「企業VP」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。 動画制作の現場では頻繁に使われる用語ですが、一般的な「プロモーションビデオ(PV)」と何が違うのか、明確に区別されていないことも少なくありません。
企業VPは、企業の営業活動や採用活動、広報活動において非常に強力なツールとなります。 本記事では、企業VPの基礎知識からPVとの違い、具体的な活用シーンや制作の流れについて、わかりやすく解説します。
- 企業VPは特定ターゲットへの理解促進を目的とした動画
- 採用・営業・Webなど多様なシーンで活用できる
- 誠実な演出で統一されたブランドメッセージを発信可能
企業VPとは?(VPとPVの違い)
まずは言葉の定義から整理していきましょう。「VP」と「PV」、似ているようで実は目的やターゲットが異なります。
企業VP(Video Package)とは
企業VPとは、「Video Package(ビデオパッケージ)」の略称です。 主に特定のターゲットに向けて、具体的な情報を深く伝えるために制作される動画のことを指します。例えば、会社紹介、事業紹介、社員研修、採用向け動画、株主総会用動画などがこれに当たります。 不特定多数に広く認知させることよりも、「自社のことをもっと知ってもらいたい相手(取引先、求職者、株主、社員など)」に対して、理解を深めてもらうことを目的としています。
企業PV(Promotion Video)との違い
一方、よく比較される「PV(Promotion Video)」は、その名の通り「宣伝・販促」を主目的とした動画です。 CMやWeb広告のように、不特定多数の人に見てもらい、商品やサービスの認知度を高めたり、購買意欲を刺激したりすることに特化しています。
主な違いを整理すると以下のようになります。
| 項目 | 企業VP | 企業PV |
|---|---|---|
| 目的 | 理解促進、教育、ブランディング(インナー含む)、信頼獲得 | 認知拡大、購買意欲の喚起、集客 |
| 訴求 | 事実に基づいた具体的な内容、信頼性、誠実さ、社風の伝達 | インパクト、情緒的価値、キャッチーな表現、短時間での魅力付け |
| 活用範囲 | 展示会、商談、会社説明会、社内研修、Webサイト(「会社概要」など) | テレビCM、Web広告、SNS、街頭ビジョン、店頭モニター |
このように、企業VPは「広く浅く」よりも「深く正しく」伝えることに長けています。
企業VPが必要とされる理由
近年、多くの企業がVP制作に力を入れるようになっています。その背景には、ビジネス環境の変化と動画という媒体の特性があります。
情報伝達の効率化

参照動画:https://vidweb.co.jp/work/nabtesco/
テキストや静止画だけの資料に比べ、動画は短時間で圧倒的な情報量を伝えることができます。 「1分間の動画はWebページ3,600ページ分の情報量に相当する」とも言われます。 複雑な事業内容や目に見えないサービス、抽象的な「企業理念」なども、映像と音声を組み合わせることで直感的に理解してもらいやすくなります。
採用活動の強化

参照動画:https://vidweb.co.jp/work/eps-holdings-4/
少子高齢化による人手不足が深刻化する中、採用活動における動画活用は必須となりつつあります。 オフィスの雰囲気、実際に働く社員の声、仕事のやりがいなどを動画で見せることで、求職者は入社後のイメージを具体的に描けるようになります。これにより、エントリー数の増加だけでなく、入社後のミスマッチ防止にもつながります。
営業・商談の質向上

参照動画:https://vidweb.co.jp/work/hacobu-2/
営業担当者ごとのスキル差を埋めるツールとしてもVPは有効です。 サービス紹介や会社紹介のVPを商談の冒頭で見せることで、均質な情報を間違いなく伝えることができます。 営業担当者はその後のヒアリングや具体的な提案に集中できるようになり、商談全体の質が向上します。
ブランドメッセージの統一

参照動画:https://vidweb.co.jp/work/sony/
口頭での説明だけでは、どうしても担当者によってニュアンスが変わってしまうことがあります。 企業VPとして公式な動画を作成しておくことで、顧客や株主、求職者、そして社員に対しても、ブレのない統一されたブランドメッセージを発信し続けることができます。
企業VPの種類(用途別)
一口に企業VPといっても、その種類は多岐にわたります。代表的なものをいくつかご紹介します。
会社紹介VP
「会社案内パンフレットの動画版」とも言える、最もベーシックなVPです。 沿革、事業内容、企業理念、代表挨拶などを盛り込み、企業の全体像を伝えます。Webサイトのトップページや会社概要ページ、エントランスのモニターなどで活用されます。
採用VP(新卒・中途)
求職者に向けた動画です。 「1日の仕事の流れ」や「先輩社員インタビュー」、「オフィスツアー」などのコンテンツが人気です。ターゲット(新卒か中途か、エンジニアか営業かなど)に合わせて内容を作り込むことが重要です。
サービス/事業紹介VP
特定の商品やサービス、事業部の活動にフォーカスした動画です。 無形商材(ITサービスやコンサルティングなど)や、仕組みが複雑なBtoB商材の説明において、アニメーションや図解を用いたVPは非常に強力な説明ツールとなります。
工場・施設紹介VP
製造業や物流業、病院、介護施設などで多く制作されます。 普段は立ち入りが難しいエリアや、大規模な設備の稼働風景を映像で見せることで、企業の技術力や安全管理体制、スケールの大きさをアピールできます。
インタビューVP(社長/社員)
「人」にフォーカスした動画です。 社長が語るビジョンは企業の熱量を伝え、社員が語る現場のリアルは親近感や信頼感を生みます。他のVPの構成要素として組み込まれることも多い形式です。
企業VPの活用シーン
制作した企業VPは、一つ作れば様々な場面で使い回すことができる資産となります。
採用説明会(オンライン/対面)
会社説明会のオープニングで流すことで、参加者の注目を集め、企業の雰囲気を一瞬で伝えます。オンライン説明会では、通信環境に左右されにくい動画ファイルの共有や配信が効果的です。
展示会・イベント
展示会ブースのモニターでループ再生することで、通りがかりの人の足を止め、ブースへの誘引を図ります。 音が聞こえにくい環境を想定し、テロップ(字幕)を大きめに入れるなどの工夫が必要です。
Webサイト(企業情報・採用ページ)
Webサイトへの埋め込みは定番の活用法です。 テキストを読むのが億劫なユーザーでも、動画であれば再生ボタンを押してくれる可能性が高まります。SEO(検索エンジン最適化)の観点からも、動画コンテンツの充実は有効とされています。
営業資料(プレゼン・商談)
タブレットやノートPCに入れて持ち運び、商談のアイスブレイクや商品説明時に提示します。 「百聞は一見にしかず」の効果で、口頭説明の時間を大幅に短縮し、顧客の理解度を上げることができます。
企業VPの制作の流れ
「企業VP」は、単なる映像制作以上に“企業を深く理解するプロセス”が大切です。ここでは、一般的な動画制作フローと比較しつつ、企業VPならではの進め方・注意点を解説します。
1. 企業理解・目的整理(ヒアリング)
最初の打合せで重視されるのは、単に「何を伝えるか」ではなく、企業の理念・歴史・大事にしている価値観、業界内での立ち位置など“本質的な部分”まで掘り下げることです。ターゲット(例:採用希望者・取引先・社員など)や、その動画を使って「どんな成果を得たいか」を細かく擦り合わせます。
この段階で「他社との違い」「伝えたいストーリー」「重視するトーン」なども共有するため、単に事務的なヒアリングではなく、じっくり“棚卸し”を行うことが欠かせません。
2. 企画・構成設計
ヒアリング内容をもとに、「どんな切り口や見せ方が自社の魅力を最大限に伝えられるか」を考え抜き、構成案や絵コンテを制作します。
特に企業VPでは、スペックや実績の羅列ではなく、“企業が抱える想い・社会的意義・現場社員のリアルな声”などもバランスよく盛り込むことが重要です。初期段階で「社内レビュー」や「部署ごとの意見」を吸い上げ、関係者の納得感を高めておくと、後工程が円滑に進みます。
3. 社内調整・撮影準備
VPは社内の調整事項が多いのも特徴です。出演社員の選定、社内/現場の撮影許可、撮影スケジュールの調整、広報・総務との連携など、制作会社側と密に役割分担しながら整理します。
この段階で「どのシーンを誰が担当するか」「インタビュー原稿やナレーション案の用意」なども必要となります。
4. 撮影(オフィス・現場・インタビュー等)
実際の撮影は、企業の日常や現場の“生の空気感”、そこで働く人のリアルを大切にします。
工場や事業所など“普段外部に見せない現場”の撮影・セキュリティ配慮や、現場を止めずに効率よく撮る段取りも重要です。求める「雰囲気」や「伝えたい空気感」を事前にすり合わせておくと、当日の撮影クオリティが高まります。
5. 編集・演出・ブラッシュアップ
編集段階では、素材をつなぎ、企業イメージに合わせたBGM・ナレーション・アニメーションなども加えます。
企業VPにおいては、インパクトや演出過多よりも「誠実さ・信頼感」「見る相手の理解促進」を心がけた編集が大切です。社内文化や“らしさ”が滲み出る演出の工夫もポイントです。
6. 社内チェック・最終調整〜納品
初稿は関係部署でしっかりチェック(経営層・現場・広報等)。テロップ表記や印象、個人情報・セキュリティの観点も細かく確認します。「どの層にも納得感があるか」「ブランディングの意図とズレがないか」を意識し、修正〜納品まで丁寧に仕上げます。納品形式は多用途展開できるMP4ファイルが一般的ですが、用途に応じた複数バージョン作成もよく行われます。
このように、企業VPは「社内外の合意形成」 「企業らしさの抽出と表現」「関係者との密な情報共有」が一般的な動画制作以上に求められます。その会社独自のストーリーとして、ターゲットの心に残る映像を目指すフローが特徴です。
企業VPの費用相場
制作費用は、動画の長さや演出の内容、撮影の規模によって大きく変動します。ざっくりとした目安をご紹介します。
20〜50万円(ライト)
- 内容: 既存の素材(写真や動画)を使用、簡易的なアニメーション、インタビューのみなど。
- 特徴: 撮影を行わない、または半日程度の簡易撮影で済ませるケース。編集もテンプレートを活用するなどしてコストを抑えます。
50〜150万円(標準)
- 内容: 本格的なロケ撮影(1日〜2日)、プロのナレーター起用、オリジナルBGM、モーショングラフィックスの使用など。
- 特徴: 多くの企業VPがこの価格帯に収まります。構成もしっかり練り込み、クオリティの高い動画を制作できます。
150万円〜(ハイエンド)
費用が変動する要因
- 撮影の有無: カメラマン、機材、照明、音声などの人件費・機材費がかかります。
- ロケ回数: 日数が増えるほど費用は上がります。遠方の場合は交通費・宿泊費も必要です。
- CG・アニメーション: 高度なCG制作は工数がかかるため高額になります。
- 動画の長さ: 長くなるほど編集工数やナレーション費用が増加する傾向にありますが、短くても密度が濃い場合は高額になることもあります。
企業VP制作会社を選ぶ際の“企業VPならでは”のチェックポイント
多くの動画制作会社がありますが、企業VP(ビデオパッケージ)の制作は、単なる映像制作以上に「企業理解」や「社内外への発信意図の把握」が求められます。ここでは、一般的な動画制作とは異なる「企業VPだからこそ重視したい観点」をご紹介します。
1. 企業の理念・文化への理解力
動画の完成度は、企業自身の「強み」や「らしさ」をどれだけ映像に落とし込めるかで決まります。そのため、業界理解はもちろん、企業理念や事業の歴史・風土まで深くヒアリングし、魅力を引き出す力がある会社を選びましょう。
2. 社内コミュニケーション支援の経験
企業VPは、採用や社内浸透を目的に使われることも多く、「誰に・どんな想いを届けたいか」という社内事情や承認フローを踏まえた進行サポートや提案力が不可欠です。過去に大手・上場企業や多部署連携案件での実績がある会社は、その対応経験を有しています。
3. 機密保持・コンプライアンス対応
企業VP制作では、未公開の設備、戦略、従業員など機密性の高い情報を取り扱います。NDA締結の有無や撮影時の情報管理体制、情報漏洩リスクへの配慮など「安心して任せられる運用体制」が整っているかも確認しましょう。
4. 多用途展開への柔軟な設計
企業VPは、「採用」「営業」「株主総会」「イベント上映」「Web・SNS掲載」など多目的で流用されることが多いです。用途別に尺や編集バージョン違いを提案・制作できるか、将来的な追加編集や部分的な差し替えに柔軟対応できる会社だと安心です。
5. 社内調整の伴走力
制作過程で、撮影日程の調整や出演社員選定、原稿・ナレーション原案への社内合意形成など“社内の手間”が発生します。「丸投げ」ではなく、進行管理表や事務局サポートツール、合意形成のアドバイスなど、制作工程そのものをリード・伴走してくれる力も企業VPには重要です。
上記を踏まえて制作会社を選定することで、“単なる映像制作”ではなく、「自社に本当にフィットした企業VP」を手にすることができます。
まとめ:企業VPはビジネスを加速させるための強力なツール
企業VPは企業の魅力を深く正しく伝え、ビジネスを加速させるための強力なツールです。 採用難や営業効率化といった課題を抱えている企業様にとって、その解決策の一つになり得ます。
「どんな動画を作ればいいかわからない」「予算内で何ができるか知りたい」という場合は、まずは経験豊富な制作会社に相談してみることをおすすめします。
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