近年、SaaSと呼ばれるインターネットを介して利用するサービスが増えています。市場の競合性が高まるなか、SaaSを提供する企業は自社サービスの優位性をアピールするより効果的な方法を求めているのではないでしょうか。この記事では、SaaS企業の動画制作のポイントや動画の効果的な活用方法をご紹介します。
SaaSとは
はじめに、SaaSの定義や背景をおさらいしておきましょう。
SaaS(サース / サーズ)とは「Software as a Service」の略で、クラウド上にあるソフトウェアをインターネットを介して利用するサービスのことです。GoogleドキュメントなどのGoogleアプリをはじめ、写真を保存・共有するオンラインストレージ、Web会議システムなど、すでに私たちの生活に定着しているサービスの多くがSaaSと言えます。
近年では、一般消費者向けでも、企業向けでもSaaS形式で提供されるサービスが増えており、市場の競争は激化しています。SaaS開発企業は、顧客を継続的に獲得するため、提供するサービスの機能や品質を高めることはもちろん、さまざまなマーケティング施策を必要としています。
SaaS企業が動画マーケティングに取り組むべき理由
マーケティングにはさまざまな手法がありますが、動画マーケティングはSaaS企業にとってさまざまな面で有益な施策です。ではなぜ、SaaS企業には動画マーケティングが向いていると言えるのでしょうか。以下でその理由をご紹介します。
ユーザーが動画を視聴しやすい環境である
SaaSはインターネットを介して利用するサービスのため、サービスを使用する際には端末(パソコンやスマホなど)、インターネット回線など動画を視聴するのに必要な環境が整っています。また、SaaS開発企業はどの会社もインターネット上を中心に情報を発信しています。そのため、ユーザーもサービス導入を検討する際にはインターネット上で情報収集するのが当たり前となっています。ユーザーの行動範囲が動画コンテンツに触れやすい環境であることが、SaaS企業が動画マーケティングをやるべき理由の一つと言えます。
機能や特徴をわかりやすく説明できる
インターネット上で提供されるサービスであるSaaSは、実物の形がない商材です。そのため、ユーザーにとってサービスの仕組みや機能、特徴などがわかりづらい場合があります。動画は、音声や図、アニメーションによる動きなどを通して、形のないサービスの仕組みをわかりやすく説明できます。SaaSは実体のあるものを販売するビジネスではないからこそ、利用料に見合う価値を得られるサービスであることを伝える必要があります。
繰り返し活用できる
SaaS形式で提供されているサービスの多くは、料金形態にサブスクリプション方式を採用しています。サブスクリプション方式とは、サービスを定期的に利用する契約をしたうえで、月額・年額などで利用料を支払うビジネスモデルのことです。
サブスクリプション方式は、ユーザーが初期に負担するコストを抑え、サービスを導入しやすくする効果がありますが、契約を継続してもらえなければ安定的に収益を上げることはできません。そのため、サブスクリプションモデルをとっているSaaS企業の多くは、途中解約を防ぐためユーザーに継続的なサポートを提供しています。このようなサポート活動をスムーズに行うためにも動画が有効です。動画は一度制作したコンテンツを繰り返し活用できるため、問い合わせが多い操作方法など、ニーズが高く、定型的な情報を動画にすることで業務効率化が図れます。
ユーザーの読む負荷を軽減できる
インターネットを介して使用するSaaSは、マニュアルを読んだり、入力したりする作業をすべてパソコンなどの画面上で行わなければなりません。モニター上で読まなければならない情報量が多ければ、ユーザーが不便さを感じる要因にもなります。短い時間で多くの情報をわかりやすく説明できる動画で情報を提供することは、ユーザーの利便性向上につながります。
SaaS企業におすすめの動画マーケティング施策
では、SaaS企業には具体的にどのような動画マーケティング施策が適しているのでしょうか。SaaS企業のマーケティング目的に合わせて、代表的な動画マーケティング施策の例を紹介します。
動画広告
動画広告は、動画を活用した広告のことです。広義の意味では交通広告や屋外広告、デジタルサイネージなども含まれますが、近年では動画広告と言えばインターネット上で配信される動画広告を指すのが主流になっています。
動画広告はYouTubeをはじめ、Instagram・TikTok・LINE・Twitter・FacebookなどのSNS、「Googleディスプレイネットワーク(GDN)」などのアドネットワークで配信されます。サービスの特徴を伝える短く、印象的な動画を制作し、導入前のユーザーにサービスを知ってもらうために活用されるのが一般的です。
動画広告の基礎知識(種類・配信先、効果的な制作方法)は、こちらの記事も参考にしてください。
サービス紹介動画
サービス紹介動画は、その名の通りサービスの概要や特徴をわかりやすく紹介する動画です。このような動画は、サービスの公式サイトやLP(ランディングページ)で使用されることがよくあります。
一見わかりにくい無形サービスの仕組みを動画で解説することで、導入検討中のユーザーに短い時間で要点を伝えられます。
サービス紹介動画の作り方や事例は、こちらの記事も参考にしてください。
テレビCM
新型コロナウイルスの流行によりリモートワークや業務のデジタル化の需要が急激に高まったことから、近年では特に企業向けSaaSのテレビCM活用が増えています。テレビなどのマスメディアで多くの人にサービスを知ってもらうことでインターネット上の広告の認知を高める効果や、「テレビCMで宣伝している」ことで信頼感を高め、広告をクリックする人を増やす効果が期待できます。
テレビCMの費用相場や費用対効果を高める方法は、こちらの記事も参考にしてください。
セミナー動画
サービスに関連したテーマでユーザーが求める知識やノウハウを提供するセミナー動画も有効な方法です。
一度制作したセミナーの内容は、リアルタイムで配信するほかにも、アーカイブとしてコンテンツを蓄積できるところがポイントです。
サービスの導入を考えながらも、まだ情報収集段階のユーザーに対し、メールアドレスなどの登録とともにオンラインセミナー動画(アーカイブ)の閲覧を促すことで、リードの獲得につながります。
マニュアル動画
操作方法や運用のコツなど、契約後のユーザーをサポートするための活動に動画を活用するのも効果的です。
パソコンなどの画面上で、文字で書かれたマニュアルを読むことは、ユーザーにとって大きな負担になります。また、分からないことがあるたびにサポートセンターなどに問い合わせるのも手間がかかります。
操作方法などを動画で提供することは「短い時間で見られる」「いつでも、すぐに、何度でも見られる」などの点でユーザーにとってもメリットがあります。
事例紹介動画
事例紹介は、すでにサービスを導入している他社の具体的な成功事例を見せることで、未契約のユーザーに検討の度合いを深めてもらうために活用します。
顧客にインタビューし、Webページの記事として掲載するケースが多いですが、動画は語り手の表情や雰囲気がリアルに伝わることで推奨効果がより高まります。一般的な事例は記事で、注目してもらいたい代表的な事例は動画で制作するなど、併用するのもよいでしょう。
SaaS企業向け動画制作のポイント
次に、SaaS企業が動画マーケティングの効果を高めるために気をつけたいポイントを紹介します。
動画ごとの目的を明確にする
前項でもご紹介したように、SaaS企業の事業活動において動画マーケティングを活用できるシーンは幅広くあります。必然的に、マーケティングの目的に応じた複数の動画を制作することが多くなると思われますが、その際にはそれぞれの動画を制作する目的を明確にすることが大切です。例えば「まずはサービスを知ってもらう」目的と、「競合と比較して自社を選んでもらう」目的では動画で表現する内容は大きく変わるはずです。動画を活用しやすいユーザー環境・ビジネス環境だからこそ、動画の目的・用途や伝えたいメッセージを整理して、制作するようにしましょう。
トーン&マナーを合わせて統一感を持たせる
SaaSの競合サービスが増えるなか、自社らしさを印象づけるためには、ロゴ、イメージカラー、アニメーションに使用するイラストなどのトーン&マナーを合わせて統一感を持たせるのが効果的です。複数の動画を制作する場合にも、同じテロップデザインやジングル、サウンドロゴなどを共通して使うことで、ブランディングにつなげる方法もあります。
バージョン管理に配慮する
クラウド上にあるソフトウェアをインターネットを介して使うSaaSは、機能が随時アップデートされるのが一般的です。サービス紹介動画やマニュアル動画での説明内容が古い情報にならないよう更新スケジュールの把握や制作物のバージョン管理に注意が必要です。
SaaS企業が行った動画活用の成功事例
最後に、SaaS企業が制作した動画の事例をご紹介します。
お金の見える化アプリ「マネーフォワード ME」のサービス紹介動画です。ナレーションやアニメーションでサービスの仕組みや特徴がわかりやすく説明されています。動画内のモチーフがロゴに合わせたオレンジ色で統一されており、ブランドカラーを印象付けています。
クラウド会計ソフト「freee」のリブランディングを広報するブランドムービーです。「スモールビジネスを、世界の主役に。」をテーマに、実際にスモールビジネスに取り組むユーザーや経営者が出演しています。
画面遷移を見せながら操作の手順を説明するマニュアル動画です。オペレーターのイラストと丁寧なナレーションにより、動画でも親切なサポートサービスを受けている印象を得られます。
アプリ開発・運用クラウドのYappli(ヤプリ)の事例動画です。導入企業の複数の担当者へのインタビューや活用風景で構成されています。サービスを具体的にどのように使っているか、どのような点を優れていると感じているのかがお客様の口から語られており、説得力が感じられます。
まとめ:目的に合った動画を作るのが重要
ご紹介したように、SaaS企業ではサービスのプロモーションや契約後のサポート活動など幅広い目的で動画を活用できます。
さまざまなタイプの動画を制作することになるため、目的に応じてポイントをおさえた動画を作ることが重要ですが、多くの企業にとってコンテンツ制作は負担の大きな問題です。そのような場合には、動画制作をプロに依頼するのも選択肢のひとつです。SaaSと相性のよい動画マーケティングを継続的に行うためには、コンテンツ制作の効率化も重要なポイントと言えるでしょう。