今、多くの企業が動画コンテンツの内製化に取り組んでいるのをご存じでしょうか。動画は販売促進や集客、採用シーンなど活用の幅が広く、外注から内製に切り替えることでコスト削減やコンテンツの充実、ノウハウの蓄積を実現できます。
ただ、動画コンテンツの内製化に向けて組織を立ち上げ、事業を軌道に乗せるのは簡単ではありません。人材の採用や組織作りなど、さまざまな要素が必要です。そこでこの記事では、動画制作を内製化するメリットと組織作りのステップ、内製化を成功させるためのポイントを紹介します。
企業が動画内製化に取り組むべき理由
企業が動画制作の内製化に取り組むべき理由は以下の3つです。
- 臨機応変にテーマやコンテンツを編集できる
- 社内リソースが許せば制作本数に制限がない
- 機材費と人件費だけで済むので費用対効果が高い
アドビのアンケートによると、約43%の企業がすでに動画内製化を実施しており、約48%の企業がこれから内製化の予定、または検討中と回答しています。制作している動画は、YouTubeやTikTokなど、ユーザーと双方向のコミュニケーションが取れるカジュアルな動画が多いようです。
動画制作を内製化するメリットついては、以下の記事で詳しく紹介しています。
動画制作を内製化する5つのステップ
実際に動画制作を内製化するとしたら、どのような流れになるのでしょうか?
ここでは、公式YouTubeチャンネルで自社サービスの認知拡大を狙う中小企業(50〜60名)を例に、人材採用から目標設定、組織の体制構築など、内製化の流れを5つのステップに分けて紹介します。
1.人材採用と組織作り
内製化のリソースを確保するために、人材採用・人材育成の計画を立てます。
動画制作チームの人数と役割
3年で10人体制を目指します。役職の内訳は以下の通りです。
役職 | 人数 | 主な職務内容 |
---|---|---|
ディレクター | 1名 | 企画や構成の立案、撮影、編集まで全工程に携わる |
動画編集者 | 4名 | 撮影された映像をディレクターの指示に基づいて編集する (企画、撮影もできると望ましい) |
ライター兼企画 | 2名 | ナレーション原稿、絵コンテの作成 (撮影、編集もできると望ましい) |
マーケティング企画 | 3名 | 動画マーケティング戦略(広告、VSEO他)の立案 |
最初に採用する人材
ディレクターの採用を優先します。ディレクターに必要なのは、チームマネジメントと動画制作スキルです。業界知識やYouTubeチャンネルの運用経験は必須ではありません。
入社後1〜2年は企画、撮影、編集も兼任してもらうため、ディレクションのみ(動画編集ができない)の人材はターゲットから外します。CM、TV、通販業界出身者がねらい目です。YouTubeはマスメディアに比べて反響がダイレクトに届く点を魅力として伝えましょう。
未経験人材の採用
経験者採用が困難な場合は、チームメンバーが4〜5人になってから未経験者採用を検討します。入社直後は編集ソフトの使い方をマスターし、編集アシスタントを経て企画出しにも挑戦します。新しい情報を素早くキャッチすることに長けた人材を優先的に採用しましょう。
2.企業YouTubeチャンネルの目標設定
チャンネル登録者数、毎月のアップロード本数のKPIを設定します。
チャンネル登録者数の目標
チャンネル登録者数は3年で20万人を目指します。YouTube単体で目標を達成するのは難しいため、オウンドメディア(Web)、サービスサイト、SNSと連携して企画を実施します。YouTubeチャンネル運用のノウハウが社内にない場合は、外部にサポートを依頼しましょう。
毎月のアップロード本数
動画の本数は3年間で300本を目指します。月に5本から10本の動画をコンスタントにアップロードするために、分業制ではなくプロジェクトごとに担当者を決めていきます。そうすることで、制作のスピードアップを図ります。
リソースが足りない場合は外注し、マニュアルが作れるようになるまで体制を整えます。
3.動画制作に必要な機材を準備
動画制作に必要な機材等を購入します。
- ビデオカメラ
- 編集用パソコン
- 動画編集ソフト
- 三脚
- ジンバル(回転台がついたカメラホルダー)
- スライダー(カメラの横移動をサポート)
- 撮影用の照明(LED)
- 外付けマイク
ビデオカメラやパソコンはランニングコストを考慮する必要があります。たとえば、ビデオカメラの寿命は5〜6年、パソコンの寿命は6〜7年と言われています。
4.ガバナンス・コンプライアンス体制
法務と連携して著作権侵害や炎上に備えましょう。
シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所が調査分析した「デジタル・クライシス白書2022」によると、2021年の炎上発生件数は1,766件(うち動画283件)で、前年より24.8%増加しています。動画を撮影・編集する際は、以下の点がクリアになっているか確認してからアップロードします。
著作権侵害の対策 | 動画の著作権 従業員の肖像権 撮影許可(居住地・施設他) 他社製品の映り込み ロイヤリティフリー素材の許諾 楽曲使用 |
---|---|
炎上対策 | 事件など話題になっている事象に触れていないか 表現の誤りや不正確な情報が含まれていないか 権利やプライバシーの侵害に触れていないか 投稿日の過去に災害や事件が発生していないか |
動画制作時に注意すべき著作権の取り扱いについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
5.他部署との連携を促進
動画制作の内製化のメリットは、費用対効果が高く、制作期間を短縮できる点です。
各部署と連携を強化し、各施策の効果を最大化しましょう。
参考例)
Webメディア | 企画タイアップ(記事・動画同時公開) SNS用の縦型ショート動画 動画広告の制作 |
---|---|
人事 | 採用動画 社員研修用の動画 |
広報 | 商品、サービスのPR動画 プレスリリース動画 IR動画 |
リソース不足で外注する場合は、必ずメンバーの1人をプロジェクトメンバーとしてアサインするようにします。これは、社内にノウハウを蓄積するためです。
動画制作の内製化を成功させるポイント
動画チームの立ち上げまでは何とかなるかもしれませんが、運用を続けるとなると大変です。
ここでは、動画制作の内製化を成功させるポイントを紹介します。
中長期的な視点を持つ
動画マーケティングは、3〜5年の中長期的な視点で取り組みましょう。企業のYouTubeチャンネルは、動画の特性や人件費などの観点から、チャンネル単体でのマネタイズが難しい傾向にあります。動画制作の内製化は、他部署との連携が重要です。
コンテンツを強化する
成果につながる動画を制作するには、動画以外のコンテンツも強化しなければなりません。
いくら品質の高い動画をアップロードしても、商品やサービスそのものに魅力がなかったり、遷移先のWebサイトやECサイトの品質が悪ければ、ユーザーは離脱してしまいます。
動画制作と並行して、新商品・サービスの開発、Webサイトの改善、一貫したキャンペーン戦略などにも取り組みます。
マルチタスクの人材を育成する
動画制作の内製化のメリットは、制作のスピードアップとコンテンツの充実です。そのメリットを最大限に活かすには、企画、撮影、編集、公開までの全工程を1人でこなせる人材を育成する必要があります。
動画の定期的なアップロードは、登録者数や再生回数の増加、認知拡大などさまざまな効果をもたらします。そのため、分業ではなくマルチタスクな人材を育成する人材育成プランを策定しましょう。
幅広い企画にチャレンジする
企業理念や経営方針に大きな矛盾がない限り、幅広いジャンルにチャレンジできる風土を整えましょう。
企業のYouTubeチャンネルでよく見られる動画のジャンルは以下の通りです。
- バラエティ
- ドラマ
- ハウツー
- YouTuberタイアップ
- VTuberタイアップ
- トレンド
- ニュース
あらゆる企画に挑戦することで、動画をシリーズ化したり、新たなニーズを発見したりできます。
まとめ:社内にノウハウが蓄積されるまで外部リソースも積極的に活用する
自社で動画制作に取り組むことで、スピード感を持って動画マーケティングを実施できます。しかし、コストを投入して人材を採用しても、定着しなければ企業にとって大きな損失です。
また、映像のクオリティを担保しなければならないPR動画などは完全に内製するのではなく、部分的に外注した方が良い場合もあります。プロに委託することで、高い品質と成果を得られるのです。
株式会社VIDWEBはあらゆる動画活用を支援する会社です。当社は動画制作のみならず、動画広告の運用やYouTubeチャンネルの運用まで支援します。どうぞお気軽にお問い合わせください!