になります。特に、著作権や肖像権などの権利関係を明確にしておくことで、法的トラブルを未然に防げます。
信頼関係の構築
契約書によって双方の責任範囲が明確になり、信頼性の高い取引になります。これにより、円滑なプロジェクト進行と長期的なパートナーシップの構築を実現できます。

動画制作の業務委託契約書で押さえるべき5つのポイント

業務委託契約書により、制作会社が契約内容に基づいて業務を遂行し、成果物を納品する義務を負うことが明確化されます。

業務委託契約書の内容をチェックする際は、以下の5つのポイントに注意しましょう。

  1. 契約の目的と委託内容
  2. 納入・検収の取り決め
  3. 対価と支払い条件の取り決め
  4. 権利保証と帰属に関する取り決め
  5. 原版の保管および一般条項

ここでは、経済産業省が公開している「映像制作業務委託契約書」のサンプルを参考に、具体的な条項や注意点について詳しく解説していきます。

1.契約の目的と委託内容

動画制作業務委託契約書(サンプル)

発注企業(以下「甲」という。)と制作会社(以下「乙」という。)は、動画制作及び制作された動画(以下「本動画」という。)の使用に関し、次のとおり契約を締結する。

(目的)
第1条 甲は、本契約に基づき、甲のブランドイメージ向上および商品・サービスのプロモーション等を目的とした本動画の制作業務(以下「本業務」という。)を乙に委託し、乙はこれを受託する。2 本動画の内容は別紙1に記載するとおりとする。

(本映像の制作、報告等)
第2条 甲は、別紙1に記載する内容を踏まえて、乙との協議に基づき、本動画の内容の詳細を決定するものとし、乙はそれに基づき本動画を制作する。
2 乙は、本動画の制作のために甲から情報や資料等 (以下「資料等」という。) の提供を受けることが必要と考える場合、甲に提供を求めることができる。甲は、必要と考える資料等を乙に提供する。
3 甲は、随時、乙に本業務の進捗状況について報告を求めることができるものとする。

契約書に、契約の目的および委託内容が具体的に記載されているかを確認することが重要です。例えば、PRを目的とした動画の制作を依頼する場合であれば、「甲のブランドイメージ向上および商品・サービスのプロモーション等」、採用を目的とした動画であれば、「甲の採用活動の促進、企業理念の浸透、優秀な人材の確保等」といった記載が考えられます。

詳細な仕様や変更の可能性のある細部については、個別契約書や発注書を契約書に添付資料として紐づけることが一般的です。契約書内で「本動画の内容は別紙1に記載のとおりとする。」や「別途協議した個別契約書または発注書に基づく。」と記載することで、個別契約書や発注書などの別紙の内容も契約書の一部として有効になります。

このとき、個別契約書や発注書に、法的拘束力を持つ範囲で、制作する動画に関する主要事項が明記されているか確認しましょう。具体的には、以下のような項目が含まれます。

項目詳細
動画の目的企業PR、商品紹介、採用活動など
内容・コンセプトストーリー、メッセージ、ターゲット層など
尺(長さ)動画の総時間とその内訳
形式解像度、ファイル形式(例:MP4、AVIなど)、アスペクト比など
使用する素材音楽、画像、映像素材、ナレーションなど
納期・納品形式納品日、納品方法、納品内容(動画ファイル、画像、音声など)
桔梗 素直

これらの項目を明記することで、成果物の品質や納期に関する双方の期待値を一致させることができます。

2.納入・検収の取り決め

(納入)
第4条 本動画の納入期限及び納入方法は、別紙1に定めるとおりとする。

(検収)
第5条 甲は、乙から本動画の納品を受けた後、速やかにこれを検収し、その結果を乙に通知するものとする。
2 甲が検収の結果、本動画に不備または瑕疵があると判断した場合、甲はその旨を乙に書面または電子メールにて通知するものとする。
3 乙は、前項の通知を受けた場合、速やかに当該不備または瑕疵を無償で修正または再制作するものとする。
4 甲が納品後7日以内に検収結果の通知を行わない場合、本動画は検収に合格したものとみなす。

納入・検収に関する具体的な取り決めを行うことで、トラブル防止につながります。個別契約書や発注書に以下の項目が盛り込まれているか確認しましょう。

項目内容
納期・具体的な日付を設定 例)2025年XX月XX日までに納品する
※長期の場合は、進捗確認や中間成果物の提出期限を設定することもある。
納品形式・データ形式 例)MP4、MOVなど
・媒体 例)クラウドストレージ、USBメモリ、DVDなど
遅延時の対応・遅延時の対応策 例)制作会社が遅延する場合、速やかに発注者へ報告し、対応を協議する
※ペナルティ(報酬減額や補償)に関しても必要に応じて明記する
検収方法・検収期間 例)納品後○日以内に確認、不備がある場合は書面またはメールで通知
・修正対応 例)納品後1回目の修正は無償で対応
桔梗 素直

納入・検収に関する条項は、成果物の引き渡しから使用開始までをスムーズに進めるための基盤となります。特に、遅延や不備への対応を具体的に記載することが重要です。

3.対価と支払い条件の取り決め

(対価)
第6条 甲は乙に対し、本動画の制作及び別紙1に定める条件及び範囲における動画使用の対価(以下「委託費」という。)として、金●●●●円(消費税別途)を、以下に定める支払いスケジュールに従い、乙の指定する金融機関口座に振り込み支払うものとする。振込手数料は甲の負担とする。
2 委託費の支払いスケジュールは以下のとおりとする。
(1)着手金:委託費の●%に相当する金額を契約締結後●日以内に支払う。
(2)中間金:委託費の●%に相当する金額を、制作中間報告の受領後●日以内に支払う。
(3)残金:委託費の残額を、本動画の検収合格後●日以内に支払う。
3 支払いは以下の口座に行うものとする。
《金融機関・支店名/口座種別/口座番号/口座名義》
4 甲及び乙は、別紙1に記載する条件又は範囲を超える本動画の使用については、別途協議のうえ、その可否及び使用対価について合意するものとする。
5 委託費の支払いに関して甲が遅延した場合、乙は当該金額に対して年●%の遅延損害金を請求することができる。
6 委託内容の変更に伴う追加費用については、甲乙協議のうえ、書面により合意するものとする。

支払いに関する取り決めを明確にすることで、取引の透明性を確保できます。

項目記載例
総額動画制作費用(税込/税別)の総額を記載
支払いスケジュール着手金、中間金、納品後の残金など支払いタイミングを設定
支払い方法銀行振込、クレジットカードなど
追加費用1回目の修正は無償対応、2回目以降は○円/回など
桔梗 素直

支払いスケジュールや条件を明確に定めることで、資金準備を計画的に進められます。

4.権利保証と帰属に関する取り決め

(保証、第三者の権利の処理)
第8条 甲は、乙に提供した資料が正確であり、かつ、第三者の著作権、肖像権、パブリシティ権その他一切の権利を侵害しないものであることを保証する。
2 乙は、本契約に基づく本動画の内容及び甲による別紙1に定める条件及び範囲における使用にあたり、第三者の著作権、著作者人格権、著作隣接権、実演家人格権、肖像権、パブリシティ権その他の権利を侵害しないことを保証する。
3 前項の保証にあたり第三者との間で権利処理が必要になる場合には、甲乙は、その手続き及び費用負担について協議するものとする。
4 乙は、自ら及び本動画の制作に関与した者(出演者を含む)をして、甲又は甲の指定する者に対して著作者人格権又は実演家人格権を行使せず、行使させないものとする。

(権利の帰属等)
第9条 本動画及びその制作過程で生じた未編集素材の著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む)は、●[甲又は乙]に帰属する。
2 乙は、自社のウェブサイトにおいて、自社の制作実績の紹介のために、本動画の全部又は一部を公開することができる。ただし、そのために第三者から許諾を得る必要がある場合は、自己の責任及び費用負担において許諾を得るものとする。

(クレジット)
第10条 本動画の使用にあたっては、甲乙が別途合意する方法による著作権表示を行うものとする。

完成した動画の著作権がどちらに帰属するかを定めることは、契約の中でも特に重要なポイントです。著作権が発注者(甲)に譲渡される場合は、その範囲や条件を明確に記載しておきましょう。

項目内容
著作権の譲渡発注者に著作権を譲渡する場合、その範囲と条件を記載する。
利用範囲動画を使用できる媒体、地域、期間を具体的に定める。例)Webサイト、SNS、テレビCMなど
二次利用の可否発注者が動画を改変して使用できるかどうかを取り決める。改変可能な場合は用途や追加料金などの条件を明記する。
著作権人格権の不行使制作会社のクリエイターが著作者人格権(公表権、氏名表示権、同一性保持権)を行使しないことを明記する。
桔梗 素直

「著作権」「利用範囲」「著作者人格権」に関する取り決めを明確にすることで、後のトラブルを防ぐとともに、双方の権利と責任を円滑に調整できます。

5.原版の保管および一般条項

(原版の保管)
第12条 乙は、本動画の原版を、原則として、動画納入後3年間、責任を持って保管するものとする。
2 保管期間を経過した後の原版の保管については、甲乙協議のうえ決定する。
3 乙は、甲の事前の同意を得た場合を除き、保管中の原版を第三者に貸与または処分してはならないものとする。

(秘密保持)
第13条 甲および乙は、本契約に関連して相手方から提供されたすべての非公開情報(以下「秘密情報」という。)を第三者に開示または漏洩しないものとする。
2 本条の義務は、本契約終了後も3年間存続するものとする。

(契約の解除)
第14条 甲または乙は、相手方が本契約に違反し、その是正がなされない場合、本契約を解除することができる。解除にあたり、相手方に生じた損害については、その範囲に応じて賠償請求を行うことができる。

原版の保管期間と、秘密保持、解除、権利義務譲渡禁止、損害賠償、不可抗力、誠実協議条項、裁判管轄などの一般条項(※)をチェックしましょう。特に、秘密保持および契約の解除に関する条項は、トラブル発生時の対応を左右する重要な項目となるため、注意深く確認する必要があります。

※一般条項…契約書において、契約の種類に関係なく、幅広く適用される共通的な条項

項目内容
原版の保管映像の原版を保管する期間やその後の取り扱いを定める。
秘密保持業務上知り得た機密情報を第三者に開示しない義務を定める。
契約の解除契約違反や履行困難な場合の解除条件を定める。
桔梗 素直

契約書の安定性を確保し、トラブルを未然に防ぐ重要な要素です。情報漏洩リスクを最小限に抑え、法的トラブルの発生を防ぐ保険的役割を果たします。

動画制作契約でありがちなトラブルとその回避方法

動画制作を依頼する際、契約内容を十分に理解せず進めるとトラブルにつながることがあります。ここでは、よくあるトラブルとその回避方法を紹介します。

動画の使用範囲に関するトラブル

(トラブル例)
制作会社に依頼した動画を、自社のSNSやWebサイトで掲載したところ、「契約で定めた使用範囲を超えている」と制作会社から指摘を受けた。さらに、追加料金を請求され、想定外の出費となってしまった。

(原因)
契約書に動画の使用媒体、使用期間、利用地域などが明確に記載されていなかったため、発注者と制作会社の間で使用範囲に関する認識のズレが生じた。

(回避策)
  • 使用範囲の明記:契約書に動画の使用媒体(例:SNS、ウェブサイト、テレビCMなど)、使用期間(例:「契約締結日より2年間」)、利用地域(例:国内限定、全世界など)を具体的に記載する。
  • 使用権の条件設定:「発注者は制作会社が保有する著作権を侵害しない範囲で動画を利用できる」といった使用権の条件を契約書に明文化する。
  • 権利処理の責任分担:動画内で使用される音楽、画像、映像素材などの権利処理について、「動画内のBGMやイラスト等の二次著作物の権利処理は制作会社が責任を負う」など、どちらが担当するのかを明記する。
  • 使用範囲外の対応設定:使用範囲を超える利用には事前協議が必要である旨や、追加料金が発生する場合の条件を記載する。
桔梗 素直

後から『ここで使いたかったのに…』という声を耳にすることが少なくありません。事前の打ち合わせと契約書作成で、お互いの認識をしっかりすり合わせておきましょう。

使用期限に関するトラブル

(トラブル例)
  • タレントを起用した動画を制作し、使用期限を過ぎてもSNSやWebサイトでその動画を使用し続けたところ、タレント事務所から追加費用を請求された。
  • 元社員が出演する動画を退職後も使用していたため、元社員本人から肖像権侵害を主張され、対応に追われることになった。

(原因)
契約書に出演者の使用許諾期間や条件が明記されていなかったため、動画の使用に関する双方の認識が一致していなかった。

(回避策)
  • 使用許諾期間の明記:出演者やタレントの使用許諾期間を、「この動画の使用期間は契約締結日より2年間とする」など具体的に定める。
  • 使用範囲・地域の明記:使用範囲(例:SNS、テレビCM、ウェブサイト)や使用地域を明確に記載する。
  • 使用期間終了後の条件:使用期間終了後に使用継続を希望する場合の追加条件(例:再契約手続きや追加費用)を定める。
  • 肖像権の取り扱い:タレントや出演者の肖像権の取り扱いについて、契約書に明記する。(例:使用期間外での使用は違約金が発生する旨を記載)自社社員が出演する場合においても、退職後の利用に関する取り決めを行う。
桔梗 素直

タレントさんや社員の出演がある場合は、使用期限を必ず明記しましょう。特に退職後の社員出演動画を使い続けるケースは後々のトラブルにつながりやすいので、契約段階でクリアにしておくことが重要です。

修正依頼に関するトラブル

(トラブル例)
動画納品後、「ここを少し変えてほしい」と何度か修正依頼を出したところ、制作会社から追加料金を請求された。しかし、修正範囲や回数について契約書に明確な記載がなく、「これも契約内だと思っていたのに」と感じ、制作会社との関係がぎくしゃくしてしまった。

(原因)
契約書に修正可能な範囲や回数が明記されていなかったため、双方の認識が一致しておらず、トラブルが発生した。

(回避策)
  • 修正回数と範囲の明記:契約書で、無償で対応可能な修正回数や範囲を具体的に記載する(例:「初稿提出後3回まで無償で対応」)。
  • 納品後の修正条件を設定:納品後の修正依頼に関して、修正が有償となる場合の料金(例:1回あたり○円)、修正対応のスケジュール(例:修正完了までの期間や締切)
  • 追加料金の発生条件の明文化:無償対応を超える場合に追加料金が発生する条件を具体的に定める(例:納品後の大幅な内容変更や新規デザインの追加は別料金)。
桔梗 素直

『ちょっと修正を…』が重なると、制作現場が大混乱することも。修正回数や範囲は、あらかじめ契約書でしっかり設定しておけば、追加費用のトラブルも防げます。

動画制作契約書の無料テンプレート

契約書を自作するのが難しい場合は、信頼できるテンプレートを活用するのも一つの方法です。以下のテンプレートは、業界標準として広く利用されています。

これらのテンプレートを参考に、自社の状況に合わせて必要な項目を追加・修正してください。ただし、テンプレートをそのまま使用せず、必ず社内の法務部門や弁護士などの専門家に内容を確認してもらいましょう。

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業務委託契約書は、発注者と制作会社の双方にとって、円滑な取引の基盤となる重要な書類です。契約書をしっかりと整備することで、動画制作の目的達成に向けた双方の権利と義務を明確化し、トラブルを未然に防げます。

特に、使用範囲、納期、修正対応、権利帰属などの必須項目を漏れなく盛り込むことが重要です。これにより、制作後の活用計画もスムーズに進行します。

また、疑問点や不安がある場合は、弁護士や専門家のアドバイスを受けることで、契約書の信頼性をさらに高められます。

桔梗 素直
桔梗 素直 株式会社VIDWEB クリエイティブコミュニケーション部

大学卒業後大手保険代理店に5年間勤務勤務。その後動画市場の将来性を感じ、オンラインスクールにて動画マーケティングや制作方法を学び、VIDWEBへ入社。丁寧親切且つ的確なコンサルテーションと提案に定評があり、クライアントが動画制作によって抱えている課題を親身になって日々解決している。

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