動画コマースとは、動画で紹介された商品を購入に直接誘導する仕組みのことです。動画内の商品をクリックすると、商品情報や価格、購入ページへのリンクボタンなどが表示されるのが一般的です。Eコマースの新たな手法のひとつとして注目されている動画コマースについて紹介します。
動画コマースとは?
動画コマースとは、動画で紹介された商品を直接購入に誘導する仕組みのことです。
ただし、商品を購入に誘導する仕組みは、現段階ではいろいろな手法が混在しているのが実情です。一部の動画コマースプラットフォームでは、動画内の商品をクリックし、そのまま商品購入まで完結できるECサイト機能を提供しているサービスがあります。
しかし、現在「動画コマース」として普及しはじめている仕組みは、以下のように動画から既存のECサイトの商品販売ページへ誘導する方法が主流です。この場合、動画を公開するさまざまな媒体からECサイトに視聴者を誘導できることがメリットになります。
現在多く活用されている動画コマースの流れ
- 動画内で商品を紹介する。
- 動画内の商品をクリックまたはタップすると、ポップアップが現れる。
- ポップアップには商品説明や価格などの詳細情報、商品購入ページへのリンクが掲載されている。
- 動画から商品購入ページに直接移動できることで、販売機会のロスを防ぐ。
また「動画コマース」という用語自体も幅広く使われています。動画コマースは、以下で紹介する「ライブコマース」の意味も含めて使用される場合もあります。
Eコマースとの違いは?
Eコマースとは、オンライン上で商品を販売することです。英語の「Electric Commerce」を訳し、日本語では「電子商取引」と呼ぶこともあります。
また、商品を販売・購入できる機能を持つWebサイトのことをECサイトと言います。これは、いわゆる「通販サイト(通信販売サイト)」や「ネットショップ」などと同様の意味です。
従来、ECサイトは商品の写真やテキストのみで商品を紹介するのが一般的でした。これに対し、動画コマースは動画で商品を紹介するところが新しい点と言えます。
ライブコマースとの違いは?
ライブコマースとは、生配信の動画で商品を紹介し、視聴者が購入できる仕組みのことです。こちらも
動画内で紹介された商品をそのまま購入できる点では動画コマースと同様ですが、ライブ配信であることに違いがあります。
中国ではTaobao(淘宝)やTikTok(抖音)などのプラットフォームを中心にライブコマースの市場が拡大しており、日本でも徐々にライブコマースに参入する企業は増えています。
ライブコマースの出演者は、インフルエンサーやKOL(キーオピニオンリーダー / Key Opinion Leader)に委託することも多く、視聴者数や売上は出演者の人気度にも左右されます。
動画コマースのメリット
では、動画コマースを導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか。動画コマースを活用して商品を販売する企業には、以下のような利点があります。
動画を公開するさまざまな媒体からECサイトへ誘導できる
動画コマースに対応する動画配信プラットフォームからECサイトへ訪問するユーザーの数を増やせます。広告以外の流入経路を広げられることがメリットです。
商品の魅力を詳しく伝え、購買意欲を高められる
動画コマースは商品紹介を動画で行うことが前提です。写真やテキストのみの商品紹介と比べて、動画では商品の使い方や活用イメージ、質感や音まで詳しく訴求できます。詳しい商品情報を提供し、購入前の疑問や不安を拭い去ることで、購買意欲を高められます。
興味を持った視聴者をすぐに商品へ誘導でき、販売機会を逃さない
動画コマースでは、動画を見ながら気になったときに、すぐに販売情報をチェックできることがポイントです。動画を見て気になった商品があっても「視聴後には忘れてしまう」「販売ページを探すのがめんどう」と感じた経験のある方は多いと思われます。動画コマースは、動画から直接購入できる導線を作ることで機会損失を防ぎます。
動画コマースのデメリット
反対に、動画コマースを導入することでデメリットはあるのでしょうか。動画コマースの弱みをいくつか挙げました。
動画制作とリンクを埋め込む手間・コストがかかる
動画コマースを活用するには、商品を紹介する動画を作る必要があります。また、動画内に登場する商品ごとに、商品情報や販売サイトのリンク先情報を紐づける作業が必要です。動画制作のコストや商品情報を埋め込む手間がかかるため、制作の負担は大きくなります。
動画とリンクの管理に手間がかかる
動画内で紹介する商品とECサイトの商品をリンクする場合、在庫切れ、販売終了時などの対応が複雑になります。例えば商品の販売終了後も動画がだけが残り、リンク切れとなってしまう場合も考えられます。動画に紐づけたリンクの管理や動画公開期間の管理など、制作後のメンテナンスも必要です。
効果測定の観点が多く複雑
動画コマースの効果測定には、2つの観点があります。ひとつは、動画からの集客数やCV(コンバージョン)数などWebマーケティングの視点、もう1つは動画の構成や演出などのクリエイティブの視点です。どちらの観点にも検証すべき小項目が多数あり、正しく効果を検証するには幅広い知識が必要です。
制作・管理・効果検証ともに工数がかかるため、取り組む際には人員リソースに余裕を持つことが大切です。
動画コマースの成功事例
動画コマースを活用した企業の事例をご紹介します。
ニトリ「ウチソト」WEBサイト
アウトドア用品をおうちで使う提案をする特集Webサイトのコンテンツとして、動画コマースを活用しました(2020年実施)。動画内のアイテムをタップすると、そのままニトリのオンラインショップで購入できる仕組みです。コロナ禍のなか、店舗に行けなくても楽しめるショッピング体験を提供しました。
ジョンマスターオーガニック「meet up! CHANNEL」
コスメブランド「ジョンマスターオーガニック」のショッピングチャンネルの事例です。
こちらはスタッフの方々が商品を紹介するライブ配信動画のアーカイブをコンテンツとして継続的に発信する形式になっており、ライブコマースとも言えます。また、動画内に商品をクリックできるようなリンクの埋め込みはされていませんが、動画画面のすぐそばで「ライブで使用しているアイテム」の写真・商品名・価格・購入ページへのリンクを掲載しており、動画から直接購入ページへ移動できる導線がしっかり確保されています。
参考:meet up! CHANNEL|ライブポータル(ジョンマスターオーガニック公式オンラインストア)
Black-owned Friday
Googleが2021年のブラックフライデーに行ったアフリカ系企業オーナー向けプロモーションです。動画内で紹介されるアイテムの情報がタグ付けされており、画面下部にはカード上の商品案内が表示されます。商品をクリックすると販売サイトへ移動する仕組みになっています。
参考:Google | Black Owned Friday
YouTubeで動画コマースはできる?
動画プラットフォームとして多くの人に定着しているYouTubeですが、YouTubeで動画コマースに取り組むことはできるのでしょうか。YouTubeでは「YouTubeショッピング」という機能を提供しています。
YouTubeのショッピング機能とは?
YouTube ショッピング機能は、一定の資格を満たしているクリエイターに限り、動画内で自分のWebサイトで販売している商品や他のブランドの商品を紹介できます。YouTubeショッピングの機能には、動画終了画面への商品表示、動画やライブ配信への商品のタグ付け、チャットでの商品の固定表示などがあります。なお、YouTubeは2022年7月にネットショッププラットフォーム「Shopify(ショッピファイ)」と提携したことを発表しました。YouTubeとECサイト(Shopify)に登録した商品情報の同期が可能になり、YouTubeを活用した動画コマースやライブコマースがさらに加速することが期待されています。
参考:YouTube のショッピング機能を利用する – YouTube ヘルプ, Shopify Japan株式会社のプレスリリース
まとめ:動画でEコマースの可能性を広げよう
動画コマースは、オンラインでの商品販売の可能性を広げる比較的新しい分野のひとつです。
現在では、TikToKやInstagram、Facebook、Twitter、LINEなど身近なSNSのほとんどが独自のライブコマース機能を提供しており「動画を通して買う」体験は、より一般化していくものと思われます。動画×ECのトレンド、成功事例等の情報にアンテナを張り、今後のビジネスに活かしてみてはいかがでしょうか。