WebCMとテレビCMの違いを、配信される場所の違いだと説明する記事は少なくありません。しかし、制作会社として両方を作っている立場から言うと、本質的な違いは別のところにあります。
ひとつは審査の仕組みです。テレビCMは放送局の考査を通過しなければ放映できず、素材の搬入にも技術基準があります。WebCMにはこの考査がなく、代わりに配信媒体ごとの広告審査があります。もうひとつは費用の構造です。テレビCMの費用は制作費と放映料、WebCMは制作費と配信費という2階建てで、この構造を知らないまま「WebCMの費用」を調べると見積もりの段階で混乱します。
当社はWebCMに加えて、テレビで放送されるCMや放送枠の映像も制作してきました。この記事では、その両方を知る立場から、WebCMの基本、テレビCMとの制度と費用の違い、素材をテレビへ流用するときの注意点、事例と費用相場までを解説します。
WebCMとは
WebCM(ウェブCM)は、YouTubeやSNS、Webサイトなどインターネット上で配信されるCM動画のことです。ウェブCM、Web CMとも表記されます。
広告市場ではすでにWebが主戦場になっています。電通の「日本の広告費」では、インターネット広告費が2019年にテレビメディア広告費を上回りました。さらに2025年にはインターネット広告費が4兆459億円まで伸び、総広告費に占める構成比は50.2%と初めて過半数に達しています(電通「2025年 日本の広告費」)。この伸びをけん引しているのが、SNSの縦型動画広告やコネクテッドTVといった動画広告の需要です。企業がCMを作る場面で、テレビよりも先にWebでの配信を検討するのは、いまや自然な順序です。
WebCMが配信される主な場所と形式は、次のように整理できます。
| 配信先 | 主な形式 | 特徴 |
|---|---|---|
| YouTube | 動画の前後・途中に流れるインストリーム広告、6秒のバンパー広告、縦型のショート面に流れる広告 | リーチが最大級。スキップ可否で設計が変わる |
| SNS(Instagram・TikTok・X・LINEなど) | フィードやリール面に流れるインフィード広告 | 縦型・ミュート再生前提の設計が基本 |
| Webサイト・アプリ | 記事面などに表示されるインバナー・インリード広告 | 音声オフで自動再生される面が多い |
| 自社サイト・LP | 埋め込み動画 | 広告枠ではないが、WebCMの二次利用先として定番 |
形式の細かい仕様は媒体ごとに変わり続けるため、企画段階で押さえるべきは「どの面に、誰に向けて流すか」です。配信面が決まれば、尺と縦横比と音の設計が決まります。
WebCMのメリット
テレビCMと比べたWebCMの利点は、次の4点に整理できます。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 届けたい相手を絞れる | 地域・年齢・興味関心で配信対象を設定できる |
| 小さく始められる | 配信費を予算に応じて数万円からでも調整できる |
| 出稿が速い | 放送考査がなく、審査は日単位が中心 |
| 数値を見て直せる | 再生数・完了率・CVを確認し、配信中に改善できる |
裏返すと、一度に広く一斉に届ける力はテレビCMに分があります。どちらが優れているかではなく、仕組みが違う2つの媒体だと捉えるのが正確です。その仕組みの違いを次章から見ていきます。
WebCMとテレビCMの違いは「制度」と「費用構造」

両者の違いを表に整理します。
| 比較軸 | テレビCM | WebCM |
|---|---|---|
| 放映・配信までの審査 | 放送局の考査(業態考査+表現考査)を通過する必要がある | 配信媒体の広告ポリシー審査のみ |
| 素材の規格 | 尺は15秒・30秒などの規格、搬入の技術基準あり | 媒体の入稿規定の範囲で自由度が高い |
| 費用の構造 | 制作費+放映料 | 制作費+配信費 |
| 出稿までの速さ | 考査と搬入を含め週〜月単位 | 審査は日単位が中心 |
| 配信対象の絞り込み | 放送エリアと時間帯 | 地域・属性・興味関心で細かく設定できる |
| 効果の測り方 | 視聴率・認知調査 | 再生数・視聴完了率・クリック・CVを配信管理画面で確認 |
ターゲティングや効果測定の違いはよく知られていますが、実務で最初につまずくのは上の2行、つまり審査と規格の違いです。順に説明します。
テレビCMには考査がある、WebCMには媒体審査がある
テレビCMの考査は「業態」と「表現」の2段階
テレビCMは、放映する放送局の考査を通過しなければ電波に乗りません。考査は大きく2種類あります。広告主そのものを審査する業態考査と、CMの内容を審査する表現考査です。判断のよりどころになるのは、日本民間放送連盟(民放連)の放送基準、各局の独自基準、関連する法令、業界の自主基準などです。
考査には時間がかかります。素材の考査だけでも1週間から、業態によっては2ヶ月程度を見込む必要があります。テレビCMの出稿スケジュールが週〜月単位で動くのは、制作期間だけでなくこの考査期間があるためです。
なお、考査の依頼窓口は2026年4月に大きく変わりました。在京キー局5社で放送されるCMについては、一般社団法人テレビCM考査センターが素材考査の窓口を一本化し、一次考査の判定を各放送局へ共有する体制が本運用に入っています。従来は放送局ごとに考査を依頼して回答を集約する必要があったため、広告会社側の手間は軽くなりました。ただし、一次考査の結果を踏まえた最終判断はこれまでどおり各放送局が行います。考査という制度そのものがなくなったわけではありません。
さらに、考査を通っても素材をそのまま持ち込めるわけではありません。テレビCMには素材搬入の技術基準があり、たとえば音量は民放連の技術規準にもとづき平均ラウドネス値-24.0 LKFS(許容±1)に収めることが求められます。搬入自体もオンライン送稿システムを通じて行われ、メタデータの記載要件があります。制作会社はこの基準に合わせて音のミックスと納品データを仕上げます。
WebCMの審査は媒体ごと、スピードは日単位
一方のWebCMに、放送局の考査に相当する事前審査の制度はありません。各配信媒体が定める広告ポリシーにもとづく審査があるだけで、多くは日単位で完了します。思い立ってから配信開始までの速さは、テレビCMと比べたWebCMの明確な利点です。
ただし「審査がゆるい」わけではありません。医薬品や金融など規制業種の表現ルール、景品表示法や薬機法といった法令は、テレビでもWebでも同じようにかかります。媒体審査で落ちる原因の多くは、この法令・ポリシー面です。考査がない分、表現の適法性を制作側が自分たちで担保する必要がある、と考えるのが正確です。
WebCMの費用は「制作費+配信費」の2階建て

「WebCMの費用はいくらか」という問いには、2つの財布を分けて答える必要があります。
1つ目は制作費です。当社の料金ページでは、広告・CM動画の制作費を50万円から300万円の範囲で公開しています。幅があるのは、撮影の規模、キャスティングの有無、アニメーションか実写か、本数によって金額が動くためです。
2つ目は配信費です。作った動画を広告として流すための媒体費で、YouTubeやSNSの広告枠に支払う金額と、運用を代理店に任せる場合の手数料がここに入ります。当社の料金ページでも、動画広告の配信費用は「制作後にかかる費用」として制作費と分けて記載しています。配信費は予算に応じて数万円からでも始められ、上限は事実上ありません。
テレビCMの場合、この2つ目が放映料になります。つまり構造はどちらも「作る費用+流す費用」の2階建てで、違うのは流す費用の相場観と柔軟性です。見積もりを取るときは、制作費の見積もりなのか、配信費込みの提案なのかを最初に確認してください。ここが混ざったまま比較すると、各社の金額がかみ合わなくなります。
費用を抑える方向性は制作費側にあります。撮影のないアニメーションで作る、素材や構成を自社で用意する、複数パターンを同時制作して1本あたりの単価を下げる、といった方法です。制作費全体の内訳や考え方は動画制作の費用相場を解説した記事で詳しく説明しています。
WebCM素材をテレビCMに流用できるか

WebCMで反応が良かったので、同じ素材をテレビでも流したい。この相談は珍しくありませんが、そのまま持ち込むことはできません。変わるものが4つあります。
- 尺の規格。Webでは20秒でも45秒でも配信できますが、テレビCMは15秒・30秒などの規格に正確に合わせる必要があります。Web用の尺のままでは枠に載りません
- 考査の通過。前述の業態考査・表現考査を経る必要があります。Webの媒体審査を通っていても、考査は別物です。表現の裏づけ資料(効果の根拠、No.1表記の調査出典など)を求められることもあります
- 搬入規格への適合。ラウドネス基準に合わせた音のリミックス、規定に沿った納品データの作成が必要です
- 表示の安全域。テレビは画面の端が環境によって切れる前提で、文字や重要な情報を内側に収める設計が求められます。画面いっぱいに文字を置くWeb向けの画作りは調整が必要です
逆方向、つまりテレビCM素材のWeb転用は制度面の障壁がなく、比較的容易です。ただし、テレビの横型16:9をそのまま縦型のSNS面に流すと小さく表示されるため、縦型への再構成や、冒頭にメッセージを寄せる再編集を挟むのが実務的です。
将来テレビ放映の可能性が少しでもあるなら、制作の入口で伝えてください。尺の規格を意識した構成にする、出演契約の使用範囲を放送まで含めておく、といった設計を最初から織り込めば、流用時の追加費用は大きく減らせます。
WebCMの制作事例
当社が実際に制作し、公開しているWebCM関連の実績から紹介します。
エプソン販売のカラリオスマイルPlus 縦型ショートドラマ広告は、同じサービスを題材に、写真印刷版・引取料金無料版・ドキュメント印刷版・遠隔サポート版と訴求別のパターンを制作したシリーズです。1本の広告で全部を語るのではなく、訴求ごとに短い動画を分けて配信面で出し分ける、WebCMらしい設計です。各2ヶ月・実写・縦型で制作しました。
日本空港ビルデングのHaneda Airportアプリ紹介動画は、ビジネス利用編・レジャー利用編・アプリ紹介編の3本構成です。同じアプリでも、出張者と旅行者では刺さる機能が違うため、ターゲット別に本数を分けました。各2ヶ月・実写です。
ヤマハのコミュニケーションロボットCharlieは、キャスティングを含むドラマ仕立ての短尺WebCMです。尺は15〜60秒と短いものの、費用帯は300万円以上です。WebCMだから安いとは限らず、作り込みで金額が動くことを示す事例です。制作期間は3ヶ月でした。
東京都中小企業振興公社のTOKYO創業ステーション 15秒CMは、電車内ビジョンとWeb配信の両方で使う前提の15秒動画です。音声なしで伝わるテロップ設計にしており、ミュート再生が前提の配信面と相性の良い作り方です。
テレビ側の実績としては、バイエルのルーチン®コア TV-CMの演出・編集や、BS12 アジアドラマ枠のオープニング・エンディング映像を制作しています。この記事で説明した考査や搬入規格への対応は、こうした放送案件の実務で扱っているものです。
このほかの実績はWebCM・テレビCMの制作実績一覧でご覧いただけます。
1本で済ませず、訴求とターゲットで分ける
事例に共通する設計思想があります。WebCMは1本の完成度を磨き込むより、訴求やターゲットで本数を分けたほうが結果につながりやすい、ということです。
テレビCMは放映枠が高価なため、1本に訴求を凝縮する設計になりがちです。WebCMは配信面ごとに出し分けられるため、エプソン販売の事例のように訴求別へ分ける、羽田のアプリの事例のようにターゲット別へ分けるという構成が取れます。配信後の数値を見て、反応の良いパターンに予算を寄せる運用もWebCMならではです。
分ける前提なら、制作も最初からまとめて設計するのが得策です。撮影を1回にまとめて複数パターンを同時に作れば、1本あたりの制作費は下がります。後から1本ずつ追加するのが、最も割高になります。
なお、広告としての配信ではなく、商品の機能や仕組みをじっくり説明する動画が目的の場合は、商品紹介動画・サービス紹介動画の記事を参考にしてください。CMと説明動画では設計の考え方が異なります。
制作の流れと期間の目安
WebCMの制作は、企画・構成、撮影または素材制作、編集、入稿・媒体審査、配信開始、配信後の改善という順で進みます。当社のWebCM関連の実績では、制作期間は2ヶ月前後が中心です。素材が支給される編集のみの案件では2週間から1ヶ月未満で納品した例もあります。
テレビCMと違い考査期間を挟まないため、企画から配信開始までを短く設計できるのがWebCMの利点です。ただし、複数パターンの同時制作や撮影規模によっては3ヶ月程度を見込んでください。依頼から納品までの一般的な工程は動画制作の依頼から納品までの流れを解説した記事にまとめています。
配信先としてのコネクテッドTV
WebCMとテレビCMの境界は、視聴者側から見ると崩れ始めています。テレビ画面でTVerやYouTubeを見る、いわゆるコネクテッドTVの視聴が広がっているためです。TVerの運用型広告の売上は2025年度に前年比166%と伸びています(TVer発表)。
制作側の含意はシンプルです。WebCMであっても、テレビ画面の大きさで再生されることを想定した画質と画作りが求められる場面が増えています。スマホ前提の細かい文字やUI表示は、リビングのテレビでは間延びして見えます。配信面にコネクテッドTVを含めるかどうかは、企画段階で確認すべき項目になりました。
公開後に何を見るか
WebCMは配信して終わりではなく、数値を見て直せることが強みです。ただし、見るべき数値は配信面と目的で変わります。
| 目的 | 見る数値 | 判断のしかた |
|---|---|---|
| 認知を広げる | 表示回数、視聴完了率、視聴単価 | 完了率が低ければ冒頭3秒の構成を疑う |
| サイトへ誘導する | クリック率、遷移後の行動 | クリックされても直帰が多ければ、広告とLPの内容のずれを疑う |
| 申込み・購入につなげる | CV数、CV単価 | 動画の訴求パターン別に比較し、良い方へ予算を寄せる |
注意したいのは、媒体をまたいだ再生数の単純比較です。「視聴1回」と数える条件は媒体ごとに定義が異なるため、媒体Aと媒体Bの再生数をそのまま並べても優劣は判断できません。比較するなら、同じ媒体内でパターン別に比べるのが基本です。
配信後の改善・運用の進め方は動画広告運用を解説した記事で詳しく説明しています。
WebCMのよくある質問
WebCMとは何ですか?
YouTubeやSNS、Webサイトなどインターネット上で配信されるCM動画です。テレビCMとの本質的な違いは、放送局の考査がなく媒体の広告審査だけで配信できること、費用が制作費と配信費の2階建てになっていることです。
WebCMはどこで流れますか?
YouTubeのインストリーム広告、InstagramやTikTokなどSNSのフィード・リール面、Webサイトの広告枠が主な配信先です。近年はテレビ画面で視聴されるTVerなどのコネクテッドTV面も広がっています。自社サイトやLPへの埋め込み、展示会や商談での再利用も含めると、1本の動画の使い道は配信枠にとどまりません。
WebCMの制作費用の相場はいくらですか?
当社の公開している料金では、広告・CM動画の制作費は50万円から300万円です。撮影規模とキャスティング、アニメーションか実写か、同時制作の本数で変動します。このほかに、広告として配信するための配信費(媒体費・運用手数料)が別途かかります。見積もりの際は制作費と配信費を分けて確認してください。
テレビCMとWebCMはどちらを選ぶべきですか?
リーチの広さと一斉到達ならテレビCM、ターゲットの絞り込みと出稿の速さ、数値を見ながらの改善ならWebCMに分があります。予算面では、テレビCMは放映料を含めた総額が大きくなりやすく、WebCMは小さく始めて配信費を調整できます。両方を組み合わせる場合は、素材の流用要件(尺・考査・搬入規格)を企画段階から設計しておくと無駄がありません。
WebCMで作った動画をテレビで流せますか?
そのままでは流せません。テレビCMの規格尺(15秒・30秒など)への再編集、放送局の考査の通過、ラウドネス基準など搬入規格への適合が必要です。将来テレビ放映の可能性があるなら、制作開始時に伝えていただければ、尺と出演契約を放送前提で設計しておけます。
まとめ:WebCMは「制度」と「費用構造」から理解する
WebCMとテレビCMの違いは、配信場所の違いではなく、考査の有無という制度の違いと、制作費に何を足すかという費用構造の違いです。ここを押さえると、見積もりの比較も、テレビへの流用判断も、迷わなくなります。
制作費の公開範囲は50万円から300万円。配信費は別勘定で、小さく始めて調整できます。訴求とターゲットで本数を分け、配信後の数値でパターンを磨くのがWebCMの戦い方です。
当社はWebCMと、テレビで放送されるCM・放送枠映像の両方を制作しています。実績はWebCM・テレビCMの制作実績一覧で公開しています。テレビへの展開可能性も含めて、企画の段階からご相談ください。
1,000社5,000本の実績