急成長を続けるWeb動画広告市場ですが、実は高額の予算を投じた作品はそれほど多くありません。もともとTVCMよりはるかにリーズナブルな広告手段としてWeb動画が注目された、という経緯なのでそれも当然です。
であるならば、いかに安く動画を制作するかは重要なポイントです。細かい部分の工夫で予算を圧縮することももちろん可能ですが、より大きな枠組みでいえば、映像ジャンルによって基本的な制作費がそもそも異なります。
映像ジャンルを実写とアニメーションに大別すると、実写よりアニメーションのほうが多くの場合格安で制作できます。制作費を抑えてクオリティの高い動画を制作したい場合、アニメーションは有力な選択肢になりえます。
では具体的にどのようなアニメーションをどの程度のコストで制作できるのか、この記事ではその点を詳しくご紹介します。
シンプルなアニメーション動画
アニメーションは確かに安価なのですが、この「安価」には「絶対的な価格として安い」という意味と「同じ内容を実写でやる場合に比べて相対的に安い」という2つの意味があります。
その中でこの章では前者について解説します。コストを安く抑えられるアニメーション動画は以下の通りです。
- スライドショー
- テンプレート動画
技法的にはシンプルなものが多く、実写の代替手段というよりもパワーポイントなどの静止画プレゼンテーションを発展させたコンテンツをイメージするとよいでしょう。
それぞれのアニメーション動画について、以下で詳しく説明します。
スライドショー
最もシンプルなアニメーション動画といえばスライドショーでしょう。素材として使えるのは原則として写真のみで、その写真を順番に表示していくのが基本の形です。その上から、写真に動きを付けたり、写真が切り替わる際にトランジションと呼ばれるエフェクトを用いたり、上に文字を乗せたりなどのアレンジを加味することが可能です。
シンプルな技法であるため、企画からコンテンツ制作まで社内で行う企業も見受けられます。しかし、完成度の高い仕上がりを目指したい企業は、動画制作会社などのプロに依頼することで詰めの甘さのない見やすい動画になります。
テンプレート動画
さまざまなアニメーションはAfter Effectsという定番アプリで制作することが多いのですが、実はAfter Effectsで使えるアニメーションのテンプレートがたくさん市販されています。写真素材やテキスト原稿を差し替えるだけで複雑なアニメーションが完成するので非常に便利です。
ただし実際の案件でテンプレートを使う場合には注意が必要です。素材の差し替えとは別にテンプレート自体を、クライアントの要望や演出上のニーズに応じ改変しなければならないケースがほとんどだからです。そしてテンプレートを改変するにはテンプレートの作者と同等のスキルが必要になります。
つまりスキルの高いクリエイターに動画を発注した上で、煩雑な工程をショートカットする手段としてテンプレートの導入を検討する、というのが正しい順序と言えるでしょう。
作り込むタイプのアニメーション動画
ここからはある程度の工数を要するアニメーション技法をご紹介していきます。価格帯としては前章のシンプルなアニメーションよりは高くなりますが、同じ内容を実写で表現する場合に比べればはるかに安く制作できます。
作り込むタイプのアニメーション動画は以下の通りです。
それぞれのアニメーション動画の特徴について、以下で確認していきましょう。
ホワイトボードアニメーション
ホワイトボードアニメーションは、ホワイトボードに文字や絵が描かれていく様を早回しで見せる技法です。最終的に表示されるのは手描き(調)の文字や絵ですが、描画の過程を含めて見せることで動画としての緩急が生まれ、視聴者の目を惹きつけます。
実際のホワイトボードに手描きする様子を実写する、という作り方ももちろんあり、その例が上の動画です。ただしこのような作り方はむしろ珍しく、手描きのように文字や絵が現れる効果を編集処理で作るという方法が主流です。その例がこちらの動画です。
ミニカーを出すのも巨大宇宙船を出すのも、そのような絵を用意すればいいだけなので同程度の労力で制作できます。つまり一定の予算や工数でおおよそどんな主題でも描けるのがこの技法の利点と言えます。
インフォグラフィックス
さまざまなコンセプトやメッセージを分かりやすく伝えるため、イラストや文字、グラフ、図形などに複雑な動きを加味して作られた映像のことをインフォグラフィックスといいます。近年、多くの企業やユーザーが利用している映像技法です。
ホワイトボードアニメーションのように演出が1種類に限定されているわけではないので、修正などを行っていく必要があり、それなりに時間と費用がかかります。しかしその分、事実上どんな表現でも可能になるのが強みです。実写を撮るよりも楽で、ホワイトボードアニメーションよりは自由度が高い、バランスの良い選択肢と言えるでしょう。
キャラクターアニメーション
人物などのキャラクターを多用したアニメーションのことをキャラクターアニメーションといいます。インフォグラフィックスと技法的には近いのですが、キャラクターが登場するだけで全体の印象は大きく変わります。
親しみやすさを訴求したいときなどに有力な方法です。また、インパクトのあるキャラクターを活用することで、わかりやすく動画の内容を伝えられるだけでなく、キャラクターを覚えてもらうことでブランディングにもつながります。
ただし、アニメに登場するキャラクターを認知してもらうまでには、ある程度の時間がかかることを覚えておきましょう。
ユーザーにとって印象に残りやすいキャラクターをデザインするためには、プロのクリエイターに依頼することをおすすめします。外注することでコストはかかるものの、質の高いキャラクターに仕上がります。
3DCG
これまでご紹介してきたのは基本的には2Dベースの映像です。3DCGはそれとは異なり、対象となるオブジェクトをコンピュータ内でモデリングし、そのモデルをコンピュータ内の仮想的なカメラで撮影する方法で制作します。
つまり、専門的な知識が必要になるだけでなく、基本的に手間のかかる技法です。専門のクリエイターがしっかり稼働しないとつくれないので、制作費は比較的高額になります。しかし、例えばまだ開発中で現物が存在しない製品を紹介したい場合は実写できないので、3DCGは唯一の選択肢になります。
巨大宇宙船が飛び交ったり、ビルが倒壊したりなどのいわゆるVFXも3DCGです。現物を用意するのが難しい場合や、用意できたとしても非常に高額になってしまう場合に、手間や費用を圧縮する手段として3DCGを用いるというわけです。
このように絶対的な価格としては必ずしも安くなくても、開発段階で現物が存在しない製品などの演出を実現する手段として実写と比較した場合に安い、というのは3DCGの大きな存在意義と言えます。
動画を内製することのデメリット
コストを抑えようとして、動画を内製しようと考えている企業は、内製することのデメリットを理解しておくことが重要です。内製化のデメリットとして、以下が挙げられます。
- 社内リソースが必要になる
- 専門的な知識やスキルが必要になる
- 初期費用がかかる
それぞれのデメリットについて、詳細を以下で確認していきましょう。
社内リソースが必要になる
動画を自社で一から制作する場合、社内リソースを確保する必要があることを覚えておきましょう。人材などの社内リソースが不足している状態では、動画制作を継続的に行うのが難しくなってしまいます。
動画によるマーケティングやプロモーションは、「継続的に実施」していくことで効果を実感できます。動画を公開した後の分析結果に基づいて、修正を行うことで動画の最適化を目指せるのです。
そのため、社内リソースが不足している企業は、外部のクリエイターや業者を活用することで、継続的に動画を活用できるようになります。
また、社内で動画を制作するにしても人件費がかかるため、外注を利用することにより、コストをおさえられるケースもあります。
専門的な知識やスキルが必要になる
動画を自社で活用するためには、編集スキルや動画のマーケティングに関する専門的な知識などが欠かせません。このような知識やスキルがない状態で動画を活用しようとしても、クオリティの高いコンテンツを制作できなかったり、思うような効果を実感でできない可能性があります。
また、動画に関する専門的な知識やスキルをもった人材を確保するのは難しいだけでなく、社員を育成するのにも時間がかかるため、注意が必要です。
動画を活用するために必要な知識やスキルが不足していると感じている企業は、業者のサポートを得ることで、上記のような課題を解決できます。
初期費用がかかる
動画制作をこれまで行ったことがない企業が動画制作に挑戦する場合、機材や編集ソフトなどを用意しなくてはいけません。機材や編集ソフトを一式そろえるには、ある程度のコストがかかります。
カメラなどは良いものを選ぶと数十万円かかることもあり、コストがかさんでしまうのです。また、撮影機材をレンタルすることもできますが、継続的に動画を活用する場合、高くつくことがあります。
人気のある編集ソフト「Adobe Premiere Pro」を契約する場合、Creative Cloudコンプリートプランで月額6,248 円となっています(法人契約の場合、価格が異なる場合があります)。
このような初期費用を踏まえたうえで、動画制作を業者やフリーランスのクリエイターに依頼するか判断することが重要です。
なお、以下の記事でフリーランスのクリエイターに安く依頼する際の注意点や費用相場について紹介していますので、ぜひご参照ください。
動画を発注する業者の選定方法
クオリティの高い動画を制作する場合は、動画の制作を外注することも視野にいれましょう。費用も重要な選定ポイントですが、他にもいくつかのポイントがあります。
- 実績
- 対応範囲
- 動画の制作スキル
ここでは、動画コンテンツ制作を発注する業者の選定方法を確認しましょう。自社にとって最適な業者を選ぶことで、納得のいく動画制作を行えます。
実績
動画制作会社がこれまで行ってきた動画作品や制作実績を確認することが大切です。また、動画制作会社が強みを持っている業界なども同時に確認するようにしましょう。
自社がイメージする動画を制作してもらえるか判断するために、実績や制作事例は役立ちます。動画制作会社のホームページ等に制作実績や事例が掲載されていることが多いです。動画制作会社が制作した動画を視聴してみて、動画のクオリティや会社のスキルなどを見極めましょう。
さらに、納期スピードや担当者の対応などに対する顧客の評価を確認することをおすすめします。
対応範囲
動画制作だけでなく、動画マーケティングも対応範囲に含まれるか確認しましょう。動画は制作するだけでなく、どのようにマーケティングを行っているか、どのように動画をPRに活用していくかが重要になります。
動画制作会社の中には、マーケティングやPRにも対応しているところもあります。マーケティングやPRの効果を最大化させるためには、専門知識やノウハウが必要です。自社にこのような知識やノウハウが不足している場合、プロの力を借りることが重要です。
他にも、広告運用代行サービスやYouTubeチャンネル運用サービスなどを提供しているところもあるので、サービスの詳細を確認して発注先を選定しましょう。
アニメーション動画の制作スキル
動画制作会社を選定する際は、アニメーション動画の制作スキルに着目するとよいでしょう。実写動画の制作は多く担当している会社でも、アニメーション動画の制作に優れているとは限りません。
ホワイトボードアニメーションや、インフォグラフィックス、3DCGなど、どのようなアニメーション制作を行っているか確認しましょう。
また、動画をグローバル展開する場合、セリフやナレーションの多言語対応を行っているか確認することをおすすめします。
VIDWEBが提供している動画広告・リスティング広告の運用代行サービス、YouTubeチャンネル運用サービスについて、以下のページで紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
費用を抑えた動画制作ならアニメーション動画がおすすめ
本記事では、さまざまなアニメーションの手法について網羅的に説明しました。コロナ禍の今、映像制作の発注をしたいけれど実写撮影は控えたい、と考えるクライアントも多くいらっしゃるようです。そのような場合、リスクの少ない制作方法としてアニメーションは有力な選択肢といえるのではないでしょうか。
一概にアニメーションといっても、技術によってコストや動画制作のプロセスは大きく異なります。コストを踏まえたうえで、自社の商品やサービスをアピールするのに最適な手法を選ぶことが大切です。
クオリティの高いコンテンツを制作したい場合、動画制作会社やプロのクリエイターに外注します。費用だけでなく、納期スピードや実績、担当者のスキルなどに着目して、自社にあう外注先を選びましょう。
アニメーション動画とモーショングラフィックスに関しては、以下の記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。