生成AIでCMを作るには|実写と比べて消える工程・残る工程と、費用・権利・表示の確かめ方

動画制作
公開日:2026年10月30日
生成AIでCMを作るには|実写と比べて消える工程・残る工程と、費用・権利・表示の確かめ方
桔梗 素直
桔梗 素直 株式会社VIDWEB クリエイティブコミュニケーション部

生成AIで映像の全部または一部を作るCMは、「AI CM」と呼ばれることもありますが、決まった定義のある言葉ではありません。この記事では「生成AIで作るCM」と呼びます。撮影をしない作り方なら、画面に出演する人の手配やロケ地の手配、撮影日に合わせた天候や日程の調整は要らなくなります。一方で、何をどう見せるかを決める企画、社内の承認、放送局の考査(放送してよい内容かを確かめる審査)や広告媒体の審査は、実写のCMと同じように残ります。ナレーションと音楽も、AIの声や音楽を使うかどうかにかかわらず、用意して確かめる工程が残ります。生成した映像を選び直す手間、AIが苦手な細部を人の手で補う作業、既存の作品に似ていないかの確認は、むしろ増えます。

当社は、生成AIを使った映像を自主制作し、実績ページで公開しています。生成AIの映像の作品(15秒以内)の制作期間は1〜2週間でした。ただし自主制作のため、お客様の社内の確認や考査の期間は含まれていません。

当社にいただく、AIでCMを作りたいというご相談では、現時点では価格から入る方が多く、新しい技術に興味を持って、あえて生成AIを選ぶ方もいます。

この記事では、生成AIで作るCMの作り方を4つに分けたうえで、実写のCMと比べて消える工程・残る工程・増える工程を整理します。そのうえで、費用と期間の決まり方、修正の扱い、権利と、AIで作ったことの表示で確かめることを、文化庁の資料などの公的な情報と、当社の制作のポイントをもとにご説明します。

生成AIで作るCMには、主に4つの作り方がある

ひとくちに生成AIで作るCMといっても、AIで作る範囲は作品によって違います。当社では、主に次の4つに分けて整理しています。

作り方AIで作るもの人が作る・撮るもの
全編を生成AIで作る人物や背景を含む映像の全体企画、基準の画を決めること、生成した映像の選定、編集、画面の文字、ナレーションと音楽の手配と確認
一部をAIで作り、実写や3DCGと組み合わせる撮影では作れない風景や世界観のカット実在の商品や人の撮影、3DCG、全体の編集
AIで作った架空の人物を出演させる(「AIタレント」と呼ぶ会社もある)人物の見た目(声もAIで作ることがある)人物像の設定、生成した人物の調整、そのほかの撮影や編集
AIで作った話し手が説明する(当社では「AIアバター」と呼ぶ)話し手の映像(声もAIの音声にできる)台本、画面の構成、編集(本人をアバターにするなら本人の動画の撮影、人の声を使うならその声の収録)

全編をAIで作る作り方は、撮影では作れない世界観や、まだない未来の風景を短い長さ(尺)で見せる用途に向いています。実在の商品を正確に見せたい場面があるなら、その場面だけを実写や3DCGで作る組み合わせになります。話し手が画面で説明する動画なら、AIで作った話し手(当社のサービス名ではAIアバター)で作れます。本人をもとにしないアバターで、声にAIの音声を使うなら、撮影もナレーションの収録も要りません。社長や社員本人をアバターにする場合は、本人の動画の撮影が要ります。声は、本人やプロのナレーターの声にすることもできます。この記事では1本のCMを作る場合を扱います。広告用の動画をAIで何本も作り分けて運用する使い方は、AI動画広告は実務でどこまで使えるのか|自動生成の考え方と今後の展望でご説明しています。

公表された、生成AIで作るCMの事例。AIで作った部分と、人が作った部分

AIで作ったCMは、すでにテレビで放送されたものもあります。各社の発表をもとに、AIで作った部分と、人が作った部分・撮ったものを分けると次のようになります(2026年10月時点で当社が整理)。

CM時期AIで作った部分人が作った部分・撮ったもの
伊藤園「お~いお茶 カテキン緑茶」のテレビCM2023年9月の商品のリニューアル発売に合わせて実在しないタレントと背景生成したあと、デザイナーやクリエイターが微調整
タケモトピアノのテレビCM2024年8月1日から関西圏で放映4人のダンサー(AIと実写を組み合わせて生成)振り付け、衣装、ヘアメイク、撮影、照明などのスタッフが参加
サントリー「GREEN DA・KA・RA」のテレビCM(テレビ朝日の「AIクリエイティブスタジオ」が制作)2026年8月9日から放送映像の全編テロップ、音声、ナレーション(AIは使っていない)

伊藤園とタケモトピアノの事例は、制作に加わったAI model株式会社の発表、サントリーの事例はテレビ朝日の発表によります。テレビCMではありませんが、パルコは2023年のホリデーシーズンの広告で、人物から背景、ナレーション、音楽まで生成AIで作ったと発表しています。

表の3つの事例は、どれも人の作業を組み合わせていますが、その中身は事例ごとに違います。映像の全編をAIで作ったテレビ朝日の事例でも、テロップ、音声、ナレーションにはAIを使っていません。

当社の事例

当社にも、生成AIを使った依頼の案件はあります。ただ、まだ数は多くないため、公開している生成AIの事例も、ほとんどが表現の幅を確かめるために自主制作したものです。依頼の案件でAIを部分的に使ったものはいくつかあり、その代表が株式会社JTB様のカーボンニュートラルブランディング動画です。CMではなくプロモーションビデオで、AIが未来の映像を描き出すという筋立てですが、これはSF的な演出です。実際の映像は従来のCG制作をベースに、AI技術を一部取り入れて作り、国土交通省が主導する3D都市モデル「PLATEAU」も一部活用しました。

当社の自主制作では、実写映画のような対話のシーン(ラスト・ワルツはAIと)や、近未来の都市をバイクが走るアニメーション(サイバーパンク・ライド2)を、15秒以内の映像にしています。どちらも特定の依頼の案件ではなく、生成AIでどこまで表現できるかを確かめるために作った作品です。

実写のCMと比べて、消える工程・残る工程・増える工程

図1 実写のCMと比べて、生成AIで作るCMで消える工程・残る工程・増える工程

実写のCMの工程と、全編を生成AIで作る場合を、当社の整理で並べると次のようになります。

工程実写のCM全編を生成AIで作るCM
企画・絵コンテ要る残る。加えて、作品全体のトーンを決める基準の画を先に作って確かめる
画面に出演する人(タレント・モデル・社員など)の手配と契約要る要らない。ただし、提供している会社から、AIで作った架空の人物の提供を受けて使うなら、使える範囲などについてその会社との取り決めが残る。声に人を起用するなら、ナレーターの手配も残る
ロケ地の手配・撮影要る。天候や、出演する人の日程に左右される撮影の代わりに、映像を生成して選ぶ工程になる
編集・CG要る残る。画面の中の文字や細かな情報表示など、AIが苦手な部分を人の手で補う
ナレーション・音楽要る残る。AIで作った声や音楽を使う場合も、権利と表示を確かめる
社内の確認・修正要る残る。カットごとの部分的な修正がしにくいことがある
AIの生成物が既存の作品に似ていないかの確認・生成の記録対象外(AIの生成物を使わないため)加わる
放送局の考査・広告媒体の審査要る残る

消えるのは、撮影に結びついた工程

撮影をしない作り方では、画面に出演する人の手配、ロケ地、撮影の機材とスタッフ、撮影日に合わせた天候や日程の調整が要らなくなります。当社のAIアバターのサンプルも、実写の撮影やロケを行わずに作っています。

ただし、要らなくなるのは撮影に結びついたものだけです。ナレーションに人の声を使うなら、ナレーターの手配と収録は残ります。提供している会社から、AIで作った架空の人物の提供を受けて使う場合は、使える範囲などについて、その会社との取り決めが要ります。

残るのは、何を見せるかを決める工程と、確かめる工程

何をどう見せるかを決める企画と、社内の承認は、AIで作る場合も同じように必要です。テレビCMなら放送局の考査、YouTube広告などのネット広告なら広告媒体の審査も残ります。テレビCMの考査については、テレビCMの費用はいくら?放映料・制作費・出演料の決まり方と、少ない予算での始め方でご説明しています。

増えるのは、生成のやり直しと、人の手による仕上げ

当社の自主制作の作品「サイバーパンク・ライド2」では、作り込んだ世界観とスピード感を、一度の生成だけでは両立できませんでした。そこで、細かな絵柄が得意なAIと動きが得意なAIを使い分け、その間をつなぐ演出を重ねました。人物や部屋の形がカットごとに変わらないよう、先に作品全体のトーンを決める1枚の静止画を作り、そこから各カットへ広げた作品もあります。AIだけでは難しい、画面に映るモニターの情報表示のような細かな部分を、従来のモーショングラフィックス(文字や図形を動かす映像)で補った作品もあります。

当社は、生成AIを使えば手軽に量産できるわけではなく、演出の設計と人の手による仕上げがあって、CMに使える映像になると考えています。加えて、AIで作った映像は、使う前に既存の作品に似ていないかを確かめる必要があり、生成の過程を記録しておくことも望まれます(後の「権利」の章でご説明します)。

なお、ご相談の内容によっては、当社からAI以外の作り方をおすすめすることもあります。どんな場合かは、後の「生成AIで作るCMが向く場合、向かない場合」の章でご説明します。

生成AIで作るCMの費用はどう決まるか

当社は、AIで作るから必ず安くなるとは考えていません。撮影に結びついた費用は減りますが、生成と仕上げの作業が加わるためです。当社がご案内している動画制作料金の一般的な内訳に沿って、生成AIで作るCMで変わるところを整理すると、次のようになります。

料金の内訳(一般的な例)中身全編を生成AIで作る場合
企画・構成費コンセプトやストーリーを練る費用、ディレクションや進行管理の費用残る
撮影技術費カメラマンなどの技術スタッフ、機材、キャスト、ヘアメイク、スタイリスト、収録スタジオ、美術撮影にかかる分はかからない。ただし、人のナレーターを起用するなら収録スタジオが、提供している会社からAIで作った架空の人物の提供を受けて使うなら、その会社との取り決めが残る
編集技術費動画の編集、ナレーション、素材、音楽効果残る。生成した映像の選定と、人の手で補う作業が加わる
その他の費用撮影場所や人数による交通費・宿泊費・車両費撮影のための分はかからない

AIを使った動画の費用は、主に次の要素で変わります。

  • 尺とカットの数。カットが増えるほど、生成と調整の回数が増えます
  • 人物やキャラクターを、カットをまたいで同じ見た目にそろえるか
  • 実写・3DCG・既存の素材と組み合わせるか
  • 人の手で補う部分の量
  • ナレーションと言語の数

金額の目安として、当社では、一般的な事例をもとにした広告用の動画・CMの料金の相場を50万〜300万円とご案内しています。予算の帯ごとの例では、49万円までの帯に「AI」を、300万円からの帯に「TVCM」を挙げています。ただし、予算別に公開している事例に、生成AIで作ったCMはありません。AIを一部に取り入れた依頼の案件には、JTB様のブランディング動画(100万〜299万円の帯)があります。話し手が画面で説明する動画をAIアバターで作る場合、当社のAIアバター作成サービスの基本料金は35万円から(税抜)です。

制作費とは別に、テレビCMなら放映料、ネット広告なら配信の費用がかかります。YouTube広告の場合の費用の組み立ては、YouTube広告の費用はいくら?広告費・運用代行費・制作費の内訳と、月の予算の決め方でご説明しています。

何をAIで見せたいか、どこで使うかが決まっていれば、当社では、生成AIで作る部分と実写や3DCGで作る部分の分け方と、概算をご提案できます。制作されたい動画の詳細をお伺いしてから、3営業日ほどでお見積もりをお出ししています。

生成AIで作るCMの制作期間はどう変わるか

当社の自主制作では、生成AIの映像(15秒以内)が1〜2週間、AIアバターのサンプル(15秒以内)が3〜7日でした。一方、当社の実績ページで、動画の種類に「WebCM・テレビCM動画」を含む依頼の案件18件(当社の自主制作を除く)では、制作期間の中央値が2ヶ月で、短いもので2週間、長いもので4ヶ月でした。

この2つは、そのまま比べられません。自主制作のサンプルは15秒以内で、お客様の社内の確認もありません。当社の担当は、生成AIの映像が構成と編集、AIアバターのサンプルが編集だけです。依頼の18件には、60秒以上のものや、撮影を含むものも入っています。当社は、AIで撮影の工程が短くなっても、企画の承認や初稿の確認、考査にかかる時間は、実写のCMと同じように見込んでおくべきだと考えています。

当社では、ご依頼のAI動画の期間は、尺と、実写や3DCGとの組み合わせによって変わるとご案内しています。

生成AIで作るCMの修正はどう扱われるか

生成AIで作った映像は、細かな微調整が難しく、「このカットだけ差し替える」「少しだけトーンを変える」といった修正に対応できない場合があります。複数のカットを一度に生成する作り方は、カットのつながりが滑らかになる一方で、一部だけを直そうとすると全体の整合が崩れやすくなります。

直したいカットがある場合、当社では、そのカットを生成し直すか、編集で直して対応しています。ただし、生成し直すたびに別の映像が出てくるため、指摘された箇所だけを直すことは苦手です。

そのため当社では、作品全体のトーンを決める基準の画や、構成の段階で方向を確かめていただき、段階を追って進めています。完成してから細部を直そうとしても、その修正に対応できず、作り直しになることもあります。発注の前に、どの段階で何を確かめ、どこからが作り直しになるかを決めておくことが大切です。生成と修正の仕組みは、動画生成AIのおすすめ比較。無料でできることと商用利用の注意点を映像制作会社が解説でも整理しています。

生成AIで作るCMの権利で確かめること

AIで作った映像の権利は、文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会が2024年3月にまとめた「AIと著作権に関する考え方について」と、文化庁が同年7月に公表した「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」で整理されています(文化庁「AIと著作権について」のページ)。「考え方」は、それ自体が法的な拘束力を持つものではないと断ったうえで、公表した時点(2024年3月)の考え方を示しています。

AIで作った部分は著作物になるか

「考え方」は、AIは法的な人格を持たないため、著作物を「創作する者」には当たらないとしています。生成AIへの指示が、表現に至らないアイデアにとどまる場合には、生成物は著作物と認められないと考えられています。著作物と認められるかは、単なる労力ではなく、人の創作的な関わりがどの程度積み重なっているかを総合的に見て判断されると考えられています。生成をやり直した回数が多いこと自体や、複数の生成物から単に選ぶこと自体は、この判断に影響しないとされています。一方で、創作的な表現を具体的に示す指示と組み合わせ、生成物を確かめて指示を直しながら生成を繰り返す場合には、著作物と認められることもあると考えられています。人が創作的な加筆や修正を加えた部分は、通常、著作物と認められると考えられています。作品の一部が著作物と認められなくても、人が作った部分まで否定されるわけではありません。

完成した映像の著作権を発注側に譲る形の契約にする場合も、AIだけで作った部分は著作物と認められないことがあります。当社は、その部分をどう扱うかを契約で決めておくのが安全だと考えています。

知らないうちに既存の作品に似てしまう場合

生成物が既存の著作物と似ていて(類似性)、既存の著作物をもとにしている(依拠性)と認められれば、著作権の侵害になりえます。「考え方」によると、AIの学習段階でその著作物を学習していた場合、その著作物に似た生成物ができたときは、AIの利用者が既存の著作物を知らなくても、通常、依拠性があったと推認され、侵害になりうるとされています。

ただし「考え方」は、学習に使われた著作物の創作的表現が、生成や利用の段階では生成されないといえる状態が技術的に担保されている場合もありうるとしています(たとえば、学習に使った著作物と創作的表現が共通する生成物が出力されないよう、出力の段階でフィルタリングを行っている場合)。そうした事情から、出力される状態になっていないと法的に評価できる場合には、利用者がその事情を主張することで、学習していた場合でも依拠性がないと判断されることはありうるとされています。この点には、そうした措置があっても依拠性は否定されず、利用者の過失が否定されるにとどまるという意見もあったと、注に書かれています。

侵害の差止めは、故意や過失がなくても請求できるとされています。当社は、AIで作ったCMが既存の作品の著作権を侵害していると判断された場合、放送や配信を止めて差し替えることになりうると考えています。

一方で、作風や画風といったアイデアが似ているだけで、表現が似ていない生成物は、侵害にならないとされています。注意が要るのは、参考にした他社のCMや作品をそのままAIに入力して、似た映像を作らせる使い方です。チェックリストは、既存の著作物と似たものを生成させる目的で入力する場合は、権利者の許諾が必要になることがあるとしています。そのうえで、生成物を使う前に既存の著作物と似ていないかを確かめることが必要だとし、既存の著作物をもとにしていない(依拠性がない)ことを説明できるよう、生成に使った指示文(プロンプト)などの生成の過程を確かめられる状態にしておくことが望ましいとしています。

実在しない人物と、実在の人物

AIで作った人物が実在する人に似ていると、本人と誤解されるおそれがあります。当社のAIポリシーでは、特定の個人や団体を欺くことを意図したディープフェイク(実在の人の顔や声をAIで本物らしく作り替えたもの)やなりすましのコンテンツを作ることを禁止しています。また、重要なクリエイティブのコンテンツや意思決定を伴うAI生成物は、公開や実行の前に、必ず人の目で最終確認(編集、事実確認、倫理チェック)を行うと定めています。社長や社員をAIアバターにする場合の本人の同意や退職後の扱いは、AIアバターの危険性とは?企業が確認すべき法律・利用規約・事業者の見分け方でご説明しています。

契約で確かめておくこと

生成AIで作るCMを発注するときは、少なくとも次の点を見積もりと契約で確かめておくと安心です。

  • AIで作る範囲(全編か、一部か、人物だけか)
  • 使う生成AIのツールと、その利用規約(商用利用の可否や表示の条件)
  • 完成した映像の権利をどう扱うか(AIだけで作った部分を含めて)
  • 生成に使った指示文や途中の生成物を記録として残すか、受け渡すか
  • 既存の作品に似たものが見つかったときに、誰がどう差し替えるか
  • AIで作ったことを表示するか

当社では、案件ごとに、使う生成AIのツールと利用プラン、権利処理の根拠を整理して、お客様にお示ししています。契約書全体の決め方は、動画制作の契約書で発注者が確認すべき項目|修正・使用範囲・著作権の決め方とチェックリストにまとめています。

AIで作ったことをCMに表示するか

2026年10月時点で当社が確かめた範囲では、日本の法令に、AIで作ったことの表示を広告全般に一律に義務づけるものは見当たりませんでした。表示についての主な決まりと、見る側の受け止めは次のとおりです。

決まり・資料内容
YouTubeのヘルプAIで大幅に改変したり、写真のようにリアルなコンテンツを作ったりした場合は、クリエイターに開示を求めています。動画の中心となる音楽をAIで作ることも、開示が要るものに挙げています。AIで作った非現実的なコンテンツや、リアルなコンテンツへの軽微な編集は開示が要らないとしています(広告として配信する動画への適用は、このヘルプには書かれていません)
Google広告のポリシー当社が確かめたポリシーで、合成・改変したコンテンツの開示を義務づけているのは選挙広告です。広告全般では、メディアに手を加えて利用者をだましたり、誤解させたりすることを禁じています
日本民間放送連盟の放送基準生成AIについての条文はありません。広告の表現の章で「視聴者に錯誤を起こさせるような表現をしてはならない」としています
経済産業省・総務省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月)拘束力のない指針です。関係者への情報提供の例として、AIを利用しているという事実と、活用している範囲を挙げています

見る側の受け止めについては、日本インタラクティブ広告協会(JIAA)が2026年8月に公表した調査(パソコンやスマートフォンなどでインターネットをほぼ毎日使う、全国の15〜69歳が対象)があります。今の生成AI広告への印象を聞いた設問では、「本物らしさがない/不自然」が26.4%で最も多く、これを含むネガティブなイメージが57.6%で、ポジティブなイメージを上回りました。受け入れやすくする条件を聞いた別の設問では、「生成AIを活用していることが明記される」が37.6%で最も多い回答でした。

当社のAIポリシーでは、AIで生成したコンテンツを外部に提供する際は、学習データの権利の処理状況を確かめ、必要に応じてAIで生成したものである旨の開示、または利用規約の遵守を徹底するとしています。当社のAI動画の制作でも、AIで生成した動画である旨の表示が必要な場合は、あわせてご相談しています。当社は、法令で決まっていなくても、AIで作ったことを表示するかどうかを、発注の段階で決めておくことをおすすめしています。

生成AIで作るCMが向く場合、向かない場合

図2 生成AIで作るCMが向く場合、向かない場合の判断

当社は、全編をAIで作るか、一部だけAIで作るか、AIを使わずに作るかは、主に次の3つの問いで決まると考えています。

  1. 実在の商品や現場の形を、正確に見せる場面があるか。あるなら、その場面は実写の撮影や、CADデータ(製品の設計図のデータ)からの3DCGで作ります。生成AIは、背景や世界観の表現に使う組み合わせになります。ほかの場面は、次の問いで決めます
  2. カット単位の細かな修正を何度も重ねる前提か。そうなら、アニメーションや実写で作るほうが確実です
  3. 撮影では作れない世界観を見せたいのか、人が話して説明したいのか。前者なら生成AIで(問い1の場面がなければ全編を、あれば残りの場面を)、後者ならAIアバターで作る作り方が合います

この3つの問いとは別に、AIも選択肢の一つとして検討されているご相談では、内容によって、当社からAI以外の作り方をおすすめすることがあります。たとえば、ストック素材(あらかじめ撮影・制作されて提供されている写真や映像の素材)で代用できる場合や、信頼性が問われる内容の場合です。

生成AIの映像は、見る人に不自然だと受け取られることもあります。表示の章でふれたJIAAの調査でも、今の生成AI広告への印象で最も多かったのは「本物らしさがない/不自然」でした。当社の自主制作では、自然すぎる表現は単なる映像素材のように見えてしまうため、あえて現実ではありえない設定にした作品や、多くの人に自然に受け入れられるよう、くせのない絵柄を選んだ作品があります。当社は、どこにAIを使うかを、映像の題材とあわせて決めるべきだと考えています。

生成AIで作るCMを発注する前に確かめること

ここまでの内容を、発注の前に確かめることとしてまとめます。

確かめること決めておかないと起きやすいこと
AIで作る範囲(全編・一部・人物だけ・話し手だけ)実在の商品を正確に見せられず、あとから撮影を足すことがある
基準の画と構成を確かめる段階完成してから方向を変えると、作り直しになることがある
修正の範囲と、作り直しになる境目部分的な修正のつもりが、作り直しになることがある
使う生成AIのツールと利用規約商用利用や表示の条件を満たさないまま公開してしまうことがある
権利の扱いと、生成の記録の受け渡し似た作品が見つかったときに、説明や差し替えができないことがある
AIで作ったことの表示公開してから、見る人の受け止めに対応することがある
放送局の考査・広告媒体の審査の日程公開日に間に合わないことがある

当社では、生成AIで作る部分と、実写や3DCGで作る部分の分け方からご相談をお受けしています。AIを使った動画の制作は、AI動画制作・AI映像制作でご案内しています。テレビCMやWebCMとしての制作は、WebCM・テレビCM動画制作もご覧ください。

生成AIで作るCMについてよくある質問

生成AIで作られたCMにはどんなものがありますか?

伊藤園の「お~いお茶 カテキン緑茶」(2023年。AIで作った架空の人物が出演)、タケモトピアノ(2024年。AIと実写を組み合わせたダンサー)、テレビ朝日のAIクリエイティブスタジオが制作したサントリー「GREEN DA・KA・RA」(2026年。映像の全編を生成AIで制作)などが、テレビCMとして発表されています。いずれも人の作業が入っていますが、その中身は、生成したあとの微調整(伊藤園)、撮影などのスタッフの参加(タケモトピアノ)、AIを使わないテロップやナレーション(サントリー)と、事例ごとに違います。

生成AIのCMは気持ち悪いと思われませんか?

生成AIのCMの受け取り方は、人によって違います。JIAAが2026年に公表した、インターネットをほぼ毎日使う15〜69歳への調査では、今の生成AI広告への印象として、「本物らしさがない/不自然」が26.4%で最も多く、これを含むネガティブなイメージが57.6%でした。別の設問では、受け入れやすくする条件として「生成AIを活用していることが明記される」が37.6%で最も多く挙がっています。AIを使う範囲と、AIで作ったことの表示を、企画の段階で決めておくことが大切です。

AIのCMに出演している人物は実在の俳優ですか?

伊藤園のテレビCMに出演したのは、AIで作った架空の人物です。制作に加わったAI model株式会社は、こうした人物を「AIタレント」と呼んでいます。AIタレントやAIモデルという呼び名に、決まった定義はありません。一方で、テレビ朝日が制作したサントリーのCMのように、映像はAIで作り、ナレーションはアナウンサーが担当した例もあります。

生成AIで作るCMの費用は、実写より安くなりますか?

全編を生成AIで作る場合、撮影の機材やスタッフ、ロケの交通費など、撮影に結びついた費用はかからなくなります。一方で、企画・構成費は残り、生成した映像を選ぶ作業や、AIが苦手な部分を人の手で補う作業が加わります。尺とカットの数、人物をそろえるか、実写や3DCGと組み合わせるかで変わるため、当社は一概に安くなるとは考えていません。

生成AIで作るCMの著作権は、誰のものになりますか?

文化審議会の小委員会がまとめた「AIと著作権に関する考え方について」では、AIで作ったものが著作物と認められる場合も、AI自身は著作者にならず、AIを使って著作物を創作した人が著作者になるとされています。AIへの指示が表現に至らないアイデアにとどまる場合、生成物は著作物と認められないと考えられています。人が創作的な加筆や修正を加えた部分は、通常、著作物と認められると考えられています。当社は、完成した映像の著作権を発注側と制作会社のどちらが持つか、AIだけで作った部分をどう扱うかを、発注の契約で決めておくのが安全だと考えています。

まとめ: 生成AIで作るCMは「撮らない」ぶん、確かめることが増える

生成AIで作るCMは、撮影をしない作り方なら、画面に出演する人・ロケ・機材の手配が要らなくなる一方で、企画、社内の承認、考査、ナレーションと音楽は残ります。生成のやり直しと人の手による仕上げ、既存の作品に似ていないかの確認と生成の記録は、むしろ増えます。

費用と期間は「AIだから安い・早い」で決めず、AIで作る範囲、確かめる段階と修正の境目、権利と表示の扱いを、発注の前に決めておきましょう。実在の商品を正確に見せる場面は実写や3DCGで、撮影では作れない世界観はAIで、というように組み合わせると、AIの強みを生かしやすくなります。

桔梗 素直
桔梗 素直 株式会社VIDWEB クリエイティブコミュニケーション部

大学卒業後大手保険代理店に5年間勤務。その後動画市場の将来性を感じ、オンラインスクールにて動画マーケティングや制作方法を学び、VIDWEBへ入社。丁寧親切且つ的確なコンサルテーションと提案に定評があり、クライアントが動画制作によって抱えている課題を親身になって日々解決している。

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