SaaS企業の動画活用ガイド|フェーズ別の使い分けと、自社12事例で見るアニメーション動画の作り方・費用

動画マーケティング
公開日:2022年12月9日 / 最終更新日:2026年9月11日
SaaS企業の動画活用ガイド|フェーズ別の使い分けと、自社12事例で見るアニメーション動画の作り方・費用
山畑 達也
山畑 達也 株式会社VIDWEB 代表取締役社長

SaaSの動画には、他の業種の動画と違う前提が2つあります。見せたいものが画面と仕組みであること、そしてその画面が変わり続けることです。

当社が制作したSaaSやクラウドサービス関連の紹介動画12件を見ると、9件がアニメーションで、実写だけで作ったものは1件でした。実写が撮れないからではありません。現物のないサービスの仕組みはイラストとモーションのほうが伝わり、機能やUIが変わったときにも撮り直さずに直せるからです。実際、株式会社Hacobu様のMOVOシリーズでは、3つのサービスの紹介動画を同じアイソメトリックイラストのデザインで3本のシリーズとして制作しています。

この記事では、SaaS企業が動画をどのフェーズで何のために使うかを整理したうえで、当社の12事例をフェーズ別に読み解き、UIが変わっても作り直さないための設計、アニメーション動画の費用と期間の構造、制作会社に相談する前に決めておくことをご説明します。

SaaSの動画はアニメーションが主流。当社12事例に見る傾向

SaaS動画12件の表現(アニメーション9件・実写3件)

当社が公開している事例のうち、SaaSやクラウドサービス関連の動画12件を見ると、傾向は次のとおりです。統計と呼べる数ではありませんが、作り方を決める参考にはなります。

項目内訳
映像表現アニメーション9件、アニメーション+実写2件、実写1件
制作期間1.5ヶ月から4ヶ月。2ヶ月から3ヶ月が7件
尺60秒以上が8件、15秒から60秒が4件
主な用途サービス紹介、営業ツール、セミナー・説明会、展示会、YouTube広告

アニメーションが多い理由は2つあります。1つは、現物のないサービスの仕組みを見せるには、画面をそのまま映すよりイラストとモーションで抽象化したほうが伝わることです。株式会社Pathee様のSTORECAST機能紹介動画の制作ページには、現物がないSaaS製品だからこそ、アニメーションにすることで内容を分かりやすく訴求できたと書いています。

もう1つは、変更への強さです。当社の料金ページにも、アニメーション動画は撮影やキャスティングを必要としない分コストを抑えられ、後で変更が必要になった場合も再撮影がないため低コストで済むと書いています。画面が変わり続けるSaaSでは、この点が効きます。

実写を使う理由もはっきりしています。導入している現場の空気や、使っている人の声を見せたいときです。メダップ株式会社様のforo CRMサービス紹介動画は、共同開発先の病院で撮影した実写にアニメーションを挿入し、使っている様子や商談シーンから導入後の光景を想像できるようにしています。

つまり、サービスの仕組みを見せるならアニメーション、現場と人を見せるなら実写を足す、という使い分けです。

SaaS企業の動画をフェーズ別に使い分ける

SaaS動画のフェーズ別の役割(認知・検討・導入・定着)

SaaSの動画は1本で完結しません。認知から契約、契約後の定着まで、顧客のフェーズごとに動画の役割が変わります。当社の事例を当てはめると、次のように整理できます。

フェーズ動画の役割動画の種類尺の目安当社事例
認知何ができるサービスかを短時間で伝える動画広告、WebCM15秒から60秒Groovement様 YouTube CM、BASE様 サービス紹介 無料編・簡単編
検討どう課題を解決するかを理解してもらうサービス紹介、機能紹介、コンセプト動画60秒から2分程度Hacobu様 MOVOシリーズ、Pathee様 STORECAST、NTTデータMSE様 コンセプト動画
導入使い方と導入後の姿を見せるセミナー・説明会用動画、デモ動画、展示会動画15秒から2分程度メダップ様 foro CRM、キヤノン電子様 DR-S350NW、NTT-AT様 Comme@
定着使い続けてもらう。問い合わせを減らすマニュアル動画、オンボーディング動画機能単位で短くキヤノン電子様 DR Scanner Management Tool

認知: 広告・CMで「何ができるか」を15秒から60秒で

認知の段階では、サービスの詳細より「何ができるか」を1つに絞って伝えます。YouTube広告は最初の数秒が成果を左右するため、冒頭で関心を引く演出と、情報を取捨選択して「もっと知りたい」と思わせる流れが要ります。説明動画とは作りが変わります。訴求したい軸が2つあるなら、1本に詰め込まず、軸の数だけ短尺を分けるほうが効きます。仕様と設計はYouTube広告の動画制作ガイドで解説しています。

検討: サービス紹介・機能紹介で「どう解決するか」を

検討の段階の読者は、自社の課題がそのサービスで解決するかを知りたい人です。ここで使うのがサービス紹介動画と機能紹介動画で、SaaS動画の中心になります。尺は2分前後に収め、訴求したい内容を絞ります。サービスが複数あるなら、同じデザインで揃えて1つのブランドとして見せると、サービスごとの動画でありながら全体の印象が揃います。サービス紹介動画の一般的な作り方と費用は商品紹介動画・サービス紹介動画の事例と作り方で、仕組みを説明する動画の設計は説明動画の作り方で解説しています。

導入: セミナー・デモで「使い方」を

導入を検討している相手や、導入直後の相手には、使い方と導入後の姿を見せる動画が要ります。展示会やセミナーで流す動画、営業担当者が商談で使う動画がここに入ります。製品の特長は数を絞って順に見せ、展示会のように音を出せない場所で流すならテロップだけで伝わる構成にします。実際に使っている場面や商談の様子を実写で入れると、導入後を想像しやすくなります。

定着: マニュアル・オンボーディングで「使い続けてもらう」

SaaSは契約後が本番です。使い方が分からないまま放置されると解約につながるため、マニュアル動画やオンボーディング動画で定着を支えます。定着の動画は機能単位で短く作り、機能が変わったときにその1本だけ更新できるようにしておきます。海外の拠点や取引先にも配るなら、テロップなしの版を用意しておくと多言語展開が楽です。実写とアニメーションの使い分けと外注の判断はマニュアル動画の作り方で解説しています。

SaaS動画の制作事例12件。フェーズ別の作り分け

SaaS動画12件の制作期間の分布

当社が制作したSaaS・クラウドサービス関連の動画12件を、フェーズ別に一覧にします。

事例フェーズ映像表現尺制作期間作り方の特徴
BASE様 サービス紹介動画 無料編認知アニメーション15秒から60秒1.5ヶ月2つの訴求軸で2本。広告利用を想定した短尺
BASE様 サービス紹介動画 簡単編認知アニメーション15秒から60秒1.5ヶ月無料編と対の訴求軸
Groovement様 Strategy Consultant Bank YouTube CM認知アニメーション+実写15秒から60秒3ヶ月社員でフリーアナウンサーでもある方が出演。冒頭で引きつける広告設計
Hacobu様 MOVO Vista検討アニメーション60秒以上2ヶ月から3ヶ月2分にまとめたサービス紹介。アイソメトリックイラスト
Hacobu様 MOVO Berth検討アニメーション60秒以上2ヶ月から3ヶ月同じデザインでシリーズ化
Hacobu様 MOVO Fleet検討アニメーション60秒以上2ヶ月から3ヶ月同じデザインでシリーズ化
Pathee様 STORECAST機能紹介動画検討アニメーション60秒以上2.5ヶ月サービスページのイラスト素材を流用してデザインを統一
NTTデータMSE様 コンセプト動画検討アニメーション60秒以上3ヶ月シンプルなイラストで説明の難しい内容を伝える。展示会でも使用
メダップ様 foro CRMサービス紹介動画導入アニメーション+実写60秒以上3ヶ月共同開発先の病院で撮影。インタビューにアニメーションを挿入
キヤノン電子様 DR-S350NW紹介動画導入アニメーション60秒以上4ヶ月特長を6つのポイントに整理。既存の動画をベースに刷新
NTT-AT様 Comme@カスタマーサポート紹介動画導入実写15秒から60秒1.5ヶ月音のない展示会向けにテロップで補完
キヤノン電子様 DR Scanner Management Tool紹介動画定着アニメーション60秒以上4ヶ月機能をテンポよく説明。テロップなし版で多言語展開に対応

制作期間は1.5ヶ月が3件、2ヶ月から3ヶ月が7件、4ヶ月が2件です。この12件を見る限り、期間は尺だけでは決まらず、イラストを新規に起こすかどうか、説明する機能の数、ナレーションと言語の数が影響しています。

事例から拾える作り方の違いを、フェーズごとに挙げます。

認知: BASE様は、無料で開設できるという訴求と、初心者でも手軽に開設できるという訴求の2軸で構成から提案し、広告での利用を想定して短尺で2本作りました。Groovement様のYouTube CMは、社員でフリーアナウンサーでもある方が出演し、冒頭から関心を引く演出で、限られた尺の中で情報を取捨選択しています

検討: Hacobu様のMOVO Vista、MOVO Berth、MOVO Fleetの3本は、配送案件管理、トラック予約受付、動態管理のサービスをそれぞれ2分にまとめ、刷新したブランディングに合わせたアイソメトリックイラストで統一しました。Pathee様のSTORECASTはサービスページのイラスト素材を流用してデザインを揃え、NTTデータMSE様のコンセプト動画は極力シンプルなイラストで説明の難しい内容を伝えています

導入: キヤノン電子様のDR-S350NWは、製品の複数の特長を6つのポイントに整理してテンポよく説明し、シンプルでポップな色使いで業務用製品の堅苦しさを払拭しています。NTT-AT様のComme@は実写で、音が聞こえない展示会でも理解できるようナレーションではなくテロップで補完し、展示会と自社サイトの両方で使われています

定着: キヤノン電子様のDR Scanner Management Toolは、複数拠点のスキャナーの設定を一括管理するソフトの機能をテンポよく説明し、人物イラストに多様性を持たせ、多言語展開を見据えたテロップなしのバージョンも提供しました

UIが変わっても作り直さない。SaaS動画の設計

SaaSの動画で最も多い相談は、「画面が変わったので動画を直したい」です。リリースのたびにUIが変わるサービスで、画面をそのまま映した動画は、公開から数か月で古くなります。当社がSaaSの動画を設計するときに気をつけているのは、次の4点です。

  1. 画面をそのまま映さず、イラストとモーションで抽象化する。実際の画面の配置や色が変わっても動画の内容が古くならないための選択で、事例のアイソメトリックイラストはこの考え方です。細かいボタンの位置ではなく、何ができるかを見せます
  2. 機能単位で章を分ける。特長を6つのポイントに分けて説明した事例のように、機能が1つ変わったときにその章だけ差し替えられます
  3. 共通のデザインでシリーズ化する。Hacobu様の3本のように同じ設計で作っておけば、4つ目のサービスが増えても同じ設計で足せます。訴求軸だけ変えて2本作る場合も同じです
  4. サービスのイラスト素材やブランドガイドを共有してもらう。サービス側で素材が更新されれば、動画も同じ素材で更新できます

実写で画面を撮る場合も、方法はあります。画面全体ではなく操作している手元や使っている人を映し、画面の細部は寄らない。あるいは、画面部分だけをアニメーションに置き換えて、変更時にその部分だけ差し替えられるようにする。実写とアニメーションを組み合わせる構成は、その両立の例です。

もう1つ、納品の形も設計のうちです。テロップなしのバージョンや編集データを残しておくと、海外展開や機能追加で動画を派生させるときに、次の1本が軽くなります。

SaaS動画の費用と期間。アニメーションで何にかかるか

当社の料金ページでは、動画制作の料金が変動する主な要因として、動画の長さ、撮影日数や時間、カメラの台数、制作に関わる人数、タレントやモデルの有無、ロケ会場のレンタル費、CGやアニメーションの有無を挙げています。

アニメーション主体のSaaS動画では、撮影に関わる要因がなくなる代わりに、次の3つで工数が決まります。

  • イラストを新規に起こすか、既存の素材を使うか。12事例では、イラストの書き起こしを含む案件が4ヶ月、サービスページの素材を流用した案件が2.5ヶ月でした
  • 説明する機能の数と尺。機能が増えるほど画面の設計とモーションの量が増えます。2分にまとめたサービス紹介で2ヶ月から3ヶ月です
  • ナレーションの有無と言語の数。ナレーションを入れるか、テロップだけで見せるか。多言語展開するかで工程が変わります

費用の目安は、当社の料金ページで制作事例を「49万円まで」「50万円から99万円」「100万円から299万円」「300万円から」の4つの予算帯に分けてご案内しています。SaaS動画に近い例では、AI即日ファクタリングのサービス訴求動画(アニメーション、15秒から60秒、2ヶ月)が50万円から99万円の帯に入っています。金額の決まり方と見積もりの読み方は動画制作の費用相場で解説しています。

期間は、12事例では1.5ヶ月から4ヶ月です。この12件を見る限り、短尺で訴求を1つに絞った動画が1.5ヶ月、2分程度のサービス紹介が2ヶ月から3ヶ月、イラストを新規に起こす案件や多言語版を含む案件が4ヶ月でした。

制作会社に相談する前に決めておくこと

SaaS動画の相談を受けるとき、最初に確認するのは次の6点です。決まっていなくても構いませんが、仮置きがあると提案が具体的になります。

  1. どのフェーズの動画か。認知、検討、導入、定着のどれを担う動画かで、尺も構成も配信先も変わります。1本で全部をやろうとすると、長くて誰にも刺さらない動画になります
  2. 画面をどこまで見せるか。実際のUIを映すか、抽象化するか。未公開の機能や顧客データが映る画面は、見せられる範囲を先に決めます
  3. UIの変更予定。数か月以内に大きな改修があるなら、その前提で抽象化の度合いを決めます
  4. 使える素材。サービスページのイラスト、ブランドガイド、ロゴデータ、既存の動画。素材が多いほど期間と費用を抑えられます
  5. 配信先と尺。Web広告なら15秒から60秒、サービスページなら2分程度、展示会なら音なしでも伝わる構成。配信先が複数あるなら、尺違いを最初から設計します
  6. シリーズ化の予定。サービスが複数ある、機能追加が続く、海外展開があるなら、1本目を共通設計にしておきます

これらは動画制作のヒアリングシートの項目と重なります。SaaS特有なのは2、3、6で、ここが決まっていると、作り直しの少ない動画になります。SaaSの動画を広告や営業にどうつなげるかはBtoBの動画マーケティングで解説しています。

SaaS企業の動画でよくある質問

SaaSのサービス紹介動画は実写とアニメーションのどちらが向いていますか?

サービスの仕組みや画面を見せるならアニメーションが向いています。当社のSaaS関連の事例12件のうち9件がアニメーションで、現物がないサービスの内容を分かりやすく訴求でき、UIが変わっても再撮影なしで直せるためです。導入している現場の空気や、使っている人の声を見せたい場合は、実写を組み合わせます。

画面のUIが変わったらSaaSの動画は作り直しですか?

作り方によります。画面をそのまま映した実写やキャプチャ主体の動画は、変更のたびに再撮影や再収録が必要になります。イラストとモーションで抽象化したアニメーションなら、変わった部分だけを差し替えられます。機能単位で章を分けておくと、差し替える範囲がさらに小さくなります。当社の料金ページにも、アニメーション動画は変更時に再撮影がないため低コストで済むと書いています。

SaaS動画の制作期間はどれくらいですか?

当社の12事例では1.5ヶ月から4ヶ月です。短尺で訴求を1つに絞った動画が1.5ヶ月、2分程度のサービス紹介が2ヶ月から3ヶ月、イラストを新規に起こす案件や多言語版を含む案件が4ヶ月でした。この12件を見る限り、期間は尺だけでなく、イラストを新規に起こすかどうか、説明する機能の数、ナレーションと言語の数で変わります。

SaaSの動画は1本だけ作るのとシリーズで作るのはどちらがよいですか?

サービスが複数ある、機能追加が続く、海外展開があるなら、1本目から共通設計にしておくシリーズのほうが、2本目以降が軽くなります。1本だけの予定でも、編集データとテロップなし版を残しておけば、あとからシリーズに広げられます。

まとめ: フェーズごとに1本ずつ、アニメーションで差し替えやすく

SaaSの動画は、認知、検討、導入、定着のフェーズごとに役割が違い、1本で全部を担わせないことが出発点です。当社の12事例では9件がアニメーションで、現物のないサービスの仕組みを伝えやすく、UIが変わっても再撮影なしで直せることが理由です。

作り直しを減らす設計は4つ。画面を抽象化する、機能単位で章を分ける、共通デザインでシリーズ化する、サービス側の素材とブランドガイドを共有してもらう。費用と期間は、イラストを新規に起こすか、説明する機能の数、ナレーションと言語の数で決まり、12事例では1.5ヶ月から4ヶ月でした。

SaaSやソフトウェアの動画事例はソフトウェア・通信業界向けの制作実績で、費用の構造と予算規模別の事例は料金ページでご案内しています。

山畑 達也
山畑 達也 株式会社VIDWEB 代表取締役社長

20年以上にわたりオンラインマーケティング、オンライン広告業界に身を置き、数々の新規サービスや新規事業の立ち上げと事業運営、会社経営に携わる。2021年に動画制作から動画広告、動画マーケティングまでを総合的に提供する株式会社VIDWEB(ビッドウェブ)の代表取締役に就任。

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