近年、デジタルサイネージ広告の市場が急速に拡大しており、新しいマーケティング手法として注目されています。
デジタルサイネージ広告を検討している企業の営業やマーケティング担当者の方々は、「どのような効果が期待できるのか」、「クリエイティブ制作における違いは何か」、「広告の設置や運用にかかる費用はどの程度か」など、気になる点が多いかもしれません。
そこで、この記事ではデジタルサイネージ広告の種類やメリット、実際の事例を紹介しつつ、広告配信のポイントやクリエイティブ制作における注意点についても解説していきます。これらを参考にして、効果的なデジタルサイネージ広告の展開につなげていただければ幸いです。
デジタルサイネージ広告とは?
「デジタルサイネージ広告」とは、電子ディスプレイを活用して広告を配信するマーケティング手法のことです。動画や音声を使ったリッチコンテンツを配信できるため、従来の紙媒体や看板などと比較して、視聴者により強いインパクトを与え、広告の訴求力を高めることができます。
デジタルサイネージ広告の市場動向
出典:CARTA HOLDINGS「CARTA HOLDINGS、デジタルサイネージ広告市場調査を実施
~2022年のデジタルサイネージ広告市場規模は690億円の見通し、2026年には1,338億円と予測~」
電通グループのCARTA HOLDINGSの調査によると、2022年のデジタルサイネージ広告市場規模は690億円の見通し(前年比119%)であり、2026年は2022年比194%増の1,338億円と予測されています。
2022年時点では交通機関(鉄道やタクシー)が5割を占めていますが、今後は店舗(商業施設)が飛躍的に拡大する見込みです。小売、飲食、サービス、金融、不動産、交通、観光など、幅広い業界で活用されることが予測されます。
デジタルサイネージ広告の配信先と設置場所
デジタルサイネージ広告は、多様な場所で活用されています。以下は主な配信先と設置場所です。
交通 | 鉄道(車両・駅)、タクシー、空港、航空機、バス車両、バス停 |
---|---|
商業施設・店舗 | スーパーマーケット(店頭、店内、レジ前)、ショッピングモール、コンビニエンスストア、ドラッグストア、美容院、飲食店、薬局、病院 |
屋外 | 大型ビジョン、アミューズメント施設、その他屋外に設置されているデジタルサイネージ |
その他 | 公共施設(自治体・郵便局・教育施設・その他公共施設)、マンション、ホテル、エレベーター、映画館(シネアド)、喫煙所 |
デジタルサイネージ広告はBtoC領域のイメージが強いものの、BtoB領域においてもその効果が認識されつつあります。たとえば、タクシーやオフィスの喫煙所、経営層の多いタワーマンションに設置されているデジタルサイネージなどは、BtoB商材の広告配信先として注目されています。
ディスプレイ(機器)の種類
デジタルサイネージ広告の配信に使用される電子ディスプレイには、LEDビジョンと液晶モニター(LCD)の2つのタイプが存在します。
LEDビジョンの光源はLED電球であり、夜間や陽の光が当たる屋外でも優れた視認性を発揮します。また、画面はパネルを組み合わせて構成されているため、製品によっては円筒型や波型など自由な表現が可能です。
液晶モニターは光源がガラスやフィルターの後ろにあるため、LEDビジョンに比べると輝度は低めです。また、角度によってコントラストが変わることがあるので、遠くからの視聴には向いていません。ただ、色鮮やかで繊細な映像表現が可能なので、視認距離が近い店舗や商業施設、オフィス空間に適しています。
デジタルサイネージ広告の配信方法
デジタルサイネージ広告の配信方法は以下の3つです。
- スタンドアロン型(オフライン型)
- ネットワーク型(オンライン型)
- インタラクティブ型(タッチパネル型)
それぞれについて説明します。
スタンドアロン型(オフライン型)
スタンドアロン型は、USBメモリやSDカードなどの補助記憶装置を本体に挿し込み、内蔵のメディアプレーヤーもしくは外部接続したメディアプレーヤーで広告コンテンツを配信します。
インターネット回線を利用しないので、ネットワーク設定など面倒な手続きは不要です。ただ、コンテンツを変更するたびに補助記憶装置を入れ替える必要があるため、広告の更新頻度が高い会社には向いていないでしょう。
ネットワーク型(オンライン型)
ネットワーク型は、インターネットに接続された電子ディスプレイを利用して広告コンテンツを配信します。
ネットワーク設定により、遠隔操作で複数のディスプレイの広告コンテンツを更新したり、天気やニュース、在庫状況などタイムリーな情報を配信したりできます。また、IoTセンサーで取得した情報をもとに、適切なコンテンツを選択して配信するサービスもあります。
インタラクティブ型(タッチパネル型)
インタラクティブ型は、ディスプレイに情報を表示するだけでなく、画面をタッチして選択することで、ユーザーが取得したい情報にアクセスできます。
たとえば、店頭に設置することで、「店員に話しかけずに情報が知りたい」「商品の詳細を確認したい」といったニーズに対応できます。また、タッチ履歴を蓄積・分析することで、商品やキャンペーンのマーケティング施策に活用できます。
デジタルサイネージ広告の費用目安
デジタルサイネージを自社で設置する場合と、広告代理店を通して広告を出稿する場合の費用目安を紹介します。
自社で設置する場合
自社でディスプレイや再生機器、管理システムを用意する場合の料金相場は以下の通りです。
項目 | 用途 | 価格帯(目安) |
---|---|---|
広告制作費 | 静止画、動画など | 10万円~ |
液晶ディスプレイ | 主に屋内用 | 10~40万円 |
LEDビジョン | 主に屋外用 | 50~300万円 |
補助記憶装置 | USBメモリ、SDカードなど | 1,000~3,000円 |
セットトップボックス(STB) | ディスプレイにコンテンツを映し出すための映像表示器 | 3~25万円 |
コンテンツ・マネジメント・システム(CMS) | 放映スケジュールの管理 | ~1万円/月額 |
ディスプレイ設置工事費 | 高所作業、追加パーツなど | 屋内:4~12万円/屋外:50万円~ |
デジタルサイネージのレンタルサービスも存在します。費用の目安は32〜43型ディスプレイで月額1万円弱です。設置するディスプレイの数、サイズ、運用期間などを比較検討してみましょう。
広告代理店に依頼する場合
広告代理店に依頼する場合は以下の通りです。
車内ビジョン(都心地下鉄・JR) | |
放映時間 | 15秒 |
---|---|
放映回数 | 54~90回/日 |
価格帯(目安) | 96~480万円/週 |
駅構内(都心・主要駅 | |
放映時間 | 15秒 |
放映回数 | 300~370回/日 |
価格帯(目安) | 18~96万円/週 |
屋外ビジョン(都心・主要駅付近) | |
放映時間 | 15秒 |
放映回数 | 30~120回/日 |
価格帯(目安) | 70~750万円/週 |
店内ビジョン広告 (コンビニ・大型ショッピングモール) |
|
放映時間 | 15~30秒 |
放映回数 | 300~320回 |
価格帯(目安) | 50~324万円/週 |
項目 | 放映時間 | 放映回数 | 価格帯(目安) |
車内ビジョン(都心地下鉄・JR) | 15秒 | 54~90回/日 | 96~480万円/週 |
---|---|---|---|
駅構内(都心・主要駅) | 15秒 | 300~370回/日 | 18~96万円/週 |
屋外ビジョン(都心・主要駅付近) | 15秒 | 30~120回/日 | 70~750万円/週 |
店内ビジョン広告(コンビニ・大型ショッピングモール) | 15~30秒 | 300~320回 | 50~324万円/週 |
上記は広告出稿料金の目安です。人の多い都心部ほど高くなる傾向があり、別途広告制作費がかかります。
デジタルサイネージ広告のメリット・デメリット
デジタルサイネージ広告のメリットについて説明します。
メリット1. 視認率が高い
デジタルサイネージ広告の視認率は高く、LMIグループ株式会社のデータによると、視認率12%というデータも存在します。これは、ディスプレイの前を100人通過したら、そのうち12人は視聴しているということです。
交通機関で移動中の人、レジやエレベーター前で並んでいる人には時間があるので、広告がスルーされるリスクが少ないと言えます。
メリット2. 情報伝達率が高い
デジタルサイネージ広告は、高い情報伝達率が特徴です。リコージャパン株式会社の社内調査によると、チラシなど紙媒体での情報伝達率が8%だったのに対し、デジタルサイネージは85%に達したというデータがあります。
動画を活用することで、視覚と聴覚から情報を伝達でき、商品やサービスの魅力をストーリー仕立てで訴求できます。広告クリエイティブを工夫することで、好感度や信頼度を効果的に向上できます。
デメリット1. 紙媒体に比べてコストがかかる
デジタルサイネージ広告は、紙媒体と比較して初期コストや広告制作費が高額であり、家電製品と同様に故障のリスクがあります。ただ、視認率や情報伝達率の高さなど多くのメリットがあるため、投資対効果も考えて導入を検討しましょう。
デメリット2. 電源がないと使えない
デジタルサイネージを設置するにはコンセントが必要です。建物入口付近などに設置する場合など、コンセントがなかったり、安全のために延長コードが使えなかったりします。場所によっては紙や看板しか利用できない場合もあるため、事前に設置場所の電源状況を確認しておきましょう。
デジタルサイネージ広告における顧客接点の高め方
デジタルサイネージ広告を適切に設置・運用して顧客接点を高めましょう。
主なポイントは以下の4つです。
- 視聴率が獲得できるディスプレイ設置
- 適切な広告クリエイティブを制作
- 広告の効果を測定してコンテンツを改善
それぞれについて説明します。
視聴率が獲得できるディスプレイ設置
視聴率を最大限に引き出すディスプレイ設置が重要です。自社のターゲットの動線上にデジタルサイネージを設置して、より多くの視聴者にアプローチするために、ディスプレイのサイズ、向き、高さ、明るさ、音量等を調整して訴求力を高めましょう。
ディスプレイのサイズ | 視聴者とディスプレイの距離を考慮、文字を認識できるか |
---|---|
向き | 縦横は適切か、動線に沿って向きを変えているか |
高さ | 視聴者の目線に合っているか |
明るさ | 適度な輝度を設定し、広告が目立っているか |
音量 | 周囲の環境や視聴者の距離を考慮する |
適切な広告クリエイティブを制作
デジタルサイネージ広告の効果を最大化するために、魅力的なコンテンツを適切なタイミングで配信する必要があります。設置場所に合わせて動画の長さを調整したり、時間帯に合わせてコンテンツを変えたりするなど工夫が必要です。クリエイティブ制作のポイントはこの後詳しく紹介します。
広告の効果を測定してコンテンツを改善
デジタルサイネージ向けの視聴データ計測サービスを利用することで、設置場所の混雑度や視聴者の性別・年齢・視聴時間などの情報を継続的に収集できます。広告の効果を測定して、広告クリエイティブを改善しましょう。
デジタルサイネージ広告のクリエイティブを制作するポイント
デジタルサイネージ広告のクリエイティブを制作するポイントを紹介します。
一瞬で視聴者の興味を引き出す
開始1秒で視聴者の興味を引き出し、10秒以内に商品やサービスの概要を理解してもらえるよう、短く簡潔にメッセージを伝えましょう。クリエイティブの長さは、視聴者が足早に通過する動線は10〜15秒、一定時間滞在する場所では15〜30秒が理想的です。
コンテンツを継続して制作できる体制を構築
広告クリエイティブはリアルタイム性を活かして、時間帯や季節に合わせてカスタマイズした動画コンテンツを配信することが重要です。
- 朝、昼、夜に応じてコンテンツ内容を変更
- 新商品やキャンペーン情報をタイムリーに発信
- 顧客との距離に応じてコンテンツを出し分ける
これらの施策を実施するには、継続的にコンテンツを制作する体制を整える必要があります。
店舗・駅のデジタルサイネージを利用した広告展開の事例
店舗や駅のデジタルサイネージ広告の事例を紹介します。
株式会社ファミリーマート【店内サイネージ】
出典:FamilyMart「ファミリーマート店舗に設置する店内のデジタルサイネージが 3,000店に設置完了 ~地域別配信など、可能性が益々広がる新たなメディア事業~」
ファミリーマートは、全店にデジタルサイネージの設置を進めています。サイネージに掲載した商品の中には、売上が3割程度伸びたものもあるほか、広告枠としての販売も好調です。サイネージの視認性を高めるため、音楽広告を積極的に配信するなどの工夫を続けています。
Workato株式会社【タクシー広告】
掲載する事例は他社の事例となります。
Workato株式会社は、業務自動化ソリューションを提供する企業です。都内最大級のタクシーサイネージメディアに動画広告を出稿し、ユーモアかつキャッチーな動画コンテンツでプロダクトの内容をわかりやすく訴求しています。
参考:PR TIMES「Workato、4月25日(月)よりタクシー広告掲出開始」
デジタルサイネージ広告を活用して新規顧客を獲得しよう
デジタルサイネージ広告は、鮮やかな映像とリアルタイム性を活かして、ターゲットに訴求力のあるメッセージを届けることができます。適切な設置場所とターゲットのニーズに合わせた動画コンテンツ制作によって、新規顧客の獲得が期待できます。
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