
近年、広告業界で注目を集めるデジタルサイネージ動画は、街中や商業施設で見る機会が増え、その圧倒的な視覚効果で注目を集めています。店舗の集客、商品PR、企業ブランディングなど、多様なマーケティング施策に対応できるため、今や欠かせないプロモーションツールです。
しかし、いざデジタルサイネージ動画を制作しようとしても、「どうやったら効果的なものができるのか?」「他の企業はどのように活用しているのか?」など、疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
- デジタルサイネージ動画は、場所やターゲットに合わせた情報発信で高い効果を発揮
- 効果的なデジタルサイネージ動画を制作するには、目的・ターゲット・環境への配慮が重要
- 空間演出、AIによるパーソナライズが最新トレンド
デジタルサイネージ動画とは?
デジタルサイネージは、従来のポスターや看板に代わる新たな情報伝達ツールとして注目されています。店舗、商業施設、駅、街頭などに設置されたディスプレイやプロジェクターを活用し、動画、静止画、音声などの情報を発信するシステムです。
静止画が使われる場合もありますが、動きのある動画コンテンツ(=デジタルサイネージ動画)を活用することで、静止画よりも視認性が高く、人々の注目を集めやすくなります。

画像引用:デジタルサイネージ広告市場調査を実施
株式会社CARTA HOLDINGSの調査によると、2027年の市場規模予測は1,396億円(2023年比174%増)とされ、今後もさらなる成長が見込まれています。このことからも、デジタルサイネージの注目度の高さがうかがえます。

デジタルサイネージ動画は、もはや「未来の広告」ではなく「現在の主流」となりつつあります!
デジタルサイネージ動画の配信先
デジタルサイネージ動画は、設置場所や用途に応じてさまざまな配信先があり、それぞれの特性を活かして効果的に情報を発信できます。
1.屋外広告
駅前、繁華街、交差点など、人通りの多い場所に設置された大型ディスプレイで動画を配信します。主に高輝度のLEDディスプレイが使用され、昼夜を問わず高い視認性を誇り、不特定多数の潜在顧客層にアプローチできる点が強みです。
動画と音声の組み合わせは、通行人の注目を集めやすく、SNSなどでの二次的な拡散効果も期待できます。特に、渋谷や原宿といった人気エリアでは広告枠の需要が高く、再開発エリアや新規開発地区を中心に設置が進んでいます。
設置場所 | 駅前、繁華街、交差点、商業施設の壁面など |
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ターゲット | 不特定多数の歩行者、通行車両のドライバーなど |
効果 | 認知度向上、ブランドイメージ向上、イベント告知など |
広告出稿の料金例 | 15秒×4回(1日)で約20万円(新宿ユニカビジョン) |
2.交通広告
電車内、駅構内、タクシー、バス車内などに設置されたディスプレイを活用します。通勤・通学中の乗客に対し、繰り返し広告を表示することで、高い接触頻度を実現できる点が大きなメリットです。
車両内では、例えばJR東日本の山手線で展開されている3連モニター「まど上チャンネル」のように、3面を1つの広告として活用するなど、多様な表現方法が開発されています。タクシー広告は、首都圏での設置がほぼ完了し、安定成長期に移行しています。
設置場所 | 鉄道車両内、駅構内、タクシー車内、バス車内など |
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ターゲット | 通勤・通学客、乗客など |
効果 | 継続的な接触によるブランド浸透、新商品・サービス告知など |
広告出稿の料金例 | 電車内:1週間15秒の枠で20万円~480万円(媒体や場所により大きく異なります)程度(JR東日本)駅構内:1週間500万円程度(渋谷ストリートビジョン)タクシー:1週間12~270万円(TOKYO PRIME_特定エリア)バス:1ヶ月3~8万円(神姫バス) |
3.インストア広告
スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストアなどの店舗内に設置されたディスプレイに配信します。
来店者の動線を考慮した商品棚前のタブレット型端末などを使った広告は、すでに定番の手法となっており、現在では大手コンビニチェーンによる大規模なデジタルサイネージ導入計画も進行中です。
設置場所 | スーパー、コンビニ、ドラッグストアなどの店舗内 |
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ターゲット | 来店者 |
効果 | 購買促進、商品認知度向上、キャンペーン告知など |
広告出稿の料金例 | 1週間(200インチに20分に1回放映)5.5万円(イオンモール) |
4.その他の広告
デジタルサイネージは、上記以外にも多様な場所で活用が広がっています。近年、居住用マンションのロビーやエレベーター内への設置は増加傾向にあり、住民の生活空間における広告接触機会を増やしています。
さらに、ゴルフカートのナビゲーション画面や公衆トイレの個室など、ユニークな場所への設置も進んでおり、特定のターゲット層へ効果的に訴求できる新たな広告媒体として期待されています。
設置場所 | 公共施設、マンション、映画館、ゴルフ場、公衆トイレなど |
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ターゲット | 各施設の利用者、居住者など |
効果 | 地域住民への情報提供、特定層へのターゲティング広告など |
広告出稿の料金例 | 2週間で90万円(ElevatorTV 東京23区プラン) |
デジタルサイネージ動画を活用するメリット
デジタルサイネージ動画には、以下のようなメリットがあります。
高い注目度と記憶への定着
DOOH(Digital Out of Home)業界に特化したプラットフォーム「Digital Signage Today」によると、デジタルサイネージ動画は静止画ディスプレイに比べて約400%多くの視聴を獲得していると報告されています。
動画ならではの動きや音声の組み合わせにより、視聴者の注意を一瞬で捉え、印象に深く刻まれやすくなります。この特性は、ブランド認知の向上や広告による集客効果の大幅な向上につながるため、企業や商業施設などでの活用が期待されます。
参考:Digital Signage Today「100 Proven ROI-Driven Digital Signage Statistics 2022」(英語サイト)
情報伝達力の高さと多様な表現
動画は、映像・音声・テキストを巧みに組み合わせることにより、一つの媒体では伝えきれない複合的な情報を、直感的かつ迅速に届ける手段です。
例えば、新商品のプロモーション動画では、商品のデザイン、機能、使い方、価格など多岐にわたる情報を一度に表現できます。また、BGMや効果音、ナレーションを活用することで、視聴者の感性に直接働きかけ、ブランドの魅力をより深く印象付け、購買意欲の向上にも貢献します。
ターゲットを絞り込んだ情報発信が可能
デジタルサイネージは、設置場所、時間帯、視聴者の属性に応じた配信方法を採用することで、特定のターゲット層に向けた情報発信が実現できます。
例えば、商業施設の場合、平日昼間は主婦層向けの広告、週末の夜にはファミリー向けのイベント情報を配信することで、それぞれの層に最適なコンテンツを提供できます。このような柔軟な運用により、急激な市場の変化にも迅速に対応できる点が強みです。
デジタルサイネージ動画の制作ポイント
デジタルサイネージ動画を制作する際には、以下のポイントを意識しましょう。
目的を明確にする
まず、デジタルサイネージ動画で何を達成したいのかを明確にしましょう。目的が定まることで、配信媒体の選定、ターゲット設定、コンテンツの内容や構成が決まりやすくなります。
ターゲット層を意識する
誰にメッセージを届けたいのかを考え、そのターゲット層に響く表現を検討しましょう。年齢、性別、ライフスタイルなどを具体的に考慮することで、より効果的な訴求ができます。
配信環境を考慮する
デジタルサイネージ動画は、設置場所の明るさ、周囲の音、視聴距離などを考慮して制作する必要があります。明るい場所ではコントラストを強調する、視認性の高い配色やフォントを使用するなどの工夫が必要です。
短くても効果的な動画にする
屋外広告や交通広告の場合、15秒または30秒といった短尺フォーマットが一般的であり、限られた時間の中で視聴者の注意を即座に捉える工夫が必要です。
例えば、15秒動画は冒頭数秒で強いインパクトを与え、すぐにメッセージを伝える構成に、。30秒動画ではより詳細な情報やストーリーを盛り込みながらも、無駄を省いた編集が効果的です。
高画質・高音質クオリティ
デジタルサイネージ動画は、企業のイメージを左右する重要な要素です。品質が低いと、企業のブランドイメージに悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、高画質・高音質の動画を制作し、企業のブランド価値を高めましょう。
デジタルサイネージ動画の効果測定方法
デジタルサイネージ動画の効果を測定する主な方法は以下の通りです。
- 視聴時間
- アンケート調査
- 売上分析
- 視聴者属性の分析
それぞれについて説明します。
視聴時間
視聴者が動画にどれだけの時間滞在しているかを測定し、動画の引きつけ力を評価します。例えば、異なる編集方法や構成を用いたA/Bパターンを比較し、平均視聴時間や完全視聴率の違いをチェックすることで、どちらのパターンがより効果的かを判断できます。
アンケート調査
動画を見た視聴者に対し、内容の印象、理解度、購買意欲の変化などを尋ねるアンケートを実施します。オンラインでアンケートを実施するほか、実際の設置場所で街頭インタビューを行うことで、定量的データだけでなく、視聴者の生の感想や行動変容のヒントを得られます。
売上分析
デジタルサイネージ動画導入前後の店舗売上や来店数を比較し、動画が購買行動に与えた影響を分析します。例えば、動画配信開始後に来店数がアップした事例や、特定商品の売上が明確に伸びたケースをもとに、効果を具体的に評価します。
視聴者属性の分析
AIカメラやセンサーを活用し、視聴者の年齢、性別、滞在時間などの属性データを匿名化した上で収集できます。これにより、ターゲット層に適切にリーチできているかを検証し、動画の内容や配信戦略を最適化するためのデータを得られます。

効果測定の精度やデータ収集の効率性の点ではWeb広告に劣る場合がありますが、設置場所やターゲット層に応じた戦略を立てることで、WebやSNS広告にはない独自の効果を発揮します。
【業界別】デジタルサイネージ動画の活用事例

デジタルサイネージ動画は、さまざまな業界で活用されており、それぞれのニーズに応じた効果的な利用方法が存在します。以下に、業界別の具体的な活用例を紹介します。
食品・飲料業界 | 飲食店、レストラン、カフェ、メニュー、レシピ動画
メニュー紹介、新商品プロモーション、季節限定メニューの訴求などに活用できます。レストランでは、デジタルメニューボードで料理の写真や動画を表示し、顧客の食欲を刺激します。待ち時間におすすめメニューを動画で紹介し、客単価向上を狙います。
ファッション・アパレル業界 | コーディネート、着回し、トレンド
新作コレクションやセール情報の告知、店舗内でのブランド体験向上に貢献します。アパレルショップでは、新作コーディネートを動画で紹介。試着室のデジタルサイネージで試着姿を確認できる仕組みを導入し、購買意欲を高めます。
家電・ガジェット業界 | 最新家電、スマートホーム、IoT
製品デモンストレーション動画、機能説明、使用方法の紹介に効果的です。家電量販店では、製品の使用シーンを動画で流し、顧客が製品の利便性を具体的にイメージできるようサポートします。
自動車業界 | 新型車、試乗、自動運転
新車モデルのプロモーション映像、ショールームでのインタラクティブな体験を提供します。自動車ディーラーでは、デジタルサイネージで新車の特徴や走行シーンを動画で紹介し、顧客の興味を喚起します。待ち時間対策のエンタメコンテンツも活用します。
観光・エンターテインメント業界 | 観光名所、VR体験、イベント
観光地のプロモーション、映画予告編、イベント情報発信に利用されます。観光地では、デジタルサイネージで観光スポットの魅力を動画で伝え、イベント情報をリアルタイム更新することで訪問者の満足度を向上します。
教育機関 | 大学、専門学校、オープンキャンパス、オンライン授業
学校紹介、授業内容説明、イベント告知などに活用できます。大学では、オープンキャンパス情報や学校の特色を動画で発信し、入学希望者へ訴求します。校内では緊急連絡やスケジュール変更をリアルタイムに表示します。
医療機関 | 病院、クリニック、健康診断、予防接種
病院案内、診療科紹介、健康情報発信に役立ちます。病院待合室では、健康アドバイスや予防接種案内を動画で提供し、患者の不安を軽減します。診療科の特徴を動画で紹介し、適切な診療科選択をサポートします。
不動産業界 | 物件情報、バーチャル内見、周辺環境
商業施設やマンションの物件紹介動画、周辺環境案内に利用されます。不動産会社では、デジタルサイネージで物件内装や周辺施設を動画で紹介し、顧客が物件の魅力を視覚的に理解できるよう支援します。
イベント・キャンペーン | 展示会、ライブ、期間限定
ライブイベントやセールキャンペーン告知、会場案内に活用されます。イベント会場では、デジタルサイネージでスケジュールや会場案内をリアルタイムで表示し、参加者の利便性を向上。イベントハイライトや参加者コメント動画で会場一体感を高めます。
デジタルサイネージ動画の制作費用
デジタルサイネージ動画の制作を外部へ依頼する場合、一般的な相場は約20万円〜300万円程度です。費用に影響する主な要因として、以下の要素が挙げられます。
動画の長さと編集内容
短尺(15〜30秒程度)の動画は比較的低コストで制作可能ですが、長尺の動画や複雑な編集を要する場合、費用が上昇します。
映像の解像度と特殊効果
4Kなどの高解像度映像、オリジナルアニメーションの制作、特殊効果の追加などは、制作費用を押し上げる要因となります。なお、動画制作ツールを活用すれば社内で制作できますが、十分なノウハウがない場合、競合他社との差別化やブランドイメージ構築において期待する効果が得られない可能性もあります。

デジタルサイネージ動画の制作費用は、動画の仕様や表現の複雑さ、活用する技術や手法によって大きく変動するため、事前に目的と予算を明確にして制作会社と詳細を相談することが大切です。
デジタルサイネージ動画の最新トレンド
デジタルサイネージ動画は、常に進化を続けています。ここでは、最新トレンドをご紹介します。
空間演出型デジタルサイネージ | JR東日本「Beyond Stations構想」
JR東日本は「Beyond Stations」構想のもと、主要駅に大型デジタルサイネージを導入し、駅の空間全体をダイナミックに演出しています。
【代表的な事例】
- 上野駅広小路口 (J・ADビジョン 上野)では、約50㎡の大型曲面サイネージとイベントスペースを組み合わせ、映像と連動した体験型コンテンツを提供しています。
- 新宿駅南コンコース (J・ADビジョン 新宿)では、 約60mの天井ロングサイネージ、48面の柱サイネージ、約55㎡の大型3面サイネージを連携させ、迫力ある情報発信を実現。地域情報を積極的に発信するなど、多様なコンテンツを展開しています。
これらのデジタルサイネージは、東京都のキャップ・アンド・トレード制度などを活用し、CO2排出量を実質ゼロにした「ゼロカーボンメディア」としても運用されています。
参考:JR東日本「「Beyond Stations 構想」による新たな駅空間を創造します~「イマーシブなメディア空間」が誕生!~」
AI×タッチパネルで顧客体験を向上 | イオンモール豊川
イオンモール豊川は、AIカメラとタッチパネルを組み合わせたデジタルサイネージを導入し、顧客一人ひとりに最適化された情報提供と、より便利な施設利用を実現しています。
フードコート入口には、21.5インチのタッチ機能付き液晶ディスプレイと43インチのプロモーション用ディスプレイを備えた飲食案内AIタッチパネルサイネージを4台設置。AIカメラが利用者に近づくと、その属性を判別し、おすすめの飲食店やメニューを提案します。
参考:流通ニュース「イオンモール豊川/全館案内AIタッチパネルサイネージを28台導入」
デジタルサイネージ動画で記憶に残る映像体験を提供しよう
デジタルサイネージ動画は、静止画では伝えきれない情報や感情を、より強く、より深く情報を伝えられるツールです。店舗、オフィス、公共空間など、あらゆる場所でその活用が進み、私たちの生活に欠かせない存在となりつつあります。
「デジタルサイネージ動画に興味はあるけれど、何から始めれば良いのかわからない」「効果的なサイネージ動画を制作したい」という方は、ぜひVIDWEBへご相談ください。
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本記事では、デジタルサイネージ動画の基本から、効果的な制作のポイント、参考になる活用事例までわかりやすく解説します。