CSR動画の作り方と表現の注意点|サステナビリティ発信に動画を組み込む方法

動画制作
公開日:2024年7月5日 / 最終更新日:2026年8月28日
CSR動画の作り方と表現の注意点|サステナビリティ発信に動画を組み込む方法
桔梗 素直
桔梗 素直 株式会社VIDWEB クリエイティブコミュニケーション部

CSR動画を作ろうとすると、たいてい最初に「何を撮るか」から考え始めます。ですが、実際に手が止まるのはその手前です。自社の取り組みをCSRと呼ぶのか、SDGsと呼ぶのか、サステナビリティと呼ぶのか。誰に向けて出すのか。報告書に書いてあることと、どう役割を分けるのか。

ここが決まらないまま制作に入ると、活動を並べただけの映像になり、公開しても誰の記憶にも残りません。

CSR動画は、単発の「いい話」の映像ではありません。報告書、Webサイト、動画という発信の手段の中で、動画にしかできない部分を担わせるものです。この記事では、言葉の整理から始めて、発信全体の中での動画の役割、社外向けと社内向けの設計の違い、そして環境や社会の取り組みを語るときに気をつける表現までを解説します。

CSR動画とは(CSR・SDGs・ESGの使い分け)

まず言葉を整理します。混ざったまま制作に入ると、動画の中で主語がぶれるからです。

同じ取り組みでも相手によって呼び方が変わる。工場に再生可能エネルギーを導入した1つの取り組みは、社会一般にはCSR、消費者や学生にはSDGs、投資家や金融機関にはESGと呼び分ける
言葉何を指すか誰に向けた言葉として使われやすいか
CSR企業の社会的責任。事業活動を通じて社会に果たす責任の全体社会一般、地域、取引先
SDGs国連が定めた持続可能な開発目標。17の目標という共通の枠組み一般消費者、学生、教育の場面
ESG環境・社会・ガバナンスの3要素。投資判断の観点投資家、金融機関
サステナビリティ持続可能性。上記を包含する広い概念として使われることが多い全方位。近年の企業発信ではこの語に集約される傾向

これらは対立する概念ではなく、同じ取り組みを別の角度から呼んでいることが多くあります。たとえば工場の再生可能エネルギー導入は、CSRの文脈では社会的責任の遂行、SDGsの文脈では目標7への貢献、ESGの文脈では環境要素の改善として語れます。

動画で重要なのは、どの言葉を選ぶかではなく、選んだ言葉が届ける相手と合っているかです。投資家向けの発信でSDGsのアイコンを並べても投資判断の材料にはなりませんし、地域の方に向けた動画でESGの用語を使っても伝わりません。相手を決めてから、その相手が使う言葉を選んでください。

なお、SDGsの文脈に絞った動画の作り方はSDGs動画の制作で扱っています。投資家に向けた開示の文脈はIR動画の活用方法が近くなります。

CSR発信の全体像と、動画の役割

多くの企業は、CSRやサステナビリティの取り組みをすでに報告書やWebサイトで公開しています。動画を作るときは、そこに何を足すのかを決める必要があります。

報告書・Webサイト・動画の役割分担。報告書は網羅性と正確性、Webサイトは探しやすさと更新の速さ、動画は現場・人・短時間を担う

報告書が担うのは、網羅性と正確性です。指標、数値、方針、体制。読み手が確認しにいくための資料であり、動画にこの役割は向きません。

Webサイトが担うのは、探しやすさと更新の速さです。トピックごとに整理し、新しい取り組みを随時追加していく場所です。

そのうえで動画が担えるのは、次の3つです。

  1. 現場を見せる:報告書の文字では伝わらない、実際の作業や設備、地域との関わりの様子を映せます。CSRの取り組みは現場にあるものが多く、ここが動画の最大の強みです。
  2. 人の言葉で語る:担当者や関わった人が自分の言葉で話す映像は、方針文書の何倍も伝わります。
  3. 短時間で全体像を渡す:報告書を読み通さない相手に、数分で取り組みの輪郭を伝えられます。

逆に言えば、報告書の内容をそのままナレーションで読み上げるだけの動画には、動画である意味がありません。企画の段階で、この3つのどれを担わせるのかを決めてください。

公開されているCSR動画に見る3つの型

実際に公開されている企業のCSR動画は、おおむね3つの型に分かれます。他社の動画を並べるのではなく、型として整理します。

  1. ストーリー型:ひとつの取り組みや、それに関わる人を追って構成します。共感は得やすい一方、取り組み全体の網羅性は落ちます。長く使いたい旗艦の1本に向きます。
  2. 活動報告型:複数の取り組みを並べて紹介します。網羅性は高く、報告書の要約として機能します。年次で更新する運用に向きます。
  3. 商品・サービス紐づけ型:自社の製品やサービスが社会課題の解決にどうつながっているかを説明します。事業との結びつきが明確で、営業や採用の場面にも転用できます。

当社が制作した事例では、日本赤十字社様のさい帯血提供に関するご協力依頼のPR動画が、公共性の高いテーマを扱った一例です。出産を予定されている方に向けて、さい帯血提供の正しい理解を促す内容で、温かみのあるアニメーション表現を採用しました。医療分野の題材でありながら安心して視聴できることを重視し、移植の概要から提供までのプロセス、実際に移植を受けた方や提供経験者からのメッセージまでを構成に入れています。制作期間は2ヶ月です。

この事例で意識したのは、情報の正確性と伝わりやすさの両立です。公共性の高いテーマでは、正確に書こうとすると硬くなり、分かりやすくしようとすると不正確になります。イラストとアニメーションは、この二律背反を緩める手段として有効でした。あわせて動画内で使用したイラストをポスターにも展開し、映像と紙媒体を連動させています。

社会性のあるテーマを扱う動画では、この「正確さと分かりやすさのどちらも落とさない」設計が、実写かアニメーションかという選択より先に来ます。

社外向けと社内向けで設計を変える

CSR動画の相談で見落とされやすいのが、社内向けの用途です。取り組みを最も知らない相手が自社の従業員だった、ということは珍しくありません。

CSR動画は社外向けと社内向けで設計を変える。社外は会社を知らない人へ前提の説明から入りWebやSNSに置き、社内は事業を知る従業員へなぜやるかを語り社内報や研修で使う

社外向けの動画は、会社が何をしているかを知らない相手が対象です。前提の説明から入り、専門用語を避け、短くまとめます。置き場所はWebサイト、SNS、採用の説明会などです。

社内向けの動画は、自社の事業は知っているが取り組みの詳細は知らない相手が対象です。前提の説明は省けるので、なぜその取り組みをしているのか、自分の仕事とどうつながるのかに時間を使えます。置き場所は社内報、全社集会、研修です。

同じ素材から2本を作る場合、撮影は1回で済みます。企画の段階で両方作ると決めておけば、必要なカットを一度の撮影でまとめて押さえられます。あとから社内向けを追加すると、撮り直しが発生します。

環境や社会の取り組みを語るときの表現

CSR動画で最も気をつけるべきなのは、演出ではなく表現の正確さです。実態より良く見せた表現は、企業の信頼を損なうだけでなく、法令上の問題になり得ます。

景品表示法では、商品やサービスの内容について「実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示」を優良誤認表示として禁止しています。さらに不実証広告規制という仕組みがあり、消費者庁長官は、効果や性能に関する表示が優良誤認表示に該当するかを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏づけとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。資料が提出されなければ、その表示は措置命令との関係では不当表示とみなされます。

環境に関する訴求は、この「合理的な根拠」を示しにくい領域です。制作の実務では、次の3点を確認しています。

  1. 範囲を限定する:「環境に優しい」のような包括的な言い方は避け、何がどう改善されたのかを限定して言います。工場の一部工程での削減を、会社全体の話に広げない。
  2. 数字には出どころを付ける:削減率や達成率を映像に出すなら、いつ時点の、何を基準とした数字なのかをテロップで併記します。出どころを書けない数字は、そもそも使わないほうが安全です。
  3. 予定と実績を分ける:「目指しています」と「達成しました」を映像の中で混ぜない。ナレーションでは曖昧になりやすいので、テロップで区別すると誤解が減ります。

私たちが原稿を確認するときも、最初に見るのはここです。言い切りの表現が、社内で確認できる裏づけを持っているか。持っていなければ、表現を弱めるのではなく、言える範囲の事実に差し替えることをご提案しています。強い言葉を弱めるだけでは、内容が薄いまま印象だけが下がるためです。

関係者が多いテーマの進め方

CSR動画がほかの動画と違うのは、内容の確認に関わる部署が多いことです。サステナビリティや広報の担当部署が窓口になり、実際の取り組みを行っている事業部門や工場、数値を管理している部署、そして表現の妥当性を見る法務や品質保証が関わります。

この構造を前提にしないと、完成間際になって「その数字は使えない」「その言い方は社内で通っていない」という差し戻しが起きます。私たちがご相談をいただいたときに早い段階で伺うのは、次の3点です。

  1. 動画で扱う取り組みの範囲:どの取り組みを入れ、どれを入れないか。全部を入れようとすると、確認する部署が増え、まとまらなくなります。
  2. 数値を出すかどうか:出すなら、どの部署が管理している数値で、公表済みかどうか。報告書に載っている数値であれば確認が速く進みます。
  3. 最終的に誰が表現を確認するか:法務や品質保証の確認が入るなら、その工程を制作スケジュールに最初から組み込みます。

撮影の前にこの3点が決まっていると、現場の撮影も編集も止まりません。逆に、撮影を先に済ませて内容を後から詰めようとすると、必要なカットが足りず再撮影になります。

会社の情報発信全体の中でのCSR動画の位置づけは、広報動画の活用方法で整理しています。

効果測定

CSR動画は、売上や問い合わせに直結しません。ただし、効いていないわけではありません。取り組みを知ってもらえたかどうかは、採用の応募者が会社を選ぶときの判断や、取引先が新規に取引を検討するときの与信、従業員が自社で働き続ける理由に効いてきます。いずれも時間差で表れるもので、公開した翌月の数字には出ません。

だからこそ、何をもって成功とするかを作る前に決めておく必要があります。

社外向けなら、視聴維持率で最後まで見られたかを確認します。取り組みへの理解を目的にしているなら、途中で離脱されている箇所が改善の手がかりになります。採用の説明会で流しているなら、視聴後の質問の内容が変わったかどうかが実感に近い指標です。

社内向けなら、視聴した従業員の割合と、視聴後のアンケートです。取り組みを知っていたかどうかを、公開前と公開後で聞くと変化が見えます。

再生回数だけを目標にすると、CSRの目的と関係のない数字を追うことになります。誰に、何を知ってほしいのか。それを企画書に書いてから制作に入ってください。

CSR動画の制作費用

当社は制作費を公開しています。料金ページの価格帯は、49万円まで、50万円から99万円、100万円から299万円、300万円以上の4つに分かれています。

CSR動画という単独の相場はありません。費用は、扱う内容ではなく作り方で決まるためです。金額が動く主な要因は、動画の長さ、撮影日数、スタッフの人数、出演者、ロケ会場、CGやアニメーションの有無です。

CSR動画で特に効いてくるのは撮影日数です。取り組みが複数の拠点に分かれていると、撮影日がそのまま増えます。全国の拠点を回る構成にする前に、代表的な1拠点に絞って深く見せる構成で足りないかを検討してください。取り組みの数を並べるより、ひとつを丁寧に見せたほうが伝わることが多くあります。

アニメーションを選ぶと、撮影の日程調整が不要になります。工場や医療の現場など撮影の制約が大きいテーマや、抽象的な概念を説明する必要があるテーマでは、結果的に費用も期間も抑えられることがあります。

CSR動画のよくある質問

CSR動画とSDGs動画は違うものですか?

呼び方が違うだけで、扱う内容は重なります。ただし届けたい相手と使う言葉が変わるため、実務では別々に作るのが一般的です。SDGsは17の目標という共通の枠組みがあるため、目標番号に紐づけた説明がしやすく、一般消費者や学生に向けた発信に向きます。SDGsの文脈に絞った作り方はSDGs動画の制作で解説しています。

統合報告書やサステナビリティレポートと連動させられますか?

できます。報告書に掲載しているテーマのうち、現場を見せたほうが伝わるものを動画にし、報告書のWeb版やサステナビリティのページに埋め込む形が扱いやすいです。この場合、動画は報告書の更新サイクルに合わせることになるため、四半期で古びる数値を中心に据えない構成にします。投資家向けの開示との連動についてはIR動画の活用方法で扱っています。

作った動画はどのくらい使えますか?

内容によります。理念や取り組みの考え方を語る部分は数年使えますが、数値、体制、拠点、出演している従業員が映っている部分は早く古びます。長く使いたい場合は、変わりやすい情報をテロップや差し替え可能なパートに寄せて構成してください。年次で更新する運用にするなら、最初から更新前提の作りにしておくと、2年目以降の費用が下がります。

撮影が難しい現場でも作れますか?

作れます。工場、医療機関、被災地など撮影に制約がある現場では、アニメーションや図解で構成する方法があります。当社が制作した日本赤十字社様の事例も、医療をテーマにアニメーション表現で制作しました。

CSR動画は、発信全体の中で役割を決めてから作る

CSR動画で最初に決めるのは、撮る対象ではありません。誰に向けるのか、報告書やWebサイトに対して動画が何を足すのか、そして社外と社内のどちらに出すのかです。

そのうえで、表現の正確さを最後まで守ってください。実態を超えた言い方は、伝わる前に信頼を削ります。言える範囲の事実を、現場の映像と人の言葉で見せる。それがCSR動画で最も強い作り方です。

当社では、公共性の高いテーマの啓発動画から、事業と結びつけた取り組みの紹介まで対応しています。何から決めればよいか分からない段階でも構いませんので、ブランディングの動画制作からお気軽にご相談ください。

桔梗 素直
桔梗 素直 株式会社VIDWEB クリエイティブコミュニケーション部

大学卒業後大手保険代理店に5年間勤務。その後動画市場の将来性を感じ、オンラインスクールにて動画マーケティングや制作方法を学び、VIDWEBへ入社。丁寧親切且つ的確なコンサルテーションと提案に定評があり、クライアントが動画制作によって抱えている課題を親身になって日々解決している。

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