動画を作ることになって、まず企画書を書くように言われた。この記事にたどり着いた方の多くは、そういう状況ではないでしょうか。
私たちは動画制作のご依頼を受ける側ですが、その立場から先にお伝えしておきたいことがあります。発注する側の企画書に、細かい構成や絵コンテは必要ありません。それは受注後に私たち制作会社が作るものだからです。
発注側の企画書に必要なのは、社内で企画を通すために足りる情報と、制作会社が見積もりを出すために足りる情報です。この2つがそろっていれば十分で、それ以上書き込んでも、打ち合わせで結局作り直すことになります。
この記事では、その2つを満たす項目を整理し、登録不要でダウンロードできるテンプレートをお渡しします。あわせて、多くの企画書がつまずく予算欄とスケジュール欄の書き方、そして社内の決裁で聞かれることへの答え方までまとめます。
動画制作の企画書に書くべき項目
まず、何を書けばよいかです。項目は多ければよいというものではありません。埋まらない欄が並んだ企画書は、かえって検討不足に見えます。

発注側の企画書に必要な項目
| 項目 | 何を書くか | 書き方のポイント |
|---|---|---|
| 背景・課題 | なぜ今この動画が必要になったか | 課題が複数あるなら、動画で解けるものだけを書きます |
| 目的 | この動画で何を達成したいか | 1つに絞ります。複数書くと構成が散ります |
| ターゲット | 誰に見せるか | 役職と検討段階まで書くと構成が決まりやすくなります |
| 一番伝えたいこと | 見た人の記憶に何を残すか | 1本につき1つ。2つ以上あると全部が薄まります |
| 配信先・使用場面 | どこで流すか | 場面ごとに条件が違います(音の有無、尺、画面比率) |
| 動画の長さ | 何秒・何分か | 複数の尺が必要なら、長い方を作って切り出す前提で |
| 表現方法 | 実写か、アニメーションか、3DCGか | 費用と期間が大きく変わる項目です |
| 参考動画 | 良いと思った動画のURL | 言葉より速く伝わります。理由を1行添えると精度が上がります |
| 予算 | いくらで作るか | 金額だけでなく根拠を1行 |
| スケジュール | いつまでに必要か | 公開日から逆算します |
| 成果指標 | 何をもって成功とするか | 目的と対応させます |
このうち、目的、ターゲット、配信先、一番伝えたいことの4つは、埋まっていないと見積もりが出せません。逆に言えば、この4つさえ決まっていれば、残りは打ち合わせで一緒に詰められます。
企画書と、制作会社が聞くことは表裏の関係
私たちが初回の打ち合わせで伺うのも、ほぼ同じ項目です。社内向けに整理する企画書と、制作会社に渡す情報は、宛先が違うだけで中身は重なります。
ですので、社内用と発注用で別々の資料を作る必要はありません。1つ作って、決裁の場では要点だけを見せ、制作会社にはワークシートごと渡す。この使い分けが手間が少なくて済みます。
企画書テンプレート(無料・登録不要)
上記の項目を形にしたテンプレートをご用意しました。メールアドレスの登録は不要です。

3つのシートの役割
- 決裁用サマリ:1枚に収まる要約版です。決裁者が見るのはここだけ、という前提で作っています。5つのブロック(何のために作るか、誰に何を、どこでどう使うか、いくらいつまでに、どう評価するか)で構成しています
- 検討ワークシート:社内で検討し、制作会社に渡すための詳細版です。20項目に、記入例と書き方のポイントを添えています
- 構成表(絵コンテ):動画の流れを1カットずつ書き出す表です。制作会社に依頼する場合は必須ではありませんが、自社で撮影する場合や、伝えたい流れがある場合に使います
決裁の場に詳細版を持ち込むと、細かい欄に議論が逸れて本題が進まないことがあります。1枚版と詳細版を分けているのはそのためです。
埋まらない欄には「未定」と書く
全部の欄を埋める必要はありません。埋まらない欄に「未定」と書いておけば、そこがそのまま打ち合わせの論点になります。空欄のまま渡されるより、未定と書いてあるほうが私たちも準備ができます。
なお、このテンプレートは記事の読者向けに作成した汎用のひな形で、私たちが実際のご相談でお伺いしているヒアリング項目とは別のものです。
予算欄の書き方。相場と紐づけて根拠を1行添える
企画書でいちばん書きにくいのが予算欄です。金額を書くには相場を知る必要があり、相場を知るには見積もりを取る必要があり、見積もりを取るには社内の了解が要る。この順番で止まってしまう方が多くいます。
私たちは制作費を公開しているので、その数字をそのまま根拠に使えます。

種類ごとの相場の見方
| 動画の種類 | 制作料金の目安 |
|---|---|
| 会社紹介・企業案内の動画 | 50万円〜400万円 |
| 広告用の動画・CM | 50万円〜300万円 |
| 展示会向け動画 | 40万円〜200万円 |
| 新卒・中途採用向けの動画 | 50万円〜200万円 |
| 商品説明・サービス紹介動画 | 30万円〜100万円 |
| 教育・研修用の動画 | 20万円〜100万円 |
| お客様の声インタビュー動画 | 20万円〜50万円 |
金額に幅があるのは、撮影の規模で費用が動くためです。撮影日数、スタッフの人数、出演者、ロケーション、CGやアニメーションの有無。この5つがレンジのどのあたりに着地するかを決めます。
予算欄には、金額だけでなく次のように根拠を添えます。
> 予算:80万円。商品説明・サービス紹介動画の相場30万円〜100万円のうち、撮影1日・出演者は社員・CGなしの条件から中位帯を想定。 >
この1行があるだけで、決裁の場で「なぜその金額か」を聞かれたときに答えられます。より詳しい費用の内訳は動画制作の費用と相場の記事で解説しています。
広告を出す場合は、制作費と配信費を分ける
見落とされやすい点です。制作費は動画を作る費用であって、その動画を広告として配信する費用は含まれていません。
自社サイトやSNSに置くだけなら追加費用はかかりませんが、動画広告として配信するなら、制作費とは別に配信費の予算が必要です。企画書の段階で行を分けておくと、公開後に配信費が確保できないという事態を避けられます。
スケジュール欄の書き方。公開日から逆算する
スケジュール欄は、着手日から足していくのではなく、公開日から引いていきます。
目安は2か月半。そこに社内確認の時間が加わる
企画から納品まで、おおむね2か月半が目安です。ただしこれは制作側の工程の話で、実際にはここに社内の確認と修正の時間が加わります。確認の階層が多い組織ほど、この部分が延びます。
展示会や発表会など公開日が動かせない場合は、逆算して余裕を持たせてください。3か月から4か月前の着手をお勧めしています。
期間が延びる要因
- 出演者の調整:社員に出てもらう場合、撮影日程の確保に時間がかかることがあります
- 撮影拠点の数:複数の拠点や工場を回る場合、移動と調整の日数が加わります
- CGやアニメーション:撮影を伴わなくても、制作工数がかかるぶん期間は長くなります
- 社内確認の回数:修正の往復が増えるほど延びます。企画書の段階で確認者と決裁者を書いておくと、この見積もりが立てやすくなります
工程の詳細は動画制作の依頼から納品までの流れで解説しています。
社内で企画を通すために
ここからは、書き方ではなく通し方の話です。
決裁者から聞かれることは、だいたい決まっている
私たちが発注担当者の方から相談を受けるなかで、社内で聞かれたという質問はいくつかの型に収まります。あらかじめ答えを用意しておくと、差し戻しが減ります。
| 聞かれること | 答え方の方向 |
|---|---|
| なぜ動画なのか。資料やWebページではだめなのか | 動きや空気感が伝わらないと成立しない内容かどうかで答えます。文章で足りるなら文章のほうが安いです |
| 内製ではだめなのか | 社内共有や頻繁に差し替える情報なら内製が向きます。対外的に長く使うもの、企業の印象を左右するものは外注のほうが結果的に安く済むことが多いです |
| 効果はどう測るのか | 目的に対応した指標を1つか2つ。再生数だけを置くと、目的と関係のない数字を追うことになります |
| 前に作った動画はどうなったのか | 過去に制作した動画があるなら、使われている場面と使われなくなった理由を先に整理しておきます |
| その動画は何年使えるのか | 数値や年号を映像に焼き込まない設計にすれば、部分的な差し替えで長く使えます |
内製か外注かの判断は外注と内製の記事で、判断の基準を詳しく整理しています。
使い先を並べると、金額の根拠になる
決裁で効くのは、1本の動画を何回使うかです。
展示会で流し、商談で見せ、採用説明会でも使い、Webサイトにも置く。使い先が4つあるなら、1回あたりの費用はそのぶん下がります。企画書の使用場面の欄は、単なる情報ではなく金額の根拠として書いてください。
ただし、あとから使い先を足すのは簡単ではありません。撮影で押さえる素材が変わるためです。企画の段階で洗い出しておくことが、そのまま費用対効果につながります。
最初の1本は、使い先の多いものから
社内で前例がない状態で、いきなり大きな企画を通すのは大変です。
使い先が多く、効果を説明しやすい動画から着手して、実績を作ってから本数を増やす。この順番のほうが通りやすく、私たちがご相談を受けるなかでも、事業部ごと、会場ごとに積み増していく進め方が続いています。
構成案・構成表・絵コンテの作り方
企画書が通ったあとの話です。似た言葉が並ぶので、まず整理します。
| 呼び方 | 何を指すか | 発注する場合 |
|---|---|---|
| 構成案 | 動画全体の流れを大まかに示したもの | 箇条書き程度で十分。なくても構いません |
| 構成表 | 流れをカットごとに表にしたもの。時間、画面、ナレーション、テロップの列を持つ | 制作会社が作ります |
| 絵コンテ | 構成表の画面欄を、絵で描いたもの | 制作会社が作ります |
| 台本 | ナレーションやセリフを文章として確定させたもの | 制作会社が作ります |
発注する場合、絵コンテは自分で作らなくてよい
制作会社に依頼する場合、構成表も絵コンテも台本も、受注後に制作会社が作ります。発注側で用意する必要はありません。絵が描ける必要もありません。
ただし、伝えたい流れがある場合は、構成案として箇条書きで書いておくと打ち合わせが速くなります。「冒頭に課題、中盤に製品の動き、最後に問い合わせ先」という程度で十分です。この箇条書きが、制作会社が作る構成表の出発点になります。
自社で撮影するなら、構成表を先に作る
社内で撮影・編集まで行う場合は、構成表を先に作っておくと撮影の抜け漏れが減ります。撮影が終わってから「あの画がない」と気づくと、撮り直しになります。
構成表に必要な列は4つです。
- 尺:そのカットが何秒か。合計が想定の長さに収まるかを確認できます
- 画面:何を映すか。絵が描けなくても文章で構いません
- ナレーション・セリフ:読み上げる言葉。読んで秒数を測ると、尺の見積もりが正確になります
- テロップ:画面に出す文字。音を出せない場所で使うなら、テロップだけで意味が通るかをここで確認します
このテンプレートの3枚目のシートが、この4列に備考欄を足した構成表です。記入例を入れてありますので、上書きしてお使いください。
画面イメージまで描く場合
構成表の画面欄を絵にしたいときは、専用のテンプレートを使うと早いです。Adobe Expressの絵コンテテンプレートやCanvaの絵コンテテンプレートは無料で使えます。
ただし、発注する立場であれば絵の完成度は問われません。棒人間と矢印でも意図は伝わります。時間をかけるべきは絵ではなく、その前の4項目を決めることです。
YouTubeの動画を継続的に作る場合
自社でYouTubeチャンネルを運用していて、動画を継続的に投稿する場合は、1本ごとに企画書を作るより、構成表のフォーマットを1つ決めて使い回すほうが効率的です。企画意図と目的だけを毎回1行で書き、あとは構成表を埋めていく形です。
絵コンテという言葉の意味や、コンテの種類についてはコンテとは何かを解説した記事で扱っています。
よくある質問
企画書には何を書けばいいですか
背景・課題、目的、ターゲット、一番伝えたいこと、配信先、動画の長さ、表現方法、参考動画、予算、スケジュール、成果指標です。このうち目的、ターゲット、配信先、一番伝えたいことの4つは、埋まっていないと見積もりが出せません。残りは打ち合わせで詰められます。
企画書には著作権はかかりますか
企画書そのものが著作物として保護されることはあります。著作権法は著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義し(第2条第1項第1号)、その例として小説、脚本、論文、講演などの言語の著作物を挙げています(第10条第1項第1号)。ですので、創作的な表現を含む企画書は言語の著作物にあたりえます。
一方で、保護されるのは表現であって、アイデアそのものではありません。単なる事実の列挙やありふれた書き方は保護の対象になりにくいと考えられます。
実務でより重要なのは、誰が権利を持つかです。法人の発意に基づいて、その法人の業務に従事する人が職務上作成し、法人自身の名義で公表する著作物の著作者は、作成時の契約や勤務規則に別段の定めがない限り、その法人になります(第15条第1項)。制作会社が作成した構成台本や絵コンテ、完成した動画の権利の扱いは、契約書で定めるのが通例です。二次利用の範囲や期間を含めて、発注時に確認しておくことをお勧めします。
企画書は何で作ればいいですか
ExcelでもPowerPointでもGoogleスライドでも構いません。社内で使い慣れているもので問題ありません。決裁の場で紙に印刷するなら1枚に収まる形、制作会社に渡すなら項目が並んだ表形式が扱いやすいです。この記事のテンプレートはExcel形式で、決裁用サマリ、検討ワークシート、構成表の3つのシートに分けています。
簡単な企画書の書き方はありますか
前述の4項目、つまり目的、ターゲット、配信先、一番伝えたいことだけを書いてください。それだけで打ち合わせは始められます。分量は1枚で十分です。企画書を厚くすることに時間をかけるより、この4つを決めることに時間を使うほうが、結果的に良い動画になります。
制作会社に依頼してから企画書を作ってもいいですか
問題ありません。むしろ、目的とターゲットだけ決まった状態でご相談いただき、企画の整理から一緒に進めることも多くあります。ただし社内で予算を確保する必要がある場合は、その前に決裁用の資料が要るはずですので、この記事のテンプレートをその叩き台にお使いください。
複数の制作会社に見積もりを取るとき、企画書は同じものでいいですか
同じものを渡してください。条件がそろっていないと、金額だけが並んで中身を比べられなくなります。特に尺、本数、撮影の有無、納品形式は必ず全社に同じ条件で伝えてください。見積もりの比べ方は動画制作会社の選び方で詳しく解説しています。
厚い企画書より、4つの項目が決まっていること
動画制作の企画書に必要なのは、社内で企画を通すために足りる情報と、制作会社が見積もりを出すために足りる情報の2つです。細かい構成や絵コンテは、発注する側が用意するものではありません。
決めるべきは、目的、ターゲット、配信先、一番伝えたいこと。この4つです。ここが決まっていれば、尺も表現方法も予算帯も、そこから逆算で決まっていきます。
予算欄とスケジュール欄は、根拠を1行添えるだけで通りやすさが変わります。相場は公開していますので、そのまま根拠としてお使いください。
企画書が固まっていない段階でのご相談も歓迎しています。目的とターゲットだけお聞かせいただければ、そこから一緒に整理いたします。動画制作のご相談はお問い合わせページから承っております。
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