企業VPという言葉を、制作会社や社内の誰かから聞いて調べに来られた方が多いのではないでしょうか。
先に結論をお伝えすると、企業VPは会社紹介動画とほぼ同じものを指す業界の呼び方です。ですので、この言葉の意味がわかっても、作るべきものが決まるわけではありません。
発注する側が本当に決めなければいけないのは、その動画を1本で複数の用途に兼ねさせるのか、ベースを1本作って用途ごとに派生させるのか、それとも用途ごとに完全に分けて作るのか、という設計です。私たちが会社紹介の動画をご相談いただくとき、最初のヒアリングで整理しているのもここです。
この記事では、まず言葉の意味を整理し、そのうえで1本で兼ねるか分けるかの判断、用途ごとの尺の目安、費用、そして何年使えるかまでを、発注する側の視点でまとめます。
企業VPとは。Video Packageの略とされ、会社紹介動画とほぼ同義
企業VPとは、企業が自社について発信するために制作する動画のことです。会社の事業内容、沿革、理念、拠点や規模といった全体像を伝えるもので、実務では会社紹介動画や会社案内動画と呼ばれるものとほぼ同じです。

VPは映像業界の略語
VPはVideo Packageの略とされています。ビデオテープやDVDに映像をまとめて納品していた時代の名残という説明がよく使われますが、公的に定められた定義があるわけではなく、制作会社によって説明のしかたは少しずつ違います。
補足すると、私たちのサービスサイトでは会社・企業紹介動画というカテゴリ名を使っており、VPという表記は使っていません。業界内の略語であって、発注される企業のご担当者に必ずしも通じる言葉ではないからです。ですので、社内で企画を通すときも、VPという略語を無理に使う必要はありません。会社紹介動画と書いたほうが伝わる場面が多いはずです。
会社のVPが役職を指す場合もある
調べ物の途中で混乱しやすいのが、VPという略語が別の意味でも使われている点です。
ビジネスの文脈でVPと言えば、Vice Presidentつまり副社長や事業部長クラスの役職を指すことがあります。外資系企業やスタートアップでは、こちらの意味で使われるほうが一般的です。「うちの会社のVPが」という会話に出てくるVPは、動画ではなく人を指しています。
映像の話をしているのか、役職の話をしているのかは、文脈で判断するしかありません。社内でやりとりする際は、映像を指すときは会社紹介動画、あるいは企業VP動画と書き添えると誤解が起きにくくなります。
企業VPと企業PVの違い
もうひとつよく聞かれるのが、企業PVとの違いです。
| 呼び方 | 略 | 主に指すもの |
|---|---|---|
| 企業VP | Video Package | 会社について広く伝える動画。採用、営業、社内、投資家向けなど用途が幅広い |
| 企業PV | Promotion Video | 販売促進や宣伝を目的とした動画。商品やサービスの訴求に寄る |
ただし、この線引きは厳密ではありません。企業PVは企業VPの一種と説明されることもあれば、両者を区別せず使う会社もあります。実務では、どちらの言葉で相談を受けても、私たちが最初に確認するのは「誰に見せて、何をしてほしいか」です。呼び方の違いで制作の進め方が変わることはありません。
販売促進を目的とした動画そのものについては、プロモーション動画の記事で言葉の整理から解説しています。
企業VPで最初に決めるのは、1本で兼ねるか分けるか
言葉の整理が済んだら、次が本題です。企業VPは、見せる相手によって刺さる情報の重心が大きく変わります。
投資家向けなら事業ポートフォリオや中期経営計画、採用向けならカルチャーや経営者からのメッセージ、営業向けなら事業規模や取引実績。同じ会社を紹介する動画でも、中身の比重はまったく違います。

3つの型
私たちは初回のヒアリングで用途を棚卸ししたうえで、次の3つのどれが適しているかをご提案しています。
- 1本兼用型:1本の企業VPを、営業でも採用でも社内でも使います。予算を集中できるぶん1本あたりの品質を上げやすく、管理も楽です。ただし、どの用途にも80点という仕上がりになりやすい面があります
- ベース1本+用途別の派生型:中核となるベース版を1本作り、そこから採用版、IR版、英語版などを派生させます。撮影は1回で済ませ、構成と尺、ナレーションを変えて書き出す形です
- 用途ごとに完全に分ける型:それぞれの用途に最適化した動画を個別に作ります。用途ごとの効果は最も高くなりますが、費用と管理の手間は増えます
現実的に選ばれることが多いのは1と2です。特に、投資家向け、営業向け、採用向けの3つを1本で完全に兼ねることは、私たちからはおすすめしていません。前述のとおり必要な情報の重心が違うため、全部を入れると長くなり、どの相手にも刺さりにくい動画になるからです。
派生させるなら、撮影の前に決めておく
2の派生型を選ぶ場合、大事なのは撮影より前に決めることです。
たとえば、ベース版5分、採用版90秒、IR版3分という3パターンを想定しているなら、1回の取材と撮影でその全部に必要な画と発言を押さえます。あとから「採用版も欲しい」となると、追加の撮影が必要になり、費用も期間も余計にかかります。
ナレーションの差し替えだけで済む設計にしておくと、派生のコストはさらに下がります。私たちの場合は、自社のAI音声生成サービスを使ってナレーションだけを差し替える方法をご提案することが多く、コストと用途への合致度のバランスが取りやすい方法です。
用途別に見る、企業VPのタイプと尺の目安
用途が決まると、尺もおおよそ決まります。私たちが用途別にご用意しているタイプと、その目安を整理します。
| 用途 | 主な使い先 | 尺の目安 |
|---|---|---|
| 営業・取引先向け | 商談の冒頭、展示会のブース、提案書への添付 | 90秒から3分 |
| 採用向け | 採用説明会のオープニング、採用サイト、面接前の事前視聴 | 2分から4分 |
| 社内向け(理念浸透・社史) | 入社式、新人研修、グループ会社への理念共有 | 5分から10分 |
| 投資家・IR向け | 決算説明会、株主総会、IRサイト、個別面談 | 3分から5分 |
| 周年記念 | 記念式典での上映、その後のWebサイト掲載 | 節目の内容による |
| 経営トップメッセージ | Webサイト、社内、株主向け | 内容による |
それぞれの用途を深く掘りたい場合は、会社紹介動画の作り方、採用動画、IR動画、広報動画の記事で用途ごとに解説しています。
尺を分ける基準は、視聴者がどういう姿勢で見るかです。商談の冒頭や採用サイトのように流し見される場面では90秒から3分、IR説明会や社内研修のように着席して視聴する場面では3分から10分が目安になります。
経営者の撮影時間が取れない場合
トップメッセージで多いご相談が、経営者の撮影時間を確保できない、あるいは話し慣れていないというものです。
私たちの場合は、話し慣れていない方に向けた台本の書き下ろし、複数回に分けた分割収録、質疑応答の形式での収録進行といった進め方でご対応しています。撮影時間がどうしても取れない場合には、AIアバターで代替する方法もご提案できます。
私たちが制作した企業VPの事例
会社紹介の文脈で制作した事例から、設計の型が違うものを4本紹介します。
1本で5つの用途を兼ねた例
サーモス株式会社 会社案内動画は、既存の会社案内動画をリニューアルしたものです。用途は会社紹介、商品紹介、営業ツール、採用、施設紹介の5つにまたがり、撮影は海外でも行っています。
ブランドが持つストーリー性は残しつつ、企業沿革と事業内容の紹介に重点を置いた構成へ再設計しました。ブランドの歴史や魔法瓶の構造をナレーションとともに解説し、使い捨てから繰り返し使えるマイボトルへという流れのなかで製品が果たす社会的な役割にも触れています。撮影は国内2拠点と直営店に加え、海外でも行いました。
映像表現は実写、アニメーション、ドローン撮影を組み合わせています。制作期間は8か月と長めですが、これは兼ねる用途が多いぶん、必要な素材と確認の工程が増えるためです。1本で多くを兼ねる設計を選ぶ場合は、期間にも余裕を見ておく必要があります。
日本語と英語、長尺と短尺の4パターンを展開した例
エイジス 企業ブランディング動画は、社外向けの企業ブランディング動画です。用途はIR・広報、ブランディング、会社紹介の3つです。
構成の段階からご提案し、国内の棚卸だけでなく、海外棚卸やリテイルサポートサービスという新しいサービスの成長を印象づける内容にしました。企業の印象づくりそのものを目的にする動画の設計は、ブランディング動画の記事で詳しく扱っています。
この事例の要点は、汎用性を高めるために日本語と英語でそれぞれ長尺と短尺、合計4パターンを制作したことです。前述の派生型の実例にあたります。制作期間は2か月で、5つの用途を兼ねたサーモス様の事例より短く収まっています。最初からパターン展開を前提に設計すると、1本ずつ作り足すより効率的に進められます。
採用の文脈に寄せた会社紹介の例
ナブテスコ 採用向け会社紹介動画は、モーションコントロールをコア技術として幅広い領域で事業を展開されている企業の、採用向け会社紹介動画です。用途はIR・広報、ブランディング、会社紹介、採用の4つです。
統計データや数値をイラストにするインフォグラフィックでビジュアルを構成しました。視聴ターゲットが学生であることから、デザインからアニメーションまでポップな印象になるよう制作しています。
設計上のポイントは、Webでの展開を前提に、ナレーションを字幕でフォローして無音でも訴求できる画面構成にしたことです。会社紹介動画は置き場所が広がりやすいため、音を出せない環境で見られる可能性を最初から織り込んでおくと、あとから作り直す必要がなくなります。制作期間は3か月でした。
会社全体ではなく事業部単位で作った例
荒井商事 オークション事業部紹介は、会社全体ではなくオークション事業部門を紹介する動画です。用途はIR・広報、会社紹介、採用の3つです。
オークションの商流、グループの歩み、取り扱い商材と強みをお伝えする内容で、採用時の企業説明としても使われています。制作期間は3か月でした。
複数の事業を持つ企業の場合、全社で1本の大作を作るより、伝える単位を事業部に絞った動画を積み増していくほうが、使える場面が広がることがあります。1本あたりの予算も抑えやすく、事業の追加や再編にも対応しやすい進め方です。
企業VPの制作費用
私たちは料金ページで価格帯を公開しています。1つは動画の種類ごとの相場で、会社紹介・企業案内の動画は50万円から400万円です。もう1つは予算規模別の制作事例で、49万円まで、50万円から99万円、100万円から299万円、300万円以上の4つに分かれています。前者は一般的な制作事例をもとにした目安、後者は実際にその予算帯で制作した事例の分類なので、49万円までの帯にも会社紹介の動画は含まれます。

予算帯ごとに作れるものが変わる
金額の違いは品質の違いというより、作れるものの違いです。
| 予算帯 | 作れるもの |
|---|---|
| 49万円まで | 60秒前後のダイジェスト型。Webのトップページ用、SNS用、初回商談前の導入用といった単発の構成 |
| 50万円から99万円 | 3分から5分の1本集中型。Web、営業、採用、取引先向けに多用途で使い回す中核の1本。最も多い予算帯です |
| 100万円から299万円 | ベース1本に用途別の派生を2本から3本つけたセット。投資家向け、取引先向け、採用向け、社内向けを同時に展開する構成 |
| 300万円以上 | 5年から10年のスパンで運用する長期資産型。周年記念のブランドムービー、海外グループ会社向けの多言語展開を含む規模 |
前述の3つの型と読み合わせると、1本兼用型なら50万円から99万円、派生型なら100万円から299万円が目安になります。社内で予算を確保する際は、いくらの動画を作るかではなく、どの型で何本に展開するかを先に決めると、金額の根拠を説明しやすくなります。
費用を抑える方法
会社紹介動画は長く使う資産なので、初期投資を抑えつつ後から更新できる設計にしておくのが有効です。
- 既存の素材を活かす:社内の写真、工場やオフィスの映像、IR資料のグラフなどを素材として使い、追加撮影を最小限にします
- ナレーションをAI音声で生成する:スタジオでの収録を削減でき、英語版や多言語版も柔軟に作れます
- 経営者の撮影をAIアバターで代替する:撮影時間が取れない場合の選択肢です
- テロップを差し替えられる構成にする:数字、年号、組織名を差し替え可能にしておくと、毎年の追加撮影が不要になります
制作期間は、企画から納品までおおむね2か月半が目安です。ただし前述のサーモス様の事例のように、兼ねる用途が多い場合や撮影拠点が複数にわたる場合は、これより長くかかります。工程の詳細は動画制作の依頼から納品までの流れをご覧ください。
企業VPは何年使えるか。更新の設計を先に決める
ここは発注前にあまり議論されないのですが、後から効いてくる部分です。
目安は3年から5年、設計次第で7年から10年
会社紹介動画が使える期間は、一般的には3年から5年が目安です。長期の活用を前提に設計すれば、7年から10年使い続けることもできます。
期間の差を生むのは、動画のなかに古びやすい情報がどれだけ含まれているかです。売上高、拠点数、従業員数、経営者、組織の名称。これらは数年のうちに変わる可能性があります。一方で、創業の背景、事業に対する考え方、理念といった情報は長く変わりません。
変わるものと変わらないものを分けて構成する
制作の段階で、変わりやすい情報と変わりにくい情報を分けて構成しておくと、数年後に部分的な差し替えで対応できます。具体的には次のような設計です。
- 数値や年号、組織名は映像に焼き込まず、テロップとして差し替えられる形にしておきます
- ナレーションとビジュアルを分けて作り、経営者の交代や情報の更新があってもナレーションだけを差し替えられるようにします
- 将来の多言語展開が少しでも視野にあるなら、テロップの位置に余裕を持たせておきます。英語は日本語より文字数が増えるため、後から入れると窮屈になります
古くなった会社紹介動画が更新されないままWebサイトに置かれ続けると、更新されていない会社という印象を与えます。作るときに「いつ、どこを見直すか」まで決めておくと、この状態を避けられます。
M&Aによる社名変更や新規事業の追加など、想定しにくい変更もあります。設計の段階で差し替えを想定していると伝えておけば、そうした変更にも対応しやすい構成で制作できます。
よくある質問
VPとは業界用語で何を指しますか
映像業界では、Video Packageの略として企業紹介の映像を指す言葉として使われてきました。ビデオテープやDVDにまとめて納品していた時代の名残とされていますが、公的な定義はなく、制作会社によって説明のしかたに幅があります。発注される側が無理に使う必要のある言葉ではありません。
企業VPとは何ですか
企業が自社について発信するために制作する動画のことです。事業内容、沿革、理念、拠点や規模といった全体像を伝えるもので、実務では会社紹介動画や会社案内動画と呼ばれるものとほぼ同じです。営業、採用、社内、投資家向けなど、幅広い用途で使われます。
会社のVPとは何ですか
文脈によって2つの意味があります。映像の話であれば、この記事で扱っている会社紹介動画のことです。組織や人事の話であれば、Vice Presidentつまり副社長や事業部長クラスの役職を指します。外資系企業やスタートアップでは、役職の意味で使われることのほうが多いです。
VPとPVの違いは何ですか
企業VPはVideo Packageの略とされ、会社について広く伝える動画を指します。企業PVはPromotion Videoの略とされ、販売促進や宣伝を目的とした動画を指します。ただし線引きは厳密ではなく、企業PVは企業VPの一種と説明されることもあります。実務では、どちらの言葉で相談されても、確認するのは誰に見せて何をしてほしいかです。
1本の企業VPで、営業用と採用用とIR用を兼ねられますか
ある程度は可能ですが、完全に兼ねることはおすすめしていません。投資家向けは事業ポートフォリオや中期経営計画、採用向けはカルチャーや経営者からのメッセージ、営業向けは事業規模や実績と、刺さる情報の重心が違うためです。ベース版を1本作り、そこから用途別に派生させる形をご提案することが多いです。
英語版や多言語版は作れますか
作れます。AI音声生成を使えば、日本語版から英語や中国語などへの派生を、スタジオでの収録なしに展開できます。ただし、テロップの文字数が言語によって変わるため、最初から多言語を想定して余裕のあるレイアウトにしておくと、あとの展開がスムーズです。
社長が撮影に不慣れでも作れますか
問題ありません。話し慣れていない方に向けた台本の書き下ろし、分割収録、質疑応答形式での収録進行といった進め方があります。撮影時間が確保できない場合は、AIアバターで代替する方法や、原稿に映像素材とナレーションを組み合わせて構成する方法もご提案できます。
周年記念の動画は、通常の企業VPと何が違いますか
周年動画は、社史を次の世代に継承する、式典で上映するという独特の役割を担います。OB社員や創業メンバーへの取材、社史のアーカイブ映像の発掘と編集、大画面での上映に耐える画質と尺の設計など、通常の会社紹介動画とは違う作り込みが必要になります。制作後に採用やIR、社内研修でも活用することを見越した設計にしておくと、資産として長く使えます。
言葉の意味より、兼ねるか分けるかを先に決める
企業VPはVideo Packageの略とされ、会社紹介動画とほぼ同じものを指す業界の呼び方です。企業PVとの違いも、役職のVPとの区別も、知っておけば会話に困らないという程度のもので、作るものが決まるわけではありません。
決めるべきは、1本で兼ねるか、ベースから派生させるか、用途ごとに分けるか。ここが決まれば、尺も、予算帯も、撮影で押さえるべき素材も、そこから逆算で決まります。
私たちの事例を見ても、5つの用途を1本で兼ねたものもあれば、日本語と英語で長短4パターンに展開したものもあり、事業部単位で積み増しているものもあります。どれが正しいということはなく、御社の用途と運用期間で変わります。
用途がまだ整理できていない段階でも構いません。誰に見せたいか、いつまでに必要かをお聞かせいただければ、どの型が合うかから一緒に整理いたします。会社紹介動画のご相談は会社紹介の動画制作から承っております。
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