ショートドラマ制作のご相談で最初に聞かれるのは、「撮影に何日かかりますか」「費用はいくらですか」の2つです。どちらも答えはあるのですが、その前に決めておくべきことがあります。脚本です。
ショートドラマは、撮影当日ではなく、脚本を書いた時点で出来上がりが決まります。何話にするか、誰が出るか、撮影が何日になるか、費用がいくらになるか。すべて脚本の段階で決まり、撮影はそれを写し取る作業になります。
この記事では、企業がショートドラマを作るときの進め方を、企画から脚本、キャスティング、撮影、編集、配信まで順にご説明します。制作期間の目安と費用が動く要因、社員出演やまとめ撮りで費用を抑える方法、見落としやすい権利処理も、当社の制作事例とあわせて整理します。
ショートドラマは「脚本で決まる」動画

一般的な企業動画とショートドラマでは、作り方の順序が違います。
商品紹介動画や会社紹介動画では、伝えたい情報を整理し、素材を多めに撮っておいて、編集で組み立てる進め方が一般的です。撮影の時点で構成が固まりきっていなくても、編集で調整が利きます。
ショートドラマでは、この進め方が取りにくくなります。台詞、表情、場面の切り替わりが脚本で決まっているので、脚本どおりに撮ることが前提になるからです。撮り逃した場面を編集で補ったり、足りない台詞を後から入れたりする余地は小さく、撮影前に構成を固めておくことの重みが一般的な動画より大きくなります。当社の経験でいえば、ショートドラマの撮影日に困る案件の多くは、脚本の段階で決めきれていなかった案件です。
このため、ショートドラマの制作期間は前半が企画と脚本、後半が撮影と編集という配分になります。当社が制作したエプソン販売様の縦型ショートドラマ広告シリーズは、写真印刷、書類の印刷、故障時の引き取り、購入後の初期設定という4つの場面をそれぞれ1本にしたものですが、どの場面を選ぶかを決めた時点で、登場人物も、困りごとも、解決の見せ方も決まっていました。
費用も同じです。話数、出演者、撮影日数、ロケ地の数は、脚本を書いた時点で決まります。見積もりの金額を左右するのは、撮影の規模そのものではなく、その規模を決める脚本です。
ショートドラマの基礎知識
ショートドラマとは
当社では、30秒から3分程度の短い尺で展開する物語形式の動画をショートドラマとしています。登場人物がいて、起承転結があり、視聴者が感情移入することでメッセージを届けます。1本で完結するものと、シリーズとして続きものになるものがあります。
用語としての定義や配信ドラマとの違いはショートドラマとはで整理していますので、この記事では企業が制作する場合に絞ってご説明します。
一般的な動画との違い
一般的な企業動画とショートドラマの違いは、次のとおりです。
| 項目 | 一般的な企業動画 | ショートドラマ |
|---|---|---|
| 伝え方 | 情報を説明する | 物語を体験させる |
| 構成の考え方 | 必要な情報を漏れなく入れる | 物語に不要なものを削る |
| 撮影の考え方 | 素材を多めに撮り、編集で組む | 脚本どおりに撮る |
| 商品の扱い | 主役として正面から見せる | 物語の中に溶け込ませる |
| 視聴後の反応 | 理解した、参考になった | 共感した、誰かに話したくなった |
| 制作の手間 | 撮影と編集が中心 | 企画と脚本の比重が大きい |
情報を説明する動画は「なるほど」で終わりやすく、物語を体験させる動画は「共感した」という反応につながりやすい。ショートドラマが広告としても使われるのは、この反応の違いによるものです。ただし制作の手間は一般的な動画より大きくなります。
企業が使う4つの物語フォーマット
ショートドラマは、物語の型によって向く目的が変わります。当社では次の4つに整理しています。
| フォーマット | 内容 | 向く目的 |
|---|---|---|
| 連続ショートドラマ | 毎週や隔週の配信を前提にしたシリーズ。次の話が気になる引きで続けて見てもらう | フォロワーの獲得、継続的な関心の維持 |
| 単発ショートドラマ | 30秒から3分の1話完結。困っている場面から商品で解決する流れを描く | 商品やサービスの訴求、SNS広告 |
| CM連動ショートドラマ | 既存のテレビCMやWebCMの登場人物と世界観を引き継ぎ、SNS向けの尺と演出に作り直す | CMの記憶の強化、ファン化 |
| UGC風・ドキュドラマ | 一般ユーザーの投稿に見える演出や、社員・顧客の実体験にもとづく再現ドラマ | 広告感を抑えた拡散、共感 |
企業が最初に取り組みやすいのは単発ショートドラマです。1話で完結するため、SNS広告として配信しやすく、費用と期間の見通しも立てやすいからです。
ショートドラマ制作の流れと期間

制作の工程は6つです。順に見ていきます。
1. 企画。誰に、どの感情を届けるか
最初に決めるのは、見てほしい相手と、その人に残したい感情です。「何を売りたいか」から入ると、商品説明の動画になります。「視聴者にどんな気持ちになってほしいか」から入ると、物語が組み立てられます。
あわせて、配信する場所を決めます。TikTokやInstagramのリール、YouTubeショートの投稿として出すのか、広告として配信するのか。縦型で作るのか、横型も必要か。ここが決まらないと、尺も構図も決められません。
企業の担当者の方から「BtoBの商材でもショートドラマは成立しますか」と聞かれることがあります。成立します。採用向けに社員の日常を描く、導入前の課題から導入後の変化までをドラマ仕立てにする、展示会や営業の現場のあるあるを共感型で描く、といった使い方があります。
2. 脚本。尺と話数を決めてから書く
企画が固まったら脚本です。書き始める前に、尺と話数を決めます。30秒から90秒の単発か、3話から5話の短いシリーズか、5話から10話の連続ドラマか。ここで決めた話数が、そのまま撮影日数と費用に反映されます。
短い尺の脚本で難しいのは、何を書くかより、何を書かないかです。限られた秒数で物語を成立させるには、台詞も場面も削らなければなりません。商品やサービスの説明は最小限にして、物語の力で伝えるものを1つに絞ります。
当社では脚本を絵コンテに起こし、その段階でお客様に確認していただいてから撮影に入ります。撮影後に「この場面を足したい」となると撮り直しになるため、脚本と絵コンテの段階で決めきることが、結果として期間と費用を抑えます。
3. キャスティング。俳優か、社員・一般モデルか
出演者は、プロの俳優やタレント、インフルエンサー、一般モデル、自社の社員という選択肢があります。
演技の完成度を求めるなら俳優です。一方で、社員や一般モデルの起用は費用を抑える手段であると同時に、リアリティを出す手段でもあります。UGC風のドキュドラマや、採用向けの日常を描く物語では、社員が本人として出ることで、俳優には出せない説得力が生まれます。
社員が出演する場合、演技をお願いするのではなく、本人に近い役を本人が演じる設計にします。台詞を覚えて演じ切るのではなく、いつもの言い方で話してもらう場面を脚本に組み込みます。あわせて、動画をどこで、いつまで使うかを事前に本人と合意しておくことが必要です。この点は権利処理の節でご説明します。
4. 撮影。連続ものはまとめ撮りする
脚本どおりに撮るため、撮影自体は短い日数で終わることが多い工程です。連続ドラマのシリーズであれば、5話から10話を1日から2日でまとめて撮影します。話ごとに撮影日を分けると、そのたびに機材やスタッフの手配が発生するため、まとめ撮りは1話あたりの費用を下げる最も大きな要素になります。
まとめ撮りをするには、脚本の段階で全話の場面と登場人物を確定させておく必要があります。ここでも脚本が先です。
5. 編集。縦型9:16の演出ルール
縦型のショートドラマには、横型のドラマとは違う演出のルールがあります。人物のアップを中心にすること、カットの切り替えを速くすること、テロップを重視すること、音を出さずに見る視聴者を前提にすることの4つです。
縦の画面は横の画面に比べて横幅がないため、複数の人物を横に並べる構図や、風景を広く見せる構図が使いにくくなります。その分、人物の表情に寄った構図が中心になります。また、スマートフォンで音を出さずに見る人が多いため、台詞や状況はテロップでも伝わるようにします。編集では、この4つを前提に、テンポと音楽、テロップの位置を決めていきます。
縦型動画そのものの設計については縦型動画とはで詳しく整理しています。
6. 配信。投稿か、広告か
完成した動画は、SNSアカウントに投稿するか、広告として配信するかで、その後の扱いが変わります。広告として配信する場合は、媒体ごとの尺やアスペクト比の規定と、出演者の権利の範囲を確認しておく必要があります。YouTubeショートの広告として出す場合の仕様と設計はYouTubeショート動画広告の出し方でご説明しています。
制作期間の目安
当社が制作したショートドラマ・縦型動画の事例では、制作期間は2ヶ月から3ヶ月です。エプソン販売様の4本はいずれも2ヶ月、キャスティングから対応したヤマハ様の案件は3ヶ月でした。
このうち撮影は多くの場合1日から2日で終わり、残りの大半が企画・脚本と、編集・確認にあたります。工程ごとの内訳は案件によって変わりますが、当社の実務での感覚では、企画から絵コンテの確認までに全体の半分近くを使います。撮影日を早く決めたい場合ほど、脚本を先に固める必要があります。
ショートドラマの制作費用と、金額が動く要因

予算の目安
ショートドラマ・縦型動画の予算は、話数と演出の規模で大きく変わります。当社では次の4つの帯で予算設計をご提案しています。
| 予算帯 | 内容 |
|---|---|
| 49万円まで | 30秒から90秒の単発ショートドラマ。SNS広告や話題作りでの単発投入向け |
| 50万円から99万円 | 3話から5話の短尺ドラマシリーズ。SNSの連続投稿、企業アカウントの定期コンテンツ向け |
| 100万円から299万円 | 5話から10話の連続ドラマシリーズ。テレビCMと世界観を連動させたSNS用の派生ドラマ |
| 300万円から | 著名なタレントや俳優の起用、複数話の大規模シリーズ、テレビCMと連動した統合キャンペーン |
広告用の動画・CM全般の制作費用は、当社では50万円から300万円程度を目安としています。ショートドラマはこの中で、話数と出演者によって位置が決まります。
費用を動かす4つの要因
見積もりの金額を動かす要因は、主に4つです。
1つめは話数です。1話完結か、シリーズかで、脚本の分量も撮影の分量も変わります。ただし、まとめ撮りができれば話数に比例して増えるわけではありません。
2つめは出演者です。プロの俳優やタレントを起用するか、一般モデルや社員が出るかで、出演料と、それに伴うヘアメイクやスタイリストの費用が変わります。
3つめは撮影日数とロケ地です。撮影日が増えれば機材とスタッフの費用が増え、ロケ地が複数になれば移動と場所の使用料が加わります。
4つめは二次利用の範囲です。SNSに投稿するだけか、広告として配信するか、どのくらいの期間使うか。出演者との契約の範囲が広がるほど、出演料は上がります。ここは見積もりの段階で見落とされやすい要因です。
費用を抑える方法
費用を抑える方法は、上の4要因の裏返しです。
- 社員や一般モデルの起用。出演料を抑えると同時に、リアリティのある訴求になります
- 連続シリーズのまとめ撮り。5話から10話を1日から2日で撮り切り、1話あたりの費用を圧縮します
- 既存素材との組み合わせ。過去のCM素材や商品映像を引用し、新しく撮るのはドラマの部分だけにします
- AI音声の活用。ナレーションや多言語版を、スタジオ収録なしで用意します
見落としやすい権利処理と、広告に出すときの条件
実写で人物が出演するショートドラマでは、出演者の権利処理が発生します。ここで確認しておくべきことは3つです。
1つめは、二次利用の範囲です。SNSアカウントへの投稿と、広告としての配信は、出演者との契約上は別の扱いになることがあります。投稿用として撮った動画を後から広告に転用しようとして、契約の範囲外だったという事態は避けたいところです。制作前に、どこで、どのように使うかを決めておきます。
2つめは、使用期間です。出演者との契約には期間が定められていることがあり、期間を延ばす場合には契約の更新費用が発生します。長期に配信する前提であれば、最初から期間を長く取っておくほうが結果として手間が少なくなります。
3つめは、社員が出演した場合の扱いです。社員は契約書を交わす対象として意識されにくいのですが、退職後も動画が公開され続ける可能性があります。使用の範囲と期間を、社員本人と事前に合意しておくことをおすすめします。
あわせて、音楽も確認が必要です。SNSで流行している音源は、媒体によっては、投稿では使えても広告では使えない場合があります。広告として配信する前提なら、商用利用できる音源を選びます。
当社ではキャスティング会社やモデル事務所と連携し、出演者の起用提案から二次利用の範囲の交渉、SNS配信時の契約実務までを窓口にまとめて対応しています。ドラマ制作で煩雑になりがちな権利処理を一か所に集約することで、長期の配信や多用途の展開を前提とした発注にも対応できます。
ショートドラマの制作事例
当社が制作したショートドラマ・縦型動画の事例です。いずれも実写で、尺は15秒から60秒です。
| 事例 | 場面の設計 | 語り手・トーン | 制作期間 |
|---|---|---|---|
| エプソン販売様 縦型ショートドラマ広告(写真印刷版) | 写真印刷でよく起こるエラーやトラブルを、サポートサービスが解決する | 落ち着いた女性ナレーション。インフォグラフィックを多用 | 2ヶ月 |
| エプソン販売様 縦型ショートドラマ広告(ドキュメント印刷版) | 学校への提出書類を急いで印刷したいのにプリンターがエラーで使えない場面 | 落ち着いた女性ナレーション。焦る場面に安心感を与えるトーン | 2ヶ月 |
| エプソン販売様 ショート動画広告(引取料金無料版) | 故障時に追加料金なしで引き取ってもらえるサービスを、日常の場面で紹介 | 子どもがサービスの魅力を語る構成 | 2ヶ月 |
| エプソン販売様 ショート動画広告(遠隔サポート版) | 買ったばかりのプリンターの設定がわからない不安を、オペレーターの対応で解消する | 子どもがナビゲーターとして登場 | 2ヶ月 |
| ヤマハ様 コミュニケーションロボット『Charlie』紹介動画 | 仕事や人間関係のストレスを、歌って会話するロボットが緩ませてくれる場面 | キャスティングから対応。HPとYouTubeで使用 | 3ヶ月 |
エプソン販売様の4本は、同じサポートサービスを4つの場面に分けて1本ずつにした単発ショートドラマのシリーズです。困っている場面から始まり、サービスで解決するという流れは4本で共通ですが、語り手を2つのトーンに分けています。落ち着いた女性ナレーションで安心感を出した2本と、子どもが語ることで難しい内容をやわらかく伝えた2本です。同じ商品でも、場面と語り手を変えると届く相手が変わります。1本で当てにいくのではなく、複数の場面を用意する構成にしました。
ヤマハ様の案件は、ロボットが持つ不思議な魅力を物語で表現したもので、キャスティングから当社で対応しています。制作期間は3ヶ月でした。
ショートドラマ制作のよくある質問
ショートドラマの制作費はいくらですか?
話数と演出の規模で変わります。当社の予算設計では、30秒から90秒の単発ショートドラマが49万円まで、3話から5話のシリーズが50万円から99万円、5話から10話の連続ドラマが100万円から299万円、著名なタレントの起用や大規模なシリーズが300万円からが目安です。金額を動かすのは、話数、出演者、撮影日数とロケ地、二次利用の範囲の4つです。
ショートドラマを作成するにはどうすればいいですか?
企画、脚本、キャスティング、撮影、編集、配信の6工程で進めます。最初に見てほしい相手と残したい感情を決め、尺と話数を決めてから脚本を書きます。脚本を絵コンテに起こして確認したうえで撮影し、縦型の演出ルールに沿って編集します。制作会社に依頼する場合は、企画と脚本の段階から相談すると、撮影日と費用の見通しが早く立ちます。
ショートドラマの制作期間はどれくらいかかりますか?
当社の事例では2ヶ月から3ヶ月です。このうち撮影は多くの場合1日から2日で、残りは企画・脚本と、編集・確認にあたります。キャスティングから対応した案件では3ヶ月でした。
ショートドラマは社員が出演しても成立しますか?
成立します。採用向けの日常を描く物語や、実体験にもとづくドキュドラマでは、社員が本人に近い役で出ることで、俳優には出せないリアリティが生まれます。演技をお願いするのではなく、いつもの言い方で話す場面を脚本に組み込みます。使用の範囲と期間は、事前に本人と合意しておいてください。
ショートドラマは1本だけ作れば十分ですか?
目的によります。SNS広告として反応を見たい場合は、同じ商品でも場面や語り手を変えた複数本を用意し、反応を比べる設計が有効です。フォロワーの獲得が目的なら、続きが気になる連続シリーズのほうが向いています。複数本を作る場合は、まとめ撮りで1本あたりの費用を抑えられます。
BtoB企業でもショートドラマは効果がありますか?
あります。採用動画で社員の日常を描く、導入前の課題から導入後の変化までをドラマ仕立てにする、展示会や営業の現場のあるあるを共感型で描くなど、BtoBの領域でも使われています。商材の説明ではなく、担当者が抱える場面を物語にすることで、情報を説明する動画とは違う反応が得られます。
まとめ: 撮影日ではなく、脚本に時間をかける
ショートドラマは、脚本を書いた時点で出来上がりと費用が決まる動画です。話数、出演者、撮影日数、ロケ地の数は脚本で決まり、撮影はそれを写し取る作業になります。
進め方は、企画、脚本、キャスティング、撮影、編集、配信の6工程です。当社の事例では制作期間は2ヶ月から3ヶ月で、撮影は多くの場合1日から2日、残りの大半が企画・脚本と編集・確認にあたります。費用は話数、出演者、撮影日数とロケ地、二次利用の範囲で動き、社員や一般モデルの起用とまとめ撮りで抑えられます。
制作前に決めておきたいのは、どこで、いつまで、どのように使うかです。出演者の権利の範囲と使用期間は、後から広げるより最初に決めておくほうが手間がかかりません。
ショートドラマ・縦型動画の制作については、ショートドラマ・縦型の動画制作でフォーマット別の進め方と料金の目安をご案内しています。制作会社の選び方はショートドラマの制作会社おすすめ5選で整理しています。
1,000社5,000本の実績