現在、日本国内における動画広告市場は急激な成長を遂げています。株式会社サイバーエージェントの調査によると、2025年の市場規模は1兆465億円にまで及ぶといわれています。
動画広告に対する需要の増加に伴って、その形態も多様化しており、最近は「インタラクティブ動画」を活用する企業が多く見られるようになりました。
インタラクティブ動画への注目度が高まる中で、自社にも取り入れたいと考えている方も多いのではないでしょうか?
今回の記事では、インタラクティブ動画の基本的な知識を紹介します。インタラクティブ動画を制作するメリットや活用シーン、制作費用などを説明していますので、ぜひ参考にしてみてください。
インタラクティブ動画とは
インタラクティブ動画とは、視聴者がコンテンツを視聴するだけでなく、クリックやタップなどのアクションを起こせる動画のことです。
「Interactive(インタラクティブ)」は、「双方向の」や「対話的な」という意味をもちます。従来の動画は一方通行でしたが、インタラクティブ動画の登場により、視聴者と配信側が「双方向」でコミュニケーションを取ることが可能になりました。
インタラクティブ動画は、予約や問い合わせボタンを設置したり、商品ページに誘導したりできるので、動画視聴を通してアクションを起こしてもらいやすくなります。
以下の記事では、インタラクティブ動画の概要を簡潔に紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
インタラクティブ動画が注目されている理由
先ほど紹介した通り、近年はインタラクティブ動画へのニーズが高まっています。それでは、どうしてインタラクティブ動画を利用する企業が増えているのでしょうか?
結論から述べると、「スマートフォンで動画視聴する人が増加した」ことが理由に挙げられます。
MMD研究所の実施した調査では、スマートフォン所有者に対するアンケートで「最も良く利用するアプリ」について質問したところ、「SNS」に次いで「動画」と回答した人が多いという結果になりました。
スマートフォンで動画コンテンツを視聴することが一般化した現在は、ユーザーが動画を見る環境が整っています。さらに、インタラクティブ動画は視聴者のアクションを促進できるという特徴をもつので、企業からの注目を集めているのです。
インタラクティブ動画のメリット
インタラクティブ動画を活用することで、どのようなメリットを得られるのでしょうか?
視聴完了率がアップする
視聴完了率アップを期待できる点は、インタラクティブ動画を配信するメリットの一つです。視聴完了率とは、総再生数のうち完全視聴された割合を意味します。
インタラクティブ動画は視聴者がリアルタイムでアクションを起こせるため、能動的に動画を視聴してもらえますし、興味・関心を高めることが可能です。
さらに、動画の途中で選択肢を設けて、視聴するコンテンツを選んでもらえば、視聴者のニーズにあった情報を届けることができます。
このように、インタラクティブ動画は視聴完了率を向上させるのに有効です。
CV獲得につながる
インタラクティブ動画を配信することで、CV(コンバージョン)獲得を目指せます。CVとは、設定していた目標をどれくらい達成できたかを把握するための指標です。
問い合わせや資料請求、商品・サービスの購入、会員登録など、企業によって設定するCVは異なります。
インタラクティブ動画は、動画内に視聴者がアクションを起こせる仕組みを取り入れているため、動画視聴時にCVにつながる行動を起こしてもらえます。
ただ、自社の設定するCVに合わせて、最適なボタンやポップアップを設置する必要があります。
エンゲージメントが高まる
インタラクティブ動画は、エンゲージメントを向上させることができます。エンゲージメントとは、マーケティングにおいては企業や商品・サービスに対する価値を高めて、顧客とのつながりを強化することです。
インタラクティブ動画は、視聴者が自発的にアクションを起こすため、興味・関心を持ってもらいやすいだけでなく、企業や商品・サービスについて深く理解してもらうことが可能です。
そのため、インタラクティブ動画を視聴してもらうことで、エンゲージメントを高められます。
データを活用できる
インタラクティブ動画における視聴者の行動は分析することができます。分析で得られたデータは、コンテンツの改善や、動画広告の最適化などに役立ちます。
例えば、視聴者がクリックしたボタンや、離脱したポイント、視聴完了率、CVR(コンバージョン率)など、あらゆるデータを収集することが可能です。
データによって問題点が明確になるので、より正確な戦略を立てられますし、費用対効果を測ることもできます。
ストーリーを伝えられる
インタラクティブ動画のみならず、動画全体にいえることですが、動画は視聴者に企業やブランドのストーリーを伝えやすいコンテンツです。
音声と映像を利用して表現できるので、ストーリーに興味を持ってもらいやすいですし、細かいニュアンスまで伝えられます。
独自のコンセプトやブランドの世界観を伝えれば、他社企業と差異化を目指すことができます。また、企業やブランドに対する価値を高められるので、ブランディングにもつながります。
インタラクティブ動画の活用シーン
インタラクティブ動画はどのようなシーンで活用されているのでしょうか?
採用活動
インタラクティブ動画は、企業の採用活動において利用されています。
近年は、社員のインタビューや企業の雰囲気、企業理念などを伝えるために、採用活動で動画を利用する企業が多く見られるようになりました。
インタラクティブ動画は、求職者に動画を視聴してもらうだけでなく、ニーズにあったアクションを起こしてもらえます。
例えば、インタビューを受けている社員の所属部署を紹介しているWebページを設置すれば、その部署に興味がある求職者は情報にアクセスすることができます。
認知度向上・プロモーション
インタラクティブ動画は、マーケティングにおいて重要な認知度向上・プロモーションにもつながります。
動画を通じて視聴者に商品・サービスについて知ってもらえるだけでなく、リアルタイムで購買意欲を高めることが可能です。
実際に、動画で紹介されている商品をタップすると、商品の購入ページにアクセスできる仕組みを取り入れている企業も存在します。視聴者の興味・関心が高まっているタイミングで、商品・サービスの購買を促進できるのです。
アンケート
インタラクティブ動画では、アンケートを実施することもできます。アンケートは顧客のニーズや、商品・サービスに対する意見、満足度などを把握するのに有効です。
視聴者は選択肢をタップするだけで回答を進められるので、回答の際に生じるストレスを軽減させることができます。
さらに、インタラクティブ動画は、視聴者の選択にあわせて、その後の設問を変えることも可能です。また、アンケートのどこで視聴者が離脱したかを分析することもできるので、アンケート自体の改善にもつなげられます。
教育
教育動画においてもインタラクティブ動画が採用されることが多いです。
スマートフォンやパソコンが普及した現在は、教育現場で動画が活用されるシーンが増えています。実際にeラーニングのコンテンツや、社員研修の資料などに動画が利用されています。
インタラクティブ動画はただ視聴してもらうのではなく、視聴者にアクションを起こしてもらえるので、理解が深まりやすく、集中力も保ちやすくなります。
製品のチュートリアル・説明
製品のチュートリアル・説明として、インタラクティブ動画が利用されることがあります。
動画を利用することで、テキストや画像だけでは伝わらないことや、製品の使用方法などを説明することができます。また、インタラクティブ動画に製品の紹介ページへのリンクを設置すれば、製品についてより理解を深めてもらうことができます。
さらに、製品の使用場面を選択式にして視聴してもらえば、視聴者は自分自身が実際に製品を使用しているイメージを持ちやすくなります。
ECの売上拡大
インタラクティブ動画は、ECの売上拡大にも効果があります。
動画に登場する商品にECサイトへのリンクを紐づけることで、視聴者に気になる商品をECページで確認してもらうことができます。
また、商品をタップしてもらい商品情報をポップアップで表示させれば、動画を視聴しながら商品について理解してもらうことが可能です。
アパレル企業であれば、洋服を実際に着用している様子を動画で確認してもらい、視聴者の購買意欲が高まっているところで、商品ページに誘導できるので売上アップを期待できます。
インタラクティブ動画制作の流れ
インタラクティブ動画は通常の動画制作に加えて、動画を「インタラクティブ化」する必要があります。制作の流れは以下の通りです。
- 目的設定
- ターゲット設定
- 構成・台本作り
- 素材作成
- 編集・インタラクティブ化
動画をインタラクティブ化するには、インタラクティブ動画作成ツールを利用したり、制作会社に依頼したりします。
インタラクティブ動画を制作する際のポイント
インタラクティブ動画を制作する際は、注意すべきポイントがいくつか存在します。以下のポイントを意識して動画制作を進めましょう。
視聴者が得られるものを明確化する
インタラクティブ動画を制作する前に、視聴者が得られるものを明確化しましょう。視聴者が得られるものを明確化するということは、動画を制作する目的をしっかりと設定するということです。
例えば、動画を通して企業やブランドに対する価値を高めたいのか、視聴者にサービス情報や商品の魅力を伝えたいのかなど、自社が重きを置くポイントを確認します。そのポイントに基づいて、動画のストーリー構成やデザインを行っていきます。
重視するポイントが不明瞭なままだと、インタラクティブ動画のメリットを最大化できずに、目的を達成できない可能性があります。
ストーリーを取り入れる
インタラクティブ動画にストーリー要素を取り入れることをおすすめします。
ストーリー展開がある方が視聴者に関心を持ってもらいやすいですし、最後まで動画を視聴してもらえる可能性が高まります。
なお、視聴者の選択に合わせて展開を決めるインタラクティブ動画の場合、複数のストーリー設定が必要になるので注意してください。
アクションをわかりやすくする
視聴者がどのようにアクションを起こすべきか、またアクションを起こして何ができるかをわかりやすくすることが重要です。
どこをタップしていいかわかりづらいと、視聴者にアクションを起こしてもらいにくくなります。さらに、タップした後に何が起きるかわからない状態で、視聴者はアクションを起こそうとは考えません。
「ここをクリック」ではなく、「ここをクリックして商品情報をチェック」などの表記にすることで、視聴者はタップ後に商品ページが表示されることを認識できます。また、タップできる箇所は色を変えるなどして、わかりやすくするとよいでしょう。
インタラクティブ動画の制作費用
インタラクティブ動画の制作費用は、自社で制作するのか、制作会社に依頼するかによって、大きく変わってきます。制作会社に依頼する場合でも、会社によって費用感が異なるので、ホームページなどで料金体系を事前にチェックすることが重要です。
例えば、インタラクティブ動画作成ツールを利用する場合は、初期費用5万円、月額3万円程度で利用できるものもあります。制作会社に依頼する場合、インタラクティブ編集を11万円程度で承ってくれることがあります。
ただ、制作する動画の種類や、制作会社に依頼する範囲によっても費用が変わってくるため、見積もりを作成してもらうことをおすすめします。
インタラクティブ動画の活用事例
IKEAの「Bedroom Habitats」は、ベッドを共有する際に生じる問題を解決する方法として、製品の利便性をアピールする、プロモーション動画です。
動画内に登場するマットレスには、詳しい商品情報を確認できるボタンが設置されています。また、商品情報から商品の購入ページにアクセスすることも可能です。
このように、インタラクティブ動画は視聴者のアクションを促進するような要素を動画に取り入れることができます。
インタラクティブ動画を活用しよう
今回の記事では、インタラクティブ動画に興味があるマーケティング担当者に向けて、インタラクティブ動画の基本的な知識を紹介しました。
視聴者が能動的に視聴できるインタラクティブ動画は、動画視聴時にリアルタイムでアクションを促進できますし、興味・関心を高めることで離脱率を低下させることができます。
ただ、視聴者が「どうアクションを起こせばいいかわからない」、「ストーリー性がなく飽きてしまった」などと感じてしまうと、インタラクティブ動画の効果を最大化させることはできません。
効果的なインタラクティブ動画を制作したいものの、知識やノウハウが不足しているという企業は、制作会社に依頼してクオリティの高い動画を目指すとよいでしょう。