VR動画には興味があるけれど、作り方や始め方がわからない人は多いかもしれません。この記事では、実写と3Dアニメの2種類のVR動画について、企画から撮影、編集、そしてYouTubeへのアップロード方法までを解説します。
これからVR動画制作に挑戦しようと考えている方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
VR動画の作り方には実写とアニメーションの2パターンがある
VR動画の作り方については、大きく分けて実写とアニメーションの2つの方法があります。どちらの方法を選ぶかは、動画の目的や視聴者に提供したい体験によって異なります。
実写のVR動画
実写のVR動画は、360度カメラを使って風景や建築物、リアルな体験を撮影します。視聴者はまるでその場にいるかのような感覚や臨場感を体験できるため、撮影地に行くことや、アトラクションに参加することが難しい人にとって非常に魅力的な動画となります。
実写の具体的例としては、新型車の試乗体験や観光地の紹介、スポーツやアクティビティのプレイ動画、遊園地のアトラクション体験などがあります。動画編集ソフトを使ってテキストやロゴを追加すれば、ブランディングや具体的なメッセージも視聴者に伝えられます。
3DアニメのVR動画
3DアニメのVR動画は、3Dモデリングやアニメーション技術を使って、架空の世界や特別な体験を作り出します。これにより、非日常的な空間や体験を視聴者に提供できます。
3Dアニメの具体的例としては、映画やゲームの世界に入り込んでいるかのような感覚を提供したり、展示会や展示場のバーチャルツアーなどがあります。このほか、現実ではリスクが伴う防災シミュレーションや、医療や教育の現場での教材やトレーニングにも活用されています。
実写でのVR動画の作り方を5ステップで解説
ここでは、360度カメラで撮影した映像を編集して、YouTubeにアップロードするまでの流れを紹介します。
- 必要なアイテムを用意する
- 企画を立てる
- 360度カメラで映像を撮影する
- 撮影したVR動画を編集する
- 編集したVR動画をYouTubeにアップロードする
ステップ1. 必要なアイテムを用意する
実写のVR動画制作には以下のアイテムが必要です。
360度カメラ、撮影パーツ
360度カメラと三脚や自撮り棒、予備バッテリーなどの撮影パーツを用意しましょう。360度カメラには、全天球型と半天球型の2つのタイプがあります。
全天球型 | 半天球型 | |
概要 | 2枚のレンズで撮影した画像を合成し、水平・垂直方向に360度広がる映像を作る | 水平方向に360度、上方向に180度広がる映像を撮影、地球儀の上半分が撮影できるイメージ |
---|---|---|
メリット | 球体のように死角なく撮影できる | 撮影者や三脚が映り込みにくいので、工夫しなくても没入感のある映像が撮れる |
デメリット | 撮影者や三脚が映り込んでしまうので、遠隔シャッターやセルフタイマーで工夫が必要 | 全天球型と比べると撮影範囲は狭い、撮影者を含めて記録したい人には向かない |
どちらのカメラを選ぶかは、撮影目的や環境によります。高品質な映像を制作したい場合は、4Kに対応していてマイク性能が良いモデルを選びましょう。また、以下の機能が搭載されていると、編集作業の工数を削減できます。
- 水平維持機能:カメラの向きが変わっても画角を水平に保つ
- AI自動編集機能:カメラのスマホアプリで映像を読み込むと、AIが撮影した映像を自動的に編集
代表的な360度カメラには、RICOH THETA SC、Kodak SP360、GoPro Omniなどがあります。
動画編集ソフト
VR動画を編集するためには、360度映像に特化した機能が備わっている動画編集ソフトを用意しましょう。具体的には以下のような機能が必要です。
- 視点変更機能:視聴者が見る視点を指定できる機能
- ステッチング:映像の継ぎ目(ステッチライン)を滑らかにする機能
- プラットフォーム対応出力機能:VRゴーグルやYouTube、Facebookなど、各種配信プラットフォームに適した形式で動画を出力する機能
代表的な360度映像編集ソフトには、Adobe Premiere Pro、Final Cut Pro Xなどがあります。これらのソフトにはVR動画の編集に必要な機能が揃っています。
VRヘッドセット
視聴者のVR体験を確認するために、VRヘッドセットが必要となります。一般的なVRヘッドセットには、以下3つのタイプがあります。
- スマホ装着型:ゴーグルにスマホをセットして利用
- PC接続型:PCの処理能力に依存、高いVR性能を誇る
- 一体型(スタンドアロン):ヘッドセット単体で動作
高品質な映像を視聴するために、解像度やリフレッシュレート(画面更新頻度)、視野角(画面の表示が正しく見える角度の広さ)などのスペックに注目しましょう。
代表的なVRヘッドセットには、Valve IndexやHTC Vive Pro 2(PC接続型)、Meta Quest 2(一体型)などがあります。
ステップ2. プランニング
視聴者はVR動画に強い臨場感と没入感を求めています。何をどのように視聴者に見せたいのか、プランニングしてから撮影に入るようにしましょう。事前に決めておくべき項目は以下の4つです。
- 動画の長さ
- カメラワーク
- 背景の見え方
- 登場人物
また、実写の撮影方法には以下のようなバリエーションがあります。
撮影方法 | 詳細 | 使用パーツ例 | 適用シーン |
---|---|---|---|
定点撮影 | カメラを固定して撮影 | 三脚 | 風景、建築物 |
手持ち撮影 | 撮影者の目線や体の動きに合わせて撮影 | 自撮り棒 | 施設見学、観光、登場人物の表情や動き |
追い撮り | カメラをマシンや体に装着して撮影 | 自撮り棒+固定用アクセサリ | アクションシーン、アウトドア体験 |
水中撮影 | 防水性のあるカメラを機材や体に装着して撮影 | 防水・潜水ケース | ウォータースポーツ、ダイビング |
空撮 | カメラをドローンに固定して撮影、免許・許可取りが必要 | ドローン | 風景、建築物 |
適切な撮影方法を選ぶことで、VR動画に多様な視点と動きを加えられます。
ステップ3. 360度カメラで映像を撮影する
VR動画は視聴者が自ら視点を選ぶため、一般的なカメラとは異なる手法で被写体を撮影する必要があります。以下の点に注意しながら撮影を進めることで、臨場感あふれる映像を撮影できます。
被写体との距離感
360度カメラは、手前のものは大きく、奥のものは小さく映ります。通常のカメラと同じ位置から撮影を行うと、被写体が小さく写る可能性があるため、テスト撮影で距離感を調整しておきましょう。
採光の調節
360度カメラでの撮影は、基本的に照明を使用することはできません。照明を用いると、視聴者が映像を見るときにまぶしさを感じてしまう可能性があるためです。野外での撮影は天候、室内は部屋の明るさを考慮しましょう。
ステップ4. 撮影したVR動画を編集する
VR動画の主な編集作業は以下の3つです。
- ステッチング:撮影した映像をつなぎ合わせる
- トリミング:不要なシーンをカットする
- タイムシフト:映像の速度調整
一部のアプリや動画編集ソフトにはAI自動編集機能が搭載されていますが、より質の高い作品を作るためには、手動での微調整が必要です。
なお、VR動画の制作には専門的な知識が必要となるため、制作会社に依頼することも検討してみましょう。制作会社の料金相場やおすすめの会社については、以下の記事をご覧ください。
ステップ5. 編集したVR動画をYouTubeにアップロードする
VR動画は、通常のYouTube動画と同じ方法でアップロードしても、ただの縦長の動画として扱われてしまいます。YouTubeにVR動画(360度・180度動画)として認識してもらうには、メタデータという特殊な情報を動画に設定しなければなりません。
このメタデータは、Adobe Premiere Proなどの動画編集ソフトを使って、動画を書き出す際に設定できます。動画編集ソフトがない場合は、YouTubeヘルプで推奨されている「360.Video.Metadata」というツールを活用しましょう。手順は以下の通りです。
- 「360.Video.Metadata」(Mac、Winのどちらか)をダウンロードする
- zipファイルを解凍して「Spatial Media Metadata Injector.exe」を開く
- 「Open」からアップロードしたい動画を読み込む
- 「My video is spherical (360)」にチェックを入れる(デフォルト)
- 「inject metadata」をクリックしてメタデータ付きの動画ファイルを保存する
メタデータを設定したVR動画をアップロードすると、YouTubeにVR動画であると認識され、動画の左上にコンパスアイコンが表示されます。
参考:YouTubeヘルプ「180° 動画または 360° 動画のアップロード」
3DアニメのVR動画の作り方を6ステップで解説
次に、3DアニメのVR動画の作り方を6ステップで解説します。
- 作業環境を整える
- プランニング
- 3Dモデルを制作する
- 360度用にレンダリングする
- 動画編集ソフトを使ってVR動画を作成する
- VR動画をYouTubeにアップロードする
※上記はあくまで一例であり、動画のスタイルや使用するツールによって手順が変わる可能性があります。
ステップ1. 作業環境を整える
3DアニメのVR動画制作は、基本的にPCだけで完結します。以下3つのツールを用意しましょう。
3DCG制作用のソフト
初めて3Dアニメを制作するときは、無料で利用できるBlenderやUnityなどがおすすめです。Blenderではリアルな風景やキャラクターのモデリング、Unityでは3Dモデル(立方体や球体など)を作成できます。
動画編集ソフト
動画編集ソフトは、VR動画の微調整やメタデータの追加などに利用します。シェアが高いAdobe Premiere ProやFinal Cut Pro Xなどがおすすめです。なお、Adobe Premiere Proは7日間、Final Cut Pro X(Macのみ)は90日間の無料トライアルが用意されています。
VRヘッドセット
制作したVR動画の仕上がりを確認するために用意しましょう。
ステップ2. プランニング
プランニングは3DアニメのVR動画制作の基礎となる部分です。このステップは、コンセプトの設定とストーリーボードの作成に分けられます。
コンセプトの設定
まず、プロジェクト全体の方向性を示すコンセプトを設定しましょう。作品のテーマや視聴者に伝えたいメッセージ、スタイルなどを明確にします。
ストーリーボードの作成
ストーリーボードとは、動画制作における設計図のようなものです。シーンの流れやキャラクターの動き、カメラの向き、音声やセリフなどを書き出します。VR動画は視覚的な情報を360度提供するため、シーンごとに視聴者がどこに注目するのか明確にすることが重要です。
ステップ3. 3Dモデルを制作する
作品に登場する背景やパーツ、キャラクターの3Dモデルを制作します。3Dモデルの制作には多くの時間と労力がかかりますが、Blender MarketやUnity Asset Storeなど、公式ストアやパートナー企業から配布・販売されているアセット(3Dモデルやテクスチャ、アニメーションなどの素材)を利用することで、工数を大幅に短縮できます。
ステップ4. 360度用にレンダリングする
レンダリングとは、3Dモデルや追加した視覚効果(テクスチャ、照明など)などの要素を統合して、動画に変換する作業のことです。この作業は負荷が大きく、高性能なPCが必要になることがあります。特にVR動画の場合、視聴者が360度見渡せる映像を生成する必要があるので、通常よりも多くの計算処理が必要です。
ステップ5. 編集したVR動画をYouTubeにアップロードする
このステップは、実写のステップ6と同じ流れです。BlenderやUnityから出力したVR動画をそのままYouTubeにアップロードしても、ただの横長動画として扱われてしまいます。動画編集ソフトを使用して、VR動画にメタデータを割り当てましょう。この段階で音声やナレーション、テロップを追加する方法もあります。
VR動画の制作は外注も検討しよう
VR動画はステップをきちんと踏むことで、誰でもオリジナル作品を作ることができます。ただ、高品質なVR動画を制作するとなると、かなりの時間と労力が必要です。臨場感のある実写のVR動画や、オリジナリティ溢れる3DアニメのVR動画を制作したいときは、専門の制作会社に外注することも検討してみましょう。
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