インバウンド動画というと観光PRを思い浮かべる方が多いのですが、日本に来る外国人は観光客だけではありません。留学生、働きに来る人、住みに来る人がいて、それぞれに向けた動画は作り方が違います。
当社が公開している来日者向けの制作事例9件を見ると、半数以上が留学生や海外の受験生に向けたものでした。言語の扱いも、二言語を組み合わせたもの、英語版を別に作ったもの、英語テロップを足したものと分かれています。
この記事では、インバウンド動画を4つの対象で整理したうえで、何語にするか、テロップか吹替か、海外で撮るか、視聴後にどこへ送るかを、発注担当者の実務として解説します。
インバウンド動画とは。観光客だけではない4つの対象
インバウンド動画とは、日本を訪れる、あるいは日本で暮らす外国人に向けて作る動画です。日本語話者に向けた動画を翻訳したものではなく、相手の言語と前提知識に合わせて作り直したものを指します。
対象は大きく4つに分かれます。誰に向けるかで、伝える内容も、発注する部署も変わります。
| 対象 | 何を伝えるか | 発注するのは | 言語の扱い |
|---|---|---|---|
| 訪日観光客 | 行きたいと思わせる体験、アクセス、滞在中の過ごし方 | 観光事業者、自治体、観光協会 | 訪問国に合わせて複数言語 |
| 留学生・海外の受験生 | 学べる内容、学費と生活、卒業後の進路、不安の解消 | 大学、専門学校の広報 | 母語または英語 |
| 在留外国人 | 生活ルール、ごみの分別、防災、行政手続き | 自治体、公共機関 | 多言語とやさしい日本語 |
| 移住者・海外からの採用候補者 | 暮らしぶり、働く環境、人のつながり | 事業会社の人事、住居サービス | 英語が中心 |
この整理が効いてくるのは、予算と言語を決める段階です。訪日観光客向けなら訪問国の構成から言語を決めますが、留学生向けなら募集したい国が先に決まっているので、言語は1つか2つに絞れます。在留外国人向けは、多言語に加えて、やさしい日本語という選択肢が入ります。
やさしい日本語は、文法を簡略化して漢字を減らした日本語です。日本で暮らしている外国人は、母語の字幕より読みやすい場合があります。行政の案内動画では標準的な選択肢になっています。
自治体が発注する場合の進め方は自治体の動画活用を解説した記事、学校が受験生や留学生に向けて作る場合は学校紹介動画を解説した記事で詳しく扱っています。
何語にするか。ターゲットから逆算して決める
最初に決めるのは言語です。ここを曖昧にしたまま企画を進めると、撮影が終わってから「英語版も欲しい」となり、作り直しになります。

決め方はターゲットからの逆算です。すでに来ている人の国籍構成を見るのか、これから増やしたい国を決めるのか。この2つは結論が変わります。当社がご相談をいただくとき、最初に伺うのは動画の内容ではなく、届けたい相手がどの国にいるかです。
言語ごとに、注意する点があります。
中国語は簡体字と繁体字に分かれます。中国本土向けなら簡体字、台湾や香港向けなら繁体字です。ひとまとめに「中国語版」として発注すると、届けたい相手に読めない字幕を作ってしまうことがあります。
英語は、多くの国の視聴者に届く一方で、母語でないぶん温度が下がります。特定の国だけを狙うなら、その国の言語のほうが効きます。
当社が制作した昭和女子大学様のベトナム人留学生向け紹介動画では、ベトナム語と日本語を組み合わせた二言語構成を採用しました。ターゲットであるベトナムの若者が内容を直感的に理解できるようにするためです。翻訳を含めて一括で制作し、言語の切り替えが映像に自然に溶け込むよう設計しています。
東南アジア言語は、ベトナム語、タイ語、インドネシア語などが対象になります。当社では英語、中国語の簡体字と繁体字、韓国語、東南アジア言語への派生に対応しています。
テロップか吹替か。言語を増やすと費用はどう増えるか
言語が決まったら、次はテロップにするか、ナレーションを差し替えるかです。ここが費用に直結します。

テロップの差し替えは、翻訳して字幕を作り直す作業です。もとの映像はそのまま使えます。ただし文字数が言語によって変わるため、レイアウトの調整が必要になります。日本語で1行に収まっていた文が、英語では2行になることは珍しくありません。
ナレーションの差し替えは、音声を作り直す作業です。従来はスタジオを押さえてナレーターを手配するため、言語を増やすたびに収録費がかかりました。
ここは、AI音声生成が実用になったことで変わった部分です。当社では無料多言語化サービスと無料AI音声読み上げソフトを提供しており、日本語版から多言語版への派生をスタジオ収録なしで行えます。学校向けの案件では、ボイスゲート(VOICE GATE)というAI音声生成のサービスで多言語ナレーションを作っています。
実際の例があります。当社が制作したUMI様の英語版事業紹介動画は、既存の日本語版の英語版として制作したもので、ナレーションにボイスゲートを使いました。機械的な読み上げにならないよう、人間のナレーターに近い発音を目指して調整しています。制作期間は1ヶ月です。
この結果、言語を1つ増やすときにかかるのは、翻訳、テロップの再配置、音声の生成という3つの工程になります。ゼロから撮り直すのとは費用の桁が変わります。
大事なのは、初期設計の段階で「あとで何語に増やすか」を決めておくことです。テロップを画面に焼き込まず、差し替えられる形で作っておけば、あとから言語を足せます。焼き込んでしまうと、映像から作り直しになります。
海外で撮るか、日本で撮るか
インバウンド動画では、海外での撮影が必要になる場合があります。判断の基準は、日本にいる相手を撮れば足りるか、現地の様子そのものが内容の中心かです。
留学生の声を伝えたいなら、日本にいる在学生を撮れば足ります。一方、海外での活動そのものを見せたいなら、現地で撮るしかありません。
当社が制作した立命館大学様の国際連携学科の紹介動画では、留学前、留学中、留学後の3つの時点で学生にインタビューを行いました。留学前と留学後は立命館大学様のキャンパスと京都の町屋で撮影し、留学中は実際にアメリカのワシントンD.C.で撮影しています。大学の中だけでなく大学外の場面も入れることで、留学生活の実際の雰囲気を伝えました。インタビューの質問事項も当社で作成しています。制作期間は4ヶ月です。
成城大学様の海外インターンシップ(タイ編)の紹介動画では、参加前の意気込みを東京で撮影し、現地で活動している様子をタイのバンコクで撮影しました。国内での準備段階と海外での活動を組み合わせることで、プログラム全体の流れが理解できる構成にしています。この案件では、日本国内の一部の場面について学生の方々に撮影協力をいただき、その映像をインサートとして使いました。撮影の負担を抑えながら、学生目線の表情を映像に残すためです。制作期間は2ヶ月です。
海外での撮影が入ると、日程は読みにくくなります。当社の来日者向けの事例9件では制作期間の中央値は2ヶ月ですが、ワシントンD.C.で撮影した立命館大学様の案件は4ヶ月で、9件のうち最長でした。一方でタイで撮影した成城大学様の案件は2ヶ月で完了しています。撮影地の数や渡航の調整しだいで変わるため、海外パートがある場合は日程に余裕を見ておいてください。
誰が出演するか。当事者の声が効く理由
インバウンド動画では、出演者の選び方が伝わり方を大きく変えます。日本人が「日本はいいところです」と語る映像より、同じ立場の外国人が語る映像のほうが届きます。
昭和女子大学様の事例では、実際に同大学で学ぶベトナム人留学生に出演いただきました。留学への期待だけでなく、不安にも寄り添う内容にしています。これから留学を考える人が知りたいのは、良い面だけではないからです。
成城大学様の国際交流PR動画では、台本をあえて設定しませんでした。出演する学生に自由に話してもらい、普段のキャンパスで交わされている英語の会話をそのまま収めています。作り込んだ台詞よりも、視聴する高校生が自分に引き寄せて考えられる内容になりました。制作期間は2ヶ月です。
HmletJapan株式会社様のブランディング・採用向け動画は、海外から日本へ移り住む方を主な視聴者として想定した動画です。入居者や社員に出演いただき、暮らしぶりと人のつながりを描きました。言葉に頼らずとも世界観が伝わる映像表現にしています。
出演に関しては、確認しておくことがあります。肖像の使用範囲と期間、公開する国、卒業や退職をしたあとの扱いです。留学生に出演いただく場合、在学中の数年で立場が変わります。特定の個人に強く依存しない構成にしておくと、動画を長く使えます。
景色ではなく体験を。観光客向けの作り方
訪日観光客向けの動画で起こりやすいのは、美しい風景を並べただけで終わることです。景色だけでは、行く理由になりません。
観光客が知りたいのは、そこで何ができるかです。食べる、体験する、人と関わる。こうした場面が入っていると、行動につながります。景色は、その体験が起きる場所として見せると効きます。
もう1つは、たどり着き方です。海外の視聴者は、日本国内の地理を知りません。最寄りの空港からどう行くのか、どのくらいかかるのかを短くでも入れておくと、検討の材料になります。
当社の観光・レジャー分野のページでは、訪日インバウンド向けの多言語PR、宿泊施設の集客、テーマパークやレジャー施設の紹介などを扱っています。なお、自治体、観光協会、DMOが発注する地域PRや移住促進の動画は、公的機関向けの体制でお受けしています。
視聴後の導線と効果の測り方
動画を作ったあとに決めておくのは、視聴した人をどこへ送るかです。対象によって送り先が変わります。

観光客向けなら予約ページ、留学生向けなら出願や資料請求のページ、在留外国人向けなら行政の窓口や手続きの案内です。動画の最後にURLを出すだけでなく、その先のページも相手の言語になっているかを確認してください。動画は英語なのに、飛んだ先が日本語だけということが起こります。
効果の測り方については、言語別に見るのが基本です。YouTubeでは視聴者の国と地域が確認できます。狙った国から見られているか、それとも国内から見られているのかで、次の打ち手が変わります。狙った国に届いていないなら、内容ではなく配信の問題です。
インバウンド向けの動画は、置いておくだけでは海外の人に見つかりません。SNS広告やYouTube広告と組み合わせて、届けたい国に配信する前提で考えてください。当社では広告運用とYouTubeチャンネル運用も併設しており、配信まで含めてご相談いただけます。
インバウンド動画の費用と期間の目安
当社の来日者向けの事例9件では、制作期間は2ヶ月が5件で最も多く、最短は1ヶ月、最長は4ヶ月でした。最長の4ヶ月は、留学前後と留学中のアメリカで撮影した立命館大学様の案件と、3DCGとアニメーションを組み合わせた京都先端科学大学様の案件です。
尺は9件すべてが60秒以上でした。文化や制度の説明が入るぶん、短くまとめにくいのが実情です。
費用は、動画の種類によって幅があります。当社が公開している料金相場では、施設案内・学校紹介の動画が40万円から200万円です。観光分野については予算帯で整理しており、標準的な観光地PRやホテルの集客動画が50万円から99万円、訪日インバウンド向けの多言語版を同時に派生させる構成や複数拠点の撮影が100万円から299万円です。金額が動く主な要因は、撮影の拠点数、空撮の有無、多言語派生の数、シリーズ展開の有無です。海外での撮影が入ると、渡航と滞在の費用が加わります。
費用の考え方は動画制作の費用相場を解説した記事、発注から納品までの流れは依頼から納品までの流れを解説した記事で説明しています。
インバウンド動画の事例
インバウンド動画は、説明を読むより先に、まず実際の事例から検討が始まる分野です。当社の検索流入を見てもその傾向は明らかです。ここでは当社が制作した動画を対象別に紹介します。
留学生・海外の受験生に向けた動画
昭和女子大学様 ベトナムからの留学生によるインタビュー紹介動画は、ベトナムの若者に向けて制作した動画です。実際に学ぶベトナム人留学生に出演いただき、ベトナム語と日本語の二言語構成にしました。Vlogとドキュメンタリーをかけあわせた表現で、現在のキャンパスライフと将来の姿を行き来する構成にしています。制作期間は3ヶ月です。
立命館大学様 国際連携学科JDPのPR動画は、日本とアメリカの2つの大学が共同で学位を授与するプログラムを紹介した動画です。留学前、留学中、留学後の3つの時点でインタビューを行い、ワシントンD.C.でも撮影しました。制作期間は4ヶ月です。
京都先端科学大学・工学部様 インバウンド向け学部PR動画は、海外からの受験生に向けた学部紹介です。学部だけでなく京都という街全体の魅力をアニメーションと実写で描きました。ドローンが撮影飛行している様子を、別のドローンが追走して撮影するという手法にも挑戦しています。制作期間は4ヶ月です。
国際交流・海外プログラムの動画
成城大学様 国際交流PR動画は、台本を設定せず、キャンパスでの英語の会話をそのまま収めた動画です。公式YouTubeチャンネルとオープンキャンパスで活用されています。制作期間は2ヶ月です。
成城大学様 海外インターンシップ・タイ編PR動画は、東京とタイのバンコクで撮影した動画です。制作期間は2ヶ月です。成城大学様 経済学部 海外短期研修・台湾編PR動画では、学生のインタビューに加えて、教員と研修受入先企業の担当者の声を入れました。研修で得られるものを想像しやすくするためです。制作期間は2ヶ月です。
日本で暮らす人、海外の取引先に向けた動画
HmletJapan株式会社様 ブランディング・採用向け動画は、家具家電付き住居を展開する同社の動画で、海外から日本へ移り住む方を主な視聴者として想定しました。制作期間は2ヶ月です。
UMI様 英語版事業紹介動画は、既存の日本語版の英語版です。ナレーションにボイスゲートを使い、低コストで英語版を用意しました。制作期間は1ヶ月です。
荒井商事株式会社様 名古屋会場オープンPVは、海外展開に向けて英語テロップも制作した動画です。制作期間は2ヶ月です。
なお、訪日観光客向けの動画は、この9件には含まれていません。当社の観光分野の事例は国内向けが中心です。
インバウンド動画のよくある質問
インバウンド動画とは何ですか?
日本を訪れる、あるいは日本で暮らす外国人に向けて作る動画です。日本語の動画を翻訳したものではなく、相手の言語と前提知識に合わせて作り直したものを指します。観光PRのほか、留学生の募集、在留外国人向けの生活情報、海外からの移住者や採用候補者に向けた動画が含まれます。
何語に対応すべきですか?
届けたい相手がどの国にいるかから逆算します。すでに来ている人の国籍構成を見る方法と、これから増やしたい国を決める方法があり、結論が変わります。中国語は簡体字と繁体字に分かれるため、中国本土向けか台湾や香港向けかを先に決めてください。
英語版だけで足りますか?
多くの国に届く点では効率的ですが、特定の国を狙うならその国の言語のほうが効きます。母語で語られる映像は温度が違うためです。予算に限りがある場合は、英語版を作ったうえで、最も伸ばしたい国の言語を1つ足す進め方をおすすめしています。
費用はいくらかかりますか?
当社の料金相場では、施設案内・学校紹介の動画が40万円から200万円です。観光分野は予算帯で整理しており、標準的な観光地PRが50万円から99万円、多言語版を同時に派生させる構成が100万円から299万円です。撮影の拠点数、空撮の有無、多言語派生の数で金額が変わります。海外での撮影が入る場合は、渡航と滞在の費用が加わります。
観光以外にも使えますか?
使えます。当社の事例では、留学生の募集、国際交流プログラムの紹介、海外から移り住む方に向けた住居の紹介、海外の取引先に向けた英語版の事業紹介があります。日本に来る外国人は観光客だけではないため、対象を広く取って設計するほうが実態に合います。
まとめ:インバウンド動画は対象と言語を先に決める
インバウンド動画の要点は3つです。
1つ目は、対象を観光客に限定しないことです。訪日観光客、留学生、在留外国人、移住者では、伝える内容も発注する部署も変わります。当社の事例でも、半数以上は留学生や海外の受験生に向けたものでした。
2つ目は、言語を最初に決めることです。何語にするか、テロップにするかナレーションを差し替えるか。ここを決めてから撮影に入れば、あとから言語を足すのは翻訳と音声の生成で済みます。決めずに進めると、映像から作り直すことになります。
3つ目は、視聴後の送り先です。動画が外国語でも、飛んだ先のページが日本語だけでは止まってしまいます。予約、出願、問い合わせのどこへ送るのかを、動画の企画と同時に決めてください。
当社は多言語対応の動画制作に対応しており、無料多言語化サービスとAI音声生成のボイスゲートで、言語を増やす際の費用を抑える仕組みを持っています。観光分野の取り組みは観光・レジャー業界向けの動画制作ページ、学校の海外広報は学校・大学紹介の動画制作ページにまとめています。自治体の多言語対応は自治体の動画活用を解説した記事、学校紹介の設計は学校紹介動画を解説した記事、施設そのものを見せる動画は施設紹介動画を解説した記事で解説しています。
1,000社5,000本の実績